道内持続的鉄道網の醸成へ・・・JR北海道

      道 内 持 続 的 鉄 道 網 の 醸 成 へ ・ ・ ・ JR北海道
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                   宗谷本線など維持困難とした路線区の存続が図られる 宗谷本 線

画像 国鉄の分割・民営化(1987.4新事業体へ移行)に際し国から受領した経営安定基金の運用管理が低金利の中で功を奏せず、赤字の厳しい事業運営の下で2016年11月に「自社単独では維持することが困難な路線区」を公表したJR北海道(北海道旅客鉄道(株))は今、持続可能な交通体系の構築に向け沿線路線の存廃について検討が重ねられている最中にある。そのような状況下にあって、2018年4月に地元の北海道から「北海道交通政策総合指針」が公表されて北海道の将来を見据えた道内鉄道網のあり方が示され、関係6者(国、北海道、北海道市長会、北海道町村会、JR北海道、JR貨物)が参画する「JR北海道の事業範囲の見直しに係わる関係者会議」が設置されてJR北海道の今後の事業見通しや経営支援策等について議論が交わされてきた。そして、この6者協議の経緯を踏まえながらJR北海道は、同社グループが一体となって最大限の経営努力を注ぎ込んで経営再生のための課題解決に取り組み、2030年度の北海道新幹線札幌延伸開業を機に経営の自立を目指すとした「JR北海道グループ経営再生の見通し(案)」を公表し、経営自立への意欲を表面化させている。画像
 旧国鉄の分割民営化から30年余り、旅客会社6社の中で最も経営の厳しいJR北海道(2018年3月期決算で過去最悪の416億円の営業赤字を計上)に対して2018年7月に国による400億円超(2019~20年度の2年間)の経営支援が表明され、同時にJR北海道の経営再建を促すJR会社法に基づく「事業の適切かつ健全な運営に関する監督命令」が出された。この内、2021年度以降の国からの財政支援については、国がJR北海道に求める経営目標が2031年度の経営自立であることから、 それまでの間はJR北海道に対し財政支援が行われる可能性が示唆されている。ただ、2021年度以降の財政支援の継続に関しては、JR北海道の再建取組の着実な進展を前提として行われるとされている。また「事業の適切かつ健全な運営に関する監督命令」においては、2019年度~2020年度を「第1期集中改革期間」、2021年度~2023年度を「第2期集中改革期間」としてJR北海道に対して、北海道新幹線の札幌延伸の効果が発現する2031年度の経営自立目標に向けて徹底した経営努力を行うことや、鉄道より他の交通手段が利便性や効率性向上に期待できる線区においては地域の足となる新たなサービスへの転換(バス転換など)を進めること及び利用が少なく鉄道を持続的に維持する仕組みの構築が必要な線区については、JR北海道と地域の関係者が一体となって利用促進やコスト削減等を図る取り組みを行うことなどが課せられている。また、 集中改革期間においては取り組みの結果を毎年度(2019~2023)検証し、2023年度の最終期間には総括的な検証と目標に対する達成度合を踏まえ抜本的な事業の改善方策について検討が求められている。
画像               今後の道内鉄道網の姿を議論する6者会議
 なお、400億円台の国の財政支援措置に関連して2021年度以降の支援については、前述の如くJR北海道の着実な進展の確認(検証)が前提とされており、そうした中でJR北海道の経営自立に向けた国による財政支援を継続させるために、国会に所要の法律案の提出が別途検討されている。

画像  資金難で経営が厳しい中、北海道内最大の鉄道路線(新幹線1・幹線4・地方交通線9の計14路線)を抱えるJR北海道は、2016年11月に全営業距離の約半分にあたる10路線13区間(1237.2㎞)の“自社単独では維持が困難な線区”を公表して、地域の交通網(生活の足)の維持を前提としてこの2年余りにわたり維持困難な線区の存廃に係わり情報開示や徹底した経営努力に取り組んできた。 また、地元の北海道においても、JR誕生のこの30年余りの間に道内の高速道路網が飛躍的な拡充を見せ、自治体や道民はその利便性を享受・歓迎はしたが道内では鉄道離れが進んで公共交通への道民の関心が薄れて地域住民が最も望む“足”に乖離が生じ、北海道は今までの道内交通政策の失敗を認識した。
 そうした道内交通事情の下で、経営難による苦境で鉄道路線の存廃に向けた施策に揺れているJR北海道だが、その地元の北海道が道内交通政策の失政に鑑み道全体の公共交通への見直し・再編に取り組みを進めている状況の中で、北海道は2018年4月に「北海道交通政策総合指針」を公表して道内における将来の鉄道網 のあり方を示した。JR北海道が“自社単独では維持困難”とした路線を公表てから2年余り、ようやくにして北海道が道内鉄道網の持続的な維持と公共交通の利用促進に向け動き出したのである。そして北海道は、道内鉄道網の持続的な確立に向け道民が一丸となって公共交通の利用促進を図って行く「北海道鉄道活性化協議会」(北海道知事を会長に、北海道市長会、北海道町村会、北海道経済連合会、北海道商工会議所連合会、北海道経済同友会など道内財政界の代表者が務める)を設立し、発足(2018.12.1)させている。

