観光振興へ走る ・・・

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 日本は近年、国の成長戦略における柱の一つとして「地方創生」を掲げ、地方・地域の活性化促進を目途に“観光立国”への成長をテーマに取り組んでいる。その中でも、観光振興に向け外国人観光客の取り込み施策、すなわちインバウンド誘致の拡大を重点施策に据えている。
画像 今、世界の観光もインバウンドの新時代を迎え、一層の観光振興へ向け戦略的取り組みを展開している日本の観光業界では、年々増加している訪日外国人旅行者の観光へのニーズが多様化を示して観光事業を取り巻く環境が大きく変容している中で、日本の豊富な観光資源を活かした地方・地域の活性化への取り組みを加速させており、JRグループ各社をはじめとする鉄道事業者においてもまた、全国に展開する路線網構築の強みを活かした地方・地域の活性化へ焦点を当て、日本の観光振興へ力を結集させている。

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 広大な地(約83,420㎢)に観光地が点在する北海道の観光振興に、鉄路による交通網を駆使して立ち向かっているJR北海道(2016年現在新幹線1路線を含む全14路線・2568.7km)は、道内の観光振興には観光素材の掘り起こしや地域との連携、点在する観光地への利便性に資する二次交通網の整備(専用バス運行、路線バスの観光関連機関へ運行移管、交通フリーパスの設定)などの取り組みは、広大な地域なるが故の北海道の観光振興には不可欠な施策と捉えている。
 北海道の観光に関しては、日本が今直面する少子高齢化や人口減少の下で、全国に比べ人口減少が10年ほど先行していると見られている道内の観光事業を支えていく上で、最も必要とされてきたのが道外からの入り込み観光客の獲得であった。しかしそれも、最高値を示した1999(平成11)年度の615万人以降伸び悩み傾向(2014(平成26)年度569万人)にある。また、道内観光の目的地にしても、札幌を含む道央部に集中(観光客全体の57%)する一極集中の傾向が強く、しかも年間を通し約半分が6~9月の夏季に集中するという、集客上で道内観光は大きな課題を抱える。
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                         本州と北の地北海道をつなぐ北海道新幹線
 このような状況にある中で、2016(平成28)年3月26日に北海道の地に待望の初の新幹線(北海道新幹線)が開業し、北海道の観光は新たな局面を迎えている。JR北海道は、北海道新幹線の開業を前提に、以前から札幌を中心とする道央エリア一極集中の北海道の観光を函館を含む道南エリア方面(新函館北斗駅や木古内駅周辺、大沼公園や駒ヶ岳エリア)へも拡大させるため、同エリアの観光開発や受け入れ体制、二次交通などの観光への環境整備(函館市電や路線バス乗り放題フリーパスの設定、地元素材活用のランチ類の新規設定、定期観光バス・路線バスを組み合わせた江差・松前周遊フリーパスの設定など)に特に力を入れてきた。また、道南エリア以外においても、観光庁の認定を受けた観光エリア(富良野・美瑛、ニセコ、道東、道北)を中心に地域と連携したさまざまな施策を展開している。
画像 今、道内の各地で展開されている観光開発への高まりは、北海道観光の一極集中の課題解決にも繋がるとして、JR北海道も道内の観光振興に一層の意気込みを見せている。また、今年度(2016)に広域観光周遊形成事業(観光庁…外国人旅行者の地方への誘致を図るための広域観光ルートの設定及び施策の集中投入・支援)の認定を受けた稚内や利尻島・礼文島を含む道北エリアにおいてJR北海道は、日本の最北エリアへの送客に機動力を発揮して離島の観光振興への促進にも努めている。
 先に触れた如く、日本の今の少子高齢化・人口減少という人口構成の中で全国に比べ10年も人口減少が先行しているといわれている北海道においては、今後の観光振興促進を図っていく上で交流人口の拡大につながる道外からの入り込み観光客誘致への前向きな対策が欠かせない。その道外観光客誘致へ向けJR北海道は、北海道新幹線の開業で首都圏や東北エリアと北海道間の交流が高まっていることを捉え、全国に所在の同社営業所を介した“相互送客”につながる観光商品の開発・設定を行い、道内の観光振興につなげている。このような新幹線開業効果を一過性に止めず、開業効果の持続と全国波及への取り組みを通してさらなる北海道観光の振興に向け、JR北海道の奮闘が続く。
