整備計画5路線そろう~整備新幹線

画像画像国土交通省が試算を出す建設費約2兆1000億円が見込まれている北陸新幹線(東京~新大阪間約690km)の敦賀(敦賀市)~新大阪(大阪市)間の延伸区間(約143km)のうち、北回りか南回りかで最後までルートの選定が保留されていた京都~新大阪間については、与党の整備新幹線建設推進プロジェクトチームにおいてJR学研都市線の松井山手駅付近に新駅を設けて京都府京田辺市を経由するルートの採用が2017年3月15日に正式決定された。
 この北陸新幹線敦賀~新大阪間の延伸区間は、現在も延伸建設工事が継続されている金沢~敦賀間(約114km・2022年度 末開業予定)の開業を待って2031年度の着工が予定されており、2046年度の品川~新大阪間全線開業が想定されている。この終着新大阪までの北陸新幹線延伸ルートの決定により、「全国新幹線鉄道整備法」(1970(昭和45)年成立)に基づき1973年に整備計画が決定された新幹線5路線(“整備新幹線”と呼称されるもので、北海道新幹線・青森市~札幌市間、東北新幹線・盛岡市~青森市間、北陸新幹線・東京都~大阪市間、九州新幹線・福岡市~鹿児島市間、九州新幹線・福岡市~長崎市間の5路線を指す)の全ルートが計画から40年余を経てようやくにして決まった。
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                                北陸新幹線
画像整備新幹線は現在、北海道新幹線の新函館北斗~札幌間(約212km・2030年度末開業予定)と北陸新幹線の金沢~敦賀間(約114km・2022年度末開業予定)および九州新幹線の長崎ルート・武雄温泉~長崎間(約67km・2022年度末開業予定)の3区間約393kmで延伸建設工事が行われている。ちなみに、2016年3月時点での整備新幹線の営業キロ数は延長約929kmに至っており、既設新幹線(東海道、山陽、東北(東京~盛岡間)、上越の各新幹線)とを合わせると現在の日本の新幹線路線網の総延長営業キロ数はおよそ2765kmである。
 前述した、現在延伸工事が進行している3区間は2030年度には全ての工事が終える予定とされてはいるが、その総事業費が3兆円を超える中でこのほど決まった北陸新幹線延伸ルートの京都~新大阪間の建設工事(2031年着工予定)に回す財源はその目途さえ立っていないとされている。整備新幹線の建設財源は現在、既存の東海道・山陽・東北(東京~盛岡間)・上越の新幹線がJR本州3社(東日本、東海、西日本)へ譲渡された際の事業資金と公共事業関係費を加えた国による拠出額(負担額)および地域の発展にも資することから地方自治体に求める負担額とを合わせた、国が3分の2、地方が3分の1を負担する建設財源のスキームが採られている。また、運営事業主体であるJRの負担は、建設主体の鉄道・運輸機構に支払う受益(新幹線を整備する場合の収益と整備しない場合の収益の差)を限度とした貸付料(線路使用料)のみとなっている。
 JR発足以前においては、旧国鉄当時に建設された新幹線(東海道・山陽・東北・上越の新幹線)は国鉄自身による資金調達や借入金などによって建設されたため、その多額な資金の拠出が国鉄をして赤字経営に追いやってしまった経緯とともに、その国鉄の赤字経営が整備新幹線整備計画の遅延や計画凍結にまで結び付く過程を招いてしまった。この打開策として考えられたのが、国や都道府県の自治体が資金を負担して新幹線を建設するという、いわば公共事業として新幹線を建設しようというシステムの採用で、現在もこのシステムに従って整備新幹線は建設されている。ただ、新幹線建設が経営に過大な負担を与えた過去のケースから“第二の国鉄(赤字経営)は作らない”とする基本方針の下で、整備新幹線の建設には運営事業主体であるJRの同意が必要であるとされた。

画像北陸新幹線京都~新大阪間の延伸ルートがこのほど決定(2017.3.15)されたことで、新幹線整備計画5路線の全ルートが決まったことは先に述べた。新幹線の建設にあたっては、当初からその推進役(力)が政治にあり、ルートの決定も政治の場にあった。かつて、世界的にモータリゼーションの急速な普及で鉄道はやがて衰退(鉄道斜陽化)すると見られていた中にあって、遍く政治家は国鉄の新幹線構想に冷淡な姿勢を見せていた。ところが、国鉄が1964年に世界初の高速鉄道・東海道新幹線を開業させると、その抜群の輸送力(集客力)が政治家の新幹線へ向ける態度を変転させた。その後国は、東海道新幹線に次ぐ山陽新幹線の建設が途上にあった1970年に「全国新幹線鉄道整備法」を議員立法で成立・制定させ、それに基づいた新幹線整備計画の下で新たに新幹線を政府の命で建設できるようにした。整備新幹線の建設・運営は現在、国土交通大臣が運営主体(運営事業者)を指名し、鉄道・運輸機構(独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構)が建設して運営事業者(JR)へ譲渡する仕組みが採られている。