画像  JR北海道は、 先に北海道が策定した「北海道交通政策総合指針」で示された方針(将来の道内鉄道網のあり方)を踏まえ、持続可能な交通体系の構築に向けた取り組みを 着実に実施していく構えを示している。その中でJR北海道は、鉄道よりも他の交通手段が利用に適しており利便性や効率性の向上も期待できる路線区については、敢えて鉄路による存続に拘ることなく地域の足となる新たなサービスへの転換を推し進める方針を採るとしている。
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画像 〈 島田 修JR北海道社長
 先般(2018.7)、JR北海道の島田修社長は全営業距離の1割強にあたる赤字の5路線5区間(311.5㎞)について、国や地域に負担を求めて1列車当たりの平均乗車人数が10人前後と少ない鉄道を残すよりもバスに転換した方が利便性が高まるとしてこれらを廃止にする方針(国は容認)を固め、沿線自治体の同意を得た上でバス転換して早ければ年内にも廃止を決めたい考えであった。 しかし、廃止となった鉄道路線は2019年4月1日の石勝線夕張支線(新夕張~夕張間16.1㎞)のみで、自治体が廃止を容認している札沼線北海道医療大学~新十津川間を含め廃止対象の4路線4区間は廃止に向け協議中で、現在に至るも沿線自治体との協議は継続の域を出ていない。なお、維持困難としていた残る路線・区間についてJR北海道は、国や北海道、沿線自治体などからの財政支援を仰いで存続させる考えである。
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                      2019年4月に廃止になったJR石勝線夕張支線 〉 
 ちなみに現在(2019.10時点)の廃止対象路線区は、先に廃止となった石勝線夕張支線を除き、留萌線深川~留萌間全線50.1㎞、札沼線北海道医療大学~新十津川間47.6㎞、根室線富良野~新得間81.7㎞、日高線鵡川~様似間116.0㎞の4路線4線区である。先にも触れたが、利便性や効率性の面において鉄道より他の交通手段の方が期待できる路線区についてJR北海道は新たな地域サービスへの転換(鉄道に拘らない)も止むなしとしている下で、廃止・廃止対象とされた路線区についてJR北海道の近況に少しく触れてみる。2019年4月1日に廃止になった石勝線夕張支線については、鉄道に替わりバス転換を行い、将来にわたり持続可能な市内(夕張市)交通体系の整備・構築に向け市に対しより充実した協力の提供を決めている。札沼線北海道医療大学~新十津川間については、2020年5月7日の鉄道事業廃止を予定してバス転換への準備が進められている。留萌線全線の深川~留萌間の区間に対しては、バス等への転換に向けて沿線自治体地域の容認(理解)が得られるよう鋭意協議が進められている。根室線の富良野~新得間は、公共交通のネットワークに関しバス転換など最適な方策について協議が継続されており、地域理解への求めに力が注がれている。
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               台風2016被害で鵡川~様似間全区間の鉄道による営業を断念した日高本線・新冠町
 日高線の鵡川~様似間については、甚大な台風被害(2016)のため不通となっている同区間の鉄道による復旧は断念されており、引き続き他の交通機関との代替も含めた地域交通確保への協議が推進されている。
 このような中で、極めて利用が少なく維持困難とされる鉄道路線を持続的に維持していく仕組みづくりの構築が必要な路線区についてJR北海道は、沿線地域における日常的な利用促進を図るための取組や道内外からの利用者誘致への取組を前提に、国および沿線地域の支援・協力を拝して北海道の鉄道網の維持・構築に邁進を期していく覚悟を示している。

