BRTで本格復旧へ ・ 東日本大震災から5年

画像 2011年3月11日(午後2時46分)に発生した東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)から今年(2016)で5年が経った。昨年(2015)12月25日には国土交通省本庁(東京都千代田霞が関)において、被災路線のJR気仙沼線(気仙沼~柳津間55.3km)およびJR大船渡線(気仙沼~盛間43.7km)のBRT導入による本格復旧策(現在は両路線ともにBRT(バス高速輸送システム)による仮復旧運行中)について話し合うJR東日本を交えた3回目の「沿線自治体首長会議」が開催された。この会議は、前回の2回目にあたる同会議でJR東日本が提案をしていたBRTによる両路線の本格復旧について話し合いが持たれたもので、国土交通省によれば沿線5市町のうち気仙沼市を除く4市町(大船渡市、陸前高田市、登米市、南三陸町)がJR東日本の提案を了承し、BRTにより本格復旧を目指すことで合意に至っていたという。なお、提案(JR東日本)に対する合否の回答を保留していた気仙沼市では、市民の意見をくまなく聞いた上で市としての最終対応を可能な限り早期の段階で示したいとしていた。この回の首長会議においてJR東日本は、両路線ともに今後もBRTによる継続運行(仮復旧)を行っていくことを確約した上で、BRTの本格導入に至った場合の地域への貢献策として地域交通の活性化、地域間交流人口拡大に向けた利便性の向上、産業や観光振興による活力ある地域づくりの3項目を図っていく意向を示している。ただ、JR気仙沼線・大船渡線のBRTによる本格復旧策については、大震災以降今まで国が仲介する形で沿線自治体等と係わってきたが、国土交通省ではこの回の首長会議を以て国の関与を終わりとする意向を示し、今後はBRT導入に係わる判断はJR東日本と沿線各自治体相互間における個別協議に委ねるとしている。ただ、国の関与を全否定するというものではなく、今後も国土交通省としては必要な支援は継続していく考えであるという。
画像 東日本大震災から5年を経る今、鉄道に代わってBRT導入による仮復旧で本格的な運行を開始したJR気仙沼線(2012.12.22開始)とJR大船渡線(2013.3.2開始)の両沿線では、このBRTによる新たな運行形態に移行以来4年近くを経る中でBRT化が沿線へ定着の様相を示しており、膨大な復旧費用を要する鉄道での再生に替わりBRTによる運行を今後も継続していこうという、地元沿線住民の理解が深まりを見せている。

2011年3月11日に起きた東日本大震災から今年で5年が過ぎたが、その際の大地震(マグニチュード9.0)で発生した大津波でJR東日本の太平洋沿岸沿いの線区は甚大な被害を被った。この震災(津波)発生から間もなくの時点で、太平洋沿岸部を走る鉄路の不通区間(運転見合わせ区間)は7路線(常磐線いわき~亘理間(125.2km)、仙石線東塩釜~石巻間(33.8km)、石巻線前谷地~女川間(31.9km)、気仙沼線柳津~気仙沼間(55.3km)、大船渡線気仙沼~盛間(43.7km)、山田線宮古~釜石間(55.4km)、八戸線階上~久慈間(37.4km))の計約400kmに及んだが、早期の被災沿線復興(まちづくり)に欠かせない生活の移動(交通)手段の確保を目指し国・県・沿線自治体などによる“まちづくり”と併せた復興と被災線区復旧への努力が推し進められた結果、震災から5年を前の2016年2月末時点における不通区間は約220km(BRTで仮復旧中のJR気仙沼・大船渡両線の99.0kmを含む)と震災発生当初より半減している。
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     東日本大震災により5年もJR常磐線原ノ町駅福島県南相馬市で止まったままの上野行き特急スーパーひたち50号」 ・ 2016.2
画像 2016年3月時点における鉄道での復旧を前提として不通となっている区間は、JR常磐線の竜田~原ノ町間46.0km(福島第一原発事故による帰還困難指定区域)と相馬~浜吉田間22.6km(津波被害)およびJR山田線釜石~宮古間55.4km(津波被害)の3区間・計124.0km(震災発生当初不通区間の31%)である。ちなみに東北新幹線は、大震災の地震によって大宮(埼玉県さいたま市)~いわて沼宮内(岩手県岩手町)間約500kmの区間にわたって架線や架線柱、高架橋、駅などおよそ1200箇所の施設・設備が被害を被ったが、集中的に復旧工事が行われた結果、2011年4月29日に震災発生から49日後という早い段階での全線復旧にこぎ着けている。