画像 観光庁所在の中央合同庁舎3号館東京都千代田区
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 観光庁は今年(2016)3月に、“観光”は真に日本の成長戦略と地方創生の大きな柱であるとして、今後の日本が目指す“観光先進国”へ向け新たなビジョンを取りまとめた。それによれば、キーとなる「3つの視点」を掲げ、その下で35項目にわたる諸施策を打ち出し、それらの内の10項目を「10の改革」として中心的施策に据え、2016(平成28)年度に講じる観光施策としている。その概要を以下に列記する。
 「3つの視点」として、1.観光資源の魅力を極め、地方創生の礎に 2.観光産業を革新し、国際競争力を高め、我が国の基幹産業に 3.すべての旅行者が、ストレスなく快適に観光を満喫できる環境に…をキーに据えている。
 「10の改革」では、①「魅力ある公的施設」を、ひろく国民、そして世界に開放 ②「文化財」を、「保存優先」から観光客目線での「理解促進」、そして「活用」へ ③「国立公園」を、世界水準の「ナショナルパーク」へ ④おもな観光地で「景観計画」をつくり、美しい街並みへ ⑤古い規制を見直し、生産性を大切にする観光産業へ ⑥あたらしい市場を開拓し、長期滞在と消費拡大を同時に実現 ⑦疲弊した温泉街や地方都市を、未来発想の経営で再生・活性化 ⑧ソフトインフラを飛躍的に改善し、世界一快適な滞在を実現 ⑨「地方創生回廊」を完備し、全国どこでも快適な旅行を実現 ⑩「働きかた」と「休みかた」を改善し、躍動感あふれる社会を実現…以上が環境庁が掲げる“明日の日本を支える観光ビジョン”への施策である。
 これら目指すべき観光ビジョンの諸施策が顕在化されれば、訪日外国人旅行者数は今後も益々増加していくものと期待され、観光立国への途も拓けてくる。ただ、そのためには訪日外国人旅行者に対する満足度を高めるとともにリピーター増長への施策が欠かせず、受け入れ側(日本)の環境の整備・充実に向けた間断ない努力が必要であるのは論をまたない。すなわち、安心した入国を保証すべくCIQ(税関・出入国管理・検疫)の継続的な体制強化、無料公衆無線LAN環境等の整備、移動の利便性を高めた公共交通利用環境の改善・整備等々さまざまな分野における訪日外国人旅行者を取り巻く環境の整備が求められる。国は、観光立国への今後の成長を目指し、前述の「3つの視点」および「10の改革」を2016(平成28)年度に講じる観光施策として取り組んでおり、観光政策の加速を図っている。
画像                                進むインバウンド
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 国連世界観光機関(UNWTO:本部・スペインマドリード)が発表した世界観光動向によると、昨年(2015)の国際観光客数は前年比5000万人増の11億8400万人と、前年比を4.4%上回った。そうした、年々成長を示す世界の旅行市場の動きを日本の観光産業振興への活力として取り入れるため、“世界が訪れたくなる日本”の実現に向けた取り組みへの挑戦が求められている。ちなみに、世界の外国人旅行者受入数を世界のランキングで見ると、日本の外国人旅行者受入数は2013年の1036万人(世界第27位・アジア第8位)から2014年には1341万人(同22位・7位)となり、このところ年毎に上昇を示している。2015年には、1973万7000人(対前年比47.1%増)の訪日外国人旅行客数を数えて過去最多を記録し、統計を取り始めた1964(昭和39)年以降で最大の伸び率を記録している。これは、日本の旅行(観光)市場も世界の市場の中で年々成長を見せている証しともいえよう。観光庁によると、今年(2016)もその記録を更新する勢いを見せているという。ただ、今後は観光に対して単に訪日外国人旅行者数を増やすに止まらず、勿論リピーターを増やしていく施策も必要だが、日本の豊富で多様な観光資源を活かして遍く旅行者が快適に観光を満喫できる環境の整備を構築することで長期滞在(逗留)を促し、外貨獲得の国際的競争力を備えた観光を日本の基幹産業の一つに成長させていく目標も忘れてはなるまい。