 もともと新幹線の建設は、大都市間を繋ぐのが目的であった。しかし、その整備が進むにつれ大都市と地方都市を結ぶケースが顕在化し、巨額な建設投資に見合う経済効果を疑問視する国民(納税者)の公共事業に対する厳しい目もあって、着工への慎重論が多分に聞かれた。されど近年、東日本大震災(2011.3)後に災害対応策として役立つ公共事業の再評価が進み、政府(野田政権)は2012年に整備新幹線3区間(新函館北斗~札幌、金沢~敦賀、諫早~長崎)の建設着工を認めている。また、安倍政権は2015年に、「地方創生」の下に現在建設中の整備新幹線(北海道、北陸、九州(長崎ルート))開業への前倒しを決定している。さらに与党の間には、“地方創生”を旗印にまだ新幹線が走っていない山陰や四国方面へ新幹線の延伸を求める声まで出ている。しかし、そうした中で日本は人口減少や超高齢化の時代に入り、社会保障費などの増加で国や地方は財政難の状況にあり、巨額な建設投資を要する新幹線の整備にどれほどの国民の理解が得られるのか、厳しい環境にある。

画像2046年度に全線開業を想定する北陸新幹線、その延伸区間である敦賀~新大阪間の2031年度の建設着工に向けては、現在工事中の整備新幹線3路線(北海道、北陸、九州)の建設工事(総事業費3兆円超)が2030年度に全て完了するまで、当該延伸工事に回す財源の当ては無いに等しいという。そうした中にあって、新大阪への早期開業を強く推す北陸圏や関西圏の政財界では、財源を国債発行などで確保し、大阪延伸着工を前倒しする推進論が勢いを見せる。しかし、安易に財源確保への箍を緩めれば、人口減少が進む時代にあって国債償還への支障も招きかねず、将来像が描けなければ禍根を残すことにもつながり兼ねない。
 勿論、新幹線推進派が主張するが如く、新幹線の開業は沿線一帯に一定の経済効果をもたらしてくれる。2015年3月、北陸新幹線の長野~金沢間が開業して首都圏と北陸圏が直結した際にも、一大観光ブームが巻き起こり、今もその勢いは続いている。ただ、努力を続けても時が経てば勢いは薄らいでいくのが世の常、新幹線への過大な期待は将来的に運営を危うくする懸念もあり、開業効果は控え目に踏むべきである。北陸新幹線の費用対効果は、国土交通省の試算でもその指数は1.05で、新幹線がもたらす効果は投資額を僅かに上回る程度である。
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                       北海道新幹線開業1周年 新函館北斗駅 2017.3.26
 2016年3月26日、整備計画から40年余りを経て北海道内初の新幹線として建設された北海道新幹線(新青森~札幌間約360km)の新青森~新函館北斗間(148.8km)が開業して1年が経った。これにより、首都圏や東北圏が北海道の玄関口と直結し、2017年2月末までの1日平均の利用者数は約6500人で、開業前の在来線利用者約3900人の1.7倍を示している。平均乗車率は、北陸新幹線開業1年の平均47%には及ばないが、開業前予想の約26%を上回る平均約33%と予想を7ポイント上回った。また来道者数も、首都圏~北海道間の直通運転で首都圏からの旅行者が増え、宮城(3.5倍)や山形(3倍)、福島(3倍)など東北新幹線沿線県からの旅行者数も増えた。2016年度の函館市の観光客数は、過去最多だった1998年度の539万2000人を超えるとも見られている。ただ、寒冷地を走る北海道新幹線は夏場の利用は多いものの、1、2月の冬場の観光オフシーズンには利用者が大きく落ち込むのがネックとされている。JR北海道では、新幹線利用者の確保に向けこの季節による観光波動の差をどう埋めていくかが、今後の課題だとしている。また、開業後も検討が続けられている課題が速度アップへの取り組みである。
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                                北海道新幹線