画像 、厳しい経営難の中で道内鉄道路線網の存亡に揺れているJR北海道であるが、国から2018年7月に同社へ400億円台の財政支援とともに出された監督命令(事業の適切かつ健全な運営に関する監督命令)により策定が求められていた長期ビジョンに対して島田 修JR北海道社長は、2019年4月9日の北海道新幹線札幌開業(予定)翌年の2031年度を目標年次としたJR北海道グループ長期経営ビジョン「未来2031」を発表した。その中でJR北海道は、新幹線札幌延伸開業効果に加え新千歳空港アクセスを強化するとともに不動産事業の拡大などにより440億円程度の収支改善を図り、経営の自立化を目指すとした。ただこれには、北海道新幹線に係わる貨物列車(在来線)との共用走行に関する抜本的課題(新幹線の最高速度の制約)を解決した上での新幹線の高速化が前提であるとともに、2030年までの国や自治体からの年280億円の財政支援 が必要とされている。
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 JR北海道によると、2018年度の経営状況では単体で約220億円の経常赤字が見込まれているが、2031年度には人口減少がさらに進み新幹線の修繕費も嵩むため約210億円の減益が見込まれるという。このような状況に対し長期ビジョン においては、インバウンドの増加努力や空港アクセスの強化、コスト削減などの自助努力に加え、今年(2019)10月の運賃改定実施に向け手続きを進めて約190億円程度の収支改善を図るという。 さらに、JRイン(ホテル)の建設工事の推進、分譲マンションの供給、新幹線札幌駅前再開発事業の参入などにより開発・関連事業を拡大し、2031年度には2018年度に比べ 1.5倍の売上(1200億円)で利益額約150億円を見込んでいる。このような長期経営ビジョンに立ってJR北海道は、今後の鉄道網の構築・持続に向け道内交通体系の充実を目指す。

画像 全路線(計14路線・2535.9㎞(2019年現在))が赤字という厳しい経営事情にあるJR北海道は、民間企業の事業としては担えるレベルを超えているとして自社単独では維持が困難な路線区”(10路線13区間・1237.2㎞)を公表して始まった道内鉄道路線網維持への危機は、公表から2年余りを経て一部路線の廃止方針が固められはしたものの、道内鉄道網の持続的な確立に向けようやく始められた道民の一体化した運動の展開とともに動き出している。
 今後の道内鉄道網の姿についてJR北海道は、2ヵ月に一度の頻度で昨年(2018)4月から開催されて議論が続けられているている「JR北海道の事業範囲の見直しに係わる関係者会議」(6者協議)で、道内各地域の“足”(交通)の確保を前提に北海道が昨年(2018)策定した「北海道交通政策総合指針」の方針を踏まえた上で、新たに持続可能な路線網の醸成に向けた取り組みを着実に実行 していく構えである。すなわち、JR北海道と地域の関係者(道内の1次産業、観光業界団体、教育団体など)が一体となって利用促進やコスト削減などへの運動を展開して行くとともに、2次交通の整備をも含めた鉄道をはじめとする公共交通の利用者を増やしていくための仕組みづくりを進めていき、先に設立(2018.12.1)された「北海道鉄道活性化協議会」の動向を介し道内の官民が一体となって将来に向け北海道の鉄路を守っていく決意だ。そして、北海道の道内交通政策失敗(失政)で失われた道民の鉄道(公共交通)に対する関心、それを呼び起こして道内鉄道網の維持へ繋げようと“オール北海道”(官民一体)による「公共交通の利用促進に向けた道民キックオフフォーラム」(約600人参画)が昨年(2018)暮れに札幌で開催され、交通関連専門家による基調講演や北海道知事、JR北海道社長などによるパネルディスカッションを通してJR北海道の持続的鉄道網の維持と経営改善に向け本格的なスタートが切られた。
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                    2030年度札幌延伸開業に向け進む北海道新幹線 北海道北斗市

 近年、JR北海道は年400億円を超える営業赤字を続けているが、いずれにせよ経営難に陥っているJR北海道の苦境に喘ぐ鉄道事業の再生にあたっては他力本願に頼らざるを得ないとしながらも、同社の徹底した経営努力(自助努力)が欠かせないのは自明の理である。JR北海道の島田 修社長も、北海道新幹線が2030年度に札幌まで延伸開業するのを見据え、何としても2031年度には経営自立を果たすべく不退転の覚悟で運営に取り組んで行くと決意のほどを語る。年間400億円前後の営業赤字が続いている今の経営をどう建て直して行くのか、その鍵はJR北海道と北海道民が一丸となって取り組むチームワークが握る。 (終)

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