 一方、日本人旅行者の状況に目を転じると、2015(平成27)年の海外旅行者数は1612万人と、昨年に続き減少(前年比4.1%減)した。国内旅行では、2015年における宿泊旅行者数は前年を6.5%上回る延べ3億1673万人、日帰り旅行者は前年をわずかに割り込んで延べ2億9705万人であった。ちなみに、昨年(2015)の日本国内における延べ宿泊者数は5億545万人(前年比6.7%増)で、初めて宿泊者数5億人(日本人4億3908万人(前年比2.4%増)・外国人6637万人(同48.1%増))を突破した。
画像 熊本県南部の霧島連山に囲まれたえびの高原を走るSL人吉観光列車JR九州
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 今、高い集客力で地方・地域の活性化を下支えし、地方創生に貢献している一つに、SL(蒸気機関車)の復活運転がある。1世紀余りにわたり日本の鉄路を支え、今日ある日本の鉄道の基盤を築き上げてきたSL列車(客貨とも)が国内の営業路線から姿を消して行ったのは、北海道を終焉の地として今から40年以上も前の1975(昭和50)年の冬(12月)であった。
 そのSLが、北の地で終焉を迎えたわずか1年後には、観光を主眼に高い集客力への期待から大井川鐵道(静岡県)を端緒に日本の各地でSLの復活運転が相次いだ。現在、観光を主な目的としてSLを復活させ営業運行を行っている主な鉄道会社は、先の大井川鐵道をはじめ真岡鐵道(栃木県)、秩父鉄道(埼玉県)、JR北海道、JR東日本、JR西日本、JR九州の7社である。そこにまた一つ、SLの復活運転を目指す鉄道会社が加わろうとしている。来夏(2017(平成29))の復活・営業運転開始を目指し、国際観光地の「日光」(栃木県日光市)を沿線に持つ大手私鉄の東武鉄道(総営業キロ463.3km・本社:東京都墨田区押上)が同鉄道にとって半世紀ぶりとなるSLの復活運転に立ち向かっている。
 沿線地域の人口減少や少子高齢化に伴う社会構造の変化の中で、衰退を見せている地方の創生に向けた社会の動きが進行する下で東武鉄道は昨年(2015)、文化遺産の復元や地域活性化への施策としてSL運転の復活を表明した。そして、鉄道会社ならではの特性を活かして地域の活性化に寄与すべく東武鉄道は、SLの復活運転に観光活力創出を目指したのである。さりとて、同社はSL運転の廃止(1966(昭和41)年)からすでに半世紀が経っており、移ろふ世代交代の中で同社内にはSLに関する施設や技術のノウハウは皆無に等しかった。ちなみに東武鉄道は、会社設立(1897(明治30)年)当初から蒸気機関車による運転を開始しており、最盛期(1947(昭和22)年)には60両を保有していたが、電化の伸展で1966(昭和41)年に全廃となった。
画像 東武鉄道では現在、SLを運行している他社(JR北海道、大井川鐵道、秩父鉄道、真岡鐵道)に同社々員18名を派遣し、運転や検修技術の習得・養成が行われている。一方、主体のSLはJR北海道で運転休止中の「C11形207号機」を借り受けて整備し、客車、車掌車、ディーゼル機関車などはJR西日本やJR貨物、JR東日本、JR四国の各事業者から調達・協力を仰ぐとしている。来夏からの運行では、6両編成(SL+車掌車+客車3両+ディーゼル機関車)のSL列車により東武鬼怒川線下今市~鬼怒川温泉駅間12.4kmを約35分で結び、祝土日を中心に年間約140日・1日3往復程度の運行が予定されている。東武鉄道は、SL復活運転の目的を鉄道産業や文化遺産の復元・保存、日光・鬼怒川地区の交流人口増加による地域振興、栃木・福島エリアへの支援活性化として位置付けている。
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                    東武鉄道のSL復活運転に投入されるC11207号機JR北海道所属) 〉
 SLの運転は、維持・管理等のコストは嵩むが、高い経済効果が見込め、新規需要の創出にもつながる。来夏のSL復活運転をきっかけに、日光・鬼怒川周辺エリアの来訪者が増えれば沿線地域はトータル的に潤い、交流人口の増加に結びつくことで東武鉄道が目的ともした栃木・福島エリアへの支援活性化にもつながる。大手私鉄が挑むSLの復活運転、果たして地方・地域の活性化に向けどのような走りを見せてくれるのだろうか・・・。 (終)…観光庁のデータを参照させていただいた.

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