画像本州と北海道を結ぶ唯一の鉄道路線である青函トンネル(53.85km)を介するその前後82.0kmの区間(新小国信号場~木古内間)では、在来線(JR貨物)の貨物列車と新幹線列車が同じ線路を共用して走行(3線軌条式)していることから、その区間の新幹線の速度は本来の北海道新幹線区間営業最高速度の260km/hに対し安全確保のため140km/hに抑えられた走行となっている。そのため、当初の東京~新函館北斗間の所要4時間を切る構想は、鉄道が航空機より優位とされている“4時間の壁”を突破できず、最速4時間2分に甘んじた開業とはなった。この青函トンネルを挟む区間の速度向上についてJR北海道は、国土交通省などと160km/hへの速度アップを検討している。実現されれば、東京~新函館北斗間は3分短縮されて最速で3時間59分と“4時間の壁”がクリアされる。
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                    北海道新幹線共用走行区間新中小国信号場~木古内を行く
 この青函トンネル区間の速度向上について国土交通省によれば、昨年(2016)10月に開かれた「青函共用走行区間技術検討ワーキンググループ」(整備新幹線小委員会)の会合で新幹線と在来線(貨物列車)が線路を共用する青函トンネル区間の速度向上について、200km/hを超える高速運転を実施する時期を2019年度以降とする方針が決定された。本来は、この速度向上については2018年春のダイヤ改正時から実施される予定であったが、安全性見極め等に慎重を期すため後退することとなった。今回の200km/h超の高速運転方針決定を受け、国土交通省をはじめ鉄道・運輸機構やJR北海道およびJR貨物においては、2018年度上期を目途に青函トンネル区間下り線で200km/h超の高速走行試験を実施する方針が決定されている。一方で、諸企業や業界団体などでつくる「日本プロジェクト産業協議会」(東京)は、青函トンネルとは別に青函間に新たに2本のトンネルを設け、既存の青函トンネルは新幹線専用として本来の高速化を図る構想を打ち出している。
 いずれにしても昨年(2016)、JR北海道は新幹線を含む全14路線・2568.7km(2017.4時点2552.0km)のほぼ半分に当たる10路線13区間の1237.2kmについて自社単独では維持できないと表明し、路線の廃止やバス転換などについて沿線自治体等との協議の最中にある。そうした中で、開業2年目を迎えている北海道新幹線の乗車率は当初予想を上回っており、年間48億円と見込まれた新幹線の赤字幅も縮まりそうだという。されど、本格的に営業効果が期待できるのは、2030年度に予定されている札幌延伸開業を待つことになり、まだJR北海道の前途は厳しさが続く。
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画像福井県敦賀市と大阪市を結ぶ北陸新幹線延伸ルートのうち、北回りか南回りかで未定のまま最後まで残されていた京都~新大阪間のルートがこのほど(2017.3.15)南回りに決まり、整備計画5路線の全ての建設ルートが揃ったことは先に触れた如くだ。これにより、整備計画5路線に次いで全国に総延長約3000kmに及ぶ基本計画11路線への取り組みが、俄然課題の的に晒されようとしている。この11の基本計画路線は、全国新幹線鉄道整備法に基づき1973年に優先路線として整備計画された新幹線5路線(“整備新幹線”と称される北海道、東北(盛岡以遠)、北陸、九州・鹿児島ルート、同・長崎ルート)の後に追加計画(1973年告示第466号(1973.11.15))されたものである。それら11の基本計画路線の概要を以下に示す。
…①北海道新幹線(青森県青森市~北海道旭川市) ②羽越新幹線(富山県富山市~青森県青森市) ③奥羽新幹線(福島県福島市~秋田県秋田市) ④中央新幹線(東京都~大阪府大阪市・2011年整備計画決定) ⑤北陸・中京新幹線(福井県敦賀市~愛知県名古屋市) ⑥山陰新幹線(大阪府大阪市~山口県下関市) ⑦中国横断新幹線(岡山県岡山市~島根県松江市) ⑧四国新幹線(大阪府大阪市~大分県大分市) ⑨四国横断新幹線(岡山県岡山市~高知県高知市) ⑩東九州新幹線(福岡県福岡市~鹿児島県鹿児島市) ⑪九州横断新幹線(大分県大分市~熊本県熊本市)… 以上が基本計画路線で、中央新幹線(リニア)を除き現在は計画凍結の状態にある。しかも、これまでの整備計画5路線以上に、導入にあたっての利用者見込みが弾き出しにくい地域が大半を占める。されど、これらの基本計画路線を沿線に持つ自治体からは、整備計画5路線のルート決定を前にして“次はうちにも…”との陳情が国土交通省鉄道局の担当者の許には増えているという。国会議員の間においても、昨年(2016)12月に出された北陸新幹線に関する与党の検討委員会の中間報告の中で、北陸新幹線整備完了後の課題として基本計画路線の整備を計画化し、建設実現に向けた検討に着手すべきとの必要性が述べられている。ただ、現在も建設途上にある北陸新幹線を全線開業(2046年想定)させる財源の目途すら不透明な中にあっては、“その先”(基本計画路線整備計画)を求める声には冷ややかさも伴う。
