あの日の感動 ・ 「鉄道員」(ぽっぽや)

         画像あ の 日 の 感 動   ・  ・  ・

  映画に鉄道のシーンが頻繁に登場するのは、別に珍しいことではなかった。クルマ社会や航空網が発展する以前、かつては鉄道そのものが日常的な存在ではあった。そして鉄道は、さまざまな映画に織り込まれて数多の物語を紡いできた。それらの中で、今から18年余り前の1999(平11)年6月に公開上映された、観る人々に深い感動を与えた映画がある。
 小説家・浅田次郎氏の短編小説「鉄道員」(第17回直木賞受賞、140万部を売り上げたベストセラー作品)を映画化(東映)した、公開当初から大きな話題と反響を呼んで全国で260万人もの観客を動員する大ヒットとなった「鉄道員」(ぽっぽや)である。
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                         1999年6月公開の映画「鉄道員」 東映
 ・・・ 路線の廃止を間近にした北海道のとあるローカル線、鉄道一筋に人生を送ってきた定年間近い主人公・佐藤乙松の頑なな生き様を、その路線の終着駅を舞台に妻や愛娘の死を通して回想や幻想のシーンを織り交ぜながら描かれた愛と奇跡のドラマで、優しさと温かい涙で日本中を包み込んだ映画である ・・・
 ここに、遠くになりつつある映画「鉄道員」への想い出の縁に、あの日の感動をもう一度顧みてみました。また、映画(「鉄道員」)の公開と時を同じくして当時、「鉄道シネマエッセーコンクール」が実施されて全国から約2500編に上るエッセーが寄せられた。いずれの文面からも、映画に対する深い感動の扇動が窺えたとされる。その寄せられた感動の一端を以下に、同コンクールで受賞された10編の中から次の2編を紹介します。

やさしさの波紋 ・ ・ ・
 娘への父の想い、娘のあのやさしさ、本当に感動しました。生死を超えての深い想いはお互いの心をしっかり結びつけ、永遠の幸せをもたらしてくれるのでしょうか。
 一年前、 長い闘病の末に二十七歳で逝った娘は、本当にやさしい子でした。感動は、そときの絶望的な悲しさを激しく呼び覚ましました。やさしすぎる、あまりにやさしすぎる、もうやめて!  いつの間にか私は、雪子と我が子をごっちゃにしていました。最早共に語り合うことのできぬ我が子を想うとき、雪子のやさしさは私を悲しみの海に引きずり込むのです。
 雪子が、お父さん私は幸せだよ、と言って姿を消したとき私の心は、ついに感動と悲しみで爆発してしまいました。大きな愛と大きな悲しみ、でも心から愛した幸せな想いは永遠に残る。
 大丈夫よお父さん、楽しい思い出がいっぱい残るじゃない、幌舞線の廃線と定年を前にした父への雪子のやさしい言葉に、私は救われる思いがしました。
・・・ 静岡県浜松市の古賀慎一郎さん65歳(当時)
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                                幻想シーン ・・・
ぽっぽやを見て ・ ・ ・
 わたしは、このえいがを見てすごくかんどうしてしまいました。さいしょに見た時は、むずかしくてわからなかったけれど、もう一ど見たくてお母さんにせつめいしてもらったので、二回目を見たときにはとてもよくわかりました。このえいがは、なんど見てもかんどうするえいがです。
 一番心にのこったばめんは、ゆきこちゃんがつくったおなべをおとまつさんがたべるばめんです。むねがいっぱいになってしまったおとまつさんを見ていたら、わたしまでむねがいっぱいになってしまいました。
 ゆきこちゃんは、二カ月でなくなっちゃったけれど、「お父さんありがとう」ってつたえにきたんだなと思いました。
「ぽっぽやなんだから。ゆっこなんとも思ってないよ」と言うことばがとっても心にのこっています。
 おわってしまうのがざんねんで、三回目を見に行きました。いまのきもちをずっとわすれないでいたいと思います。 
・・・神奈川県小田原市の戸丸咲奈さん8歳(当時)
  脚注…①幌舞線(架空)・廃線間近い国鉄のローカル線。 ②雪子・幌舞線の終着駅を守る駅長の佐藤乙松と静枝夫婦の間に結婚17年目にして授かった一人娘で、生後僅か2ヵ月で病死する。
画像                   終着駅のホームに立つ…
 昔気質のぽっぽや(鉄道員を比喩する言葉)で、仕事一途の頑なな一徹さ故に職場から離れられず、一人娘や妻の最期を看取ることもできずに、今日もまたプラットホームに立ち終着駅の守りに徹する佐藤乙松駅長ではあった。
 「おら、ポッポやだから身内のことで泣くわけにはいかんでしょ」…駅長の乙松が歯を食いしばってまで鉄路を守る、それでも心の内で号泣している哀しい姿に思わず目頭が熱くなるのを覚えた。
 深々と降り続く凍てつく雪のプラットホームでフライキ(手旗)を手に、列車の出発を見送り到着を迎える鉄道員の孤独な立ち姿が郷愁を誘います。さながら人と雪が織りなすファンタジー、あの日の仄かに暗い映画館の片隅で観たあの感動をもう一度 ・ ・ ・ (終)

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