 確かに、新幹線の導入には、一定の経済効果が望める魅力がある。2015年の北陸新幹線金沢乗り入れを前に、駅周辺域の再開発計画が加速し、沿線の路線価は開業前年から6.3%も上がり始め、開業(2015.3)の翌年には13.6%と大阪や東京に次ぐ5番目の上昇率を示した。従来、在来線最速で約4時間を要していた東京~金沢間が約2時間半に縮まった新幹線開業の効果は大きく、企業の進出や観光客が増え続けている。同じ整備新幹線で、2011年3月に全線開業した九州新幹線鹿児島ルート(博多~鹿児島中央間)の利用者は今もほぼ右肩上がりで伸びを示しており、昨年(2016)3月開業の北海道新幹線(新青森~新函館北斗間)も利用者は当初の想定を上回り、今も堅調を示す。こうした状況も、新幹線が東京や福岡といった大都市と繋がった効果の現れであろう。ただ一方で、新幹線の開業で沿線住民の生活や利便性が下がったり損なわれるケースも生じ、順風万端とはいかない。在来線への乗り換え発生や並行在来線の三セク化による運賃値上げ、新幹線ルートを外れた都市へのしわ寄せ(地価の下落、人口減少率の高まり)など地方に明暗をもたらす新幹線ではある。

画像2017年1月の施政方針演説で安倍首相は、地方の活性化に向け“地方創生回廊をつくる”と述べ、その主体の一つに新幹線を挙げて地方に期待を植え付けている。そうした状況の中で、山陰や四国への新幹線の延伸を求めて基本計画路線沿線の地元自治体は、新幹線の要望と誘致熱の高まりを活発化させている。
画像 その中で、最も前向きにかつ活発に新幹線誘致に動いているのは、6つのJR旅客会社の中で唯一新幹線鉄道を持たないJR四国である。もともとJRの中でも経営規模(営業キロ855.2km)が最も小さく、経営体制も赤字体質(単体営業損失105億円・2015年度)が常態で、経営安定基金(2082億円)の給付を受けるなど経営体力も弱い。そうした中でJR四国では今、鉄道の高速化に向けその必要性について地域社会への理解を得るため、鉄道の高速化整備の意義について広く周知が図られているところだ。そして、高速道路網の整備・延伸が四国内で進む下で、既存鉄道インフラを最大限に活用した鉄道の高速化に取り組んできた。しかし、その高速化への施策も既に限界に達し、近年では四国エリア全体で鉄道の高速化へ新局面を目指す動きが活発化を見せるようになっている。その四国で、北陸新幹線延伸ルートの最終決定を機に、“日本広といえども新幹線がないのは四国だけ…”と強調して四国に新幹線を走らせようと招致を熱く渇望して止まないのは、県の台所をまとめる四国経済連合会会長の千葉 昭氏(四国電力会長)である。果たして、この新幹線渇望への四国の意気込みには、これからどのような展開が待つのだろうか。
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                          新幹線規格で建設されている瀬戸大橋
画像整備新幹線の未開業区間は現在、北海道新幹線・新函館北斗~札幌間(約212km)、北陸新幹線・金沢~新大阪間(約239km)、九州新幹線(長崎ルート)・武雄温泉~長崎間(67.0㎞)の3路線のみであり、その1973年に整備が計画されたいわゆる“整備新幹線”の整備完了がようやく視野に入り始めた。総務省は、昨年(2016)10月26日に2015年の国勢調査の結果を公表し、前回(2010)の国勢調査に続き連続して人口減少となり、日本が本格的な人口減少時代に入ったことが鮮明になったと発表した。すなわち、1920(大正9)年の調査開始以来初めて減少に転じたのだ。このように、日本は人口減少時代に入り、少子・超高齢化社会に転じて社会保障費の増加とともに国や地方自治体は財政難を囲い、鉄道や道路などの公共インフラを如何に維持するのかも課題化している。先のことだが、内閣府の資料に基づけば2100年の日本の総人口は約5000万人(高齢化率41.0%)と、今の総人口(約1億2500万人・2015年国勢調査)の約半分になると弾く。そうした将来に向け、巨額の費用を投じてまで新幹線(基本計画路線)を日本の隅々にまで張り巡らす必要はあるのだろうか…深い議論が必要とされるところである。 (終)

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