太平洋沿岸の被災路線のうち、JR山田線釜石~宮古間とともに、JR気仙沼線の柳津~気仙沼間(55.3km)とJR大船渡線の気仙沼~盛間(43.7km)は他の津波被災線区に比べ甚大な被害が広範囲に及んだ。被災の復旧に当たっては、早い時期からJR東日本をはじめ国や沿線自治体および関係機関等との間で協議が行われてきたが、凄惨な被災状況から推して従来の鉄道での復旧に当たっては将来発生し得る津波に対する対策の構築や沿線のまちづくりとの整合、膨大な復旧費用の負担など課題が輻輳する中にあっては、復旧には相当に長い期間を要すると見込まれた。また、これら両路線(地方交通線)の輸送量が震災発生前の時点でJR東日本発足時当時(1987)の半分程度(4~6割)にまで減少していた状況(2010年度の輸送密度・気仙沼線柳津~気仙沼間839人、大船渡線気仙沼~盛間426人)から、復興が進むにつれまちの形や生活圏も変容していく中で今後どの程度の輸送量確保が鉄道に求められるのか、JR東日本にとって被災路線の復旧は予測の範囲を超えた大きな課題であった。
画像                              BRTJR気仙沼線  
 こうした沿線被災の現状が絡む中でJR東日本では、被災地の復興に向け早期に被災路線の復旧を進めて沿線住民の安全で利便性の高い輸送サービスを確保しようという観点から、気仙沼線(柳津~気仙沼間)と大船渡線(気仙沼~盛間)の両路線においてBRT(Bus Rapid Transit:バス専用道を走行することで一般の路線バスに比べ速達性と定時性を向上させた交通システム)導入による“仮復旧”を2012年から行ってきた。ちなみにBRTの導入による現在の基本的な運行形態としては、鉄道に代わる仮復旧であることからJR東日本が事業主体者として道路運送法に基づく一般乗合旅客自動車運送事業(路線バス事業)の許可を受けて復旧輸送に就いており、バスによる運行自体は地元のバス事業者(ミヤコーバスと岩手県交通)へ委託して行う輸送形態が採られている。
 また、気仙沼線と大船渡線の両路線と同様に甚大な津波被害を被って不通となっているJR山田線(地方交通線・盛岡~釜石間157.5km)のうち太平洋沿岸に面した宮古~釜石間(55.4km)の復旧については、沿線の過疎化が進んでいる中ではあるが、鉄道での復旧に対する沿線住民の意向がことのほか強く示されてきていることからJR東日本は、山田線の路線が南北を第三セクター会社「三陸鉄道」の南北リアス線(南リアス線盛~釜石間36.6km、北リアス線宮古~久慈間71.0km)に挟まれているという地理的条件に在ることから、利用の促進と高い持続可能性が期待できる地域交通の再生が可能なことから、2014年1月に三陸鉄道による南北リアス線との一体運営化による復旧を沿線自治体や関係機関等に提案した。その結果、関係機関等との協議・調整の末、①三陸鉄道による一体運営化 ②JR東日本が被災鉄道施設の復旧および設備の一部強化(レール交換やマクラギのPC化等)を実施し、復旧工事後に車両を含めた資産を沿線自治体へ無償譲渡する ③移管協力金として30億円を提供する ④観光キャンペーン等による観光客誘致や地域活性化・利用促進に協力していく、とした合意書・覚書により2015年2月6日にJR東日本の提案受け入れが成り、三陸鉄道による一体運営化に向け復旧が図られることとなった。復旧工事は2015年3月7日に着手され、現在、2018年度内の復旧・開通を目指して工事が進捗中である。
画像 JR気仙沼線最知駅の惨状東日本大震災
2016年3月時点におけるJR気仙沼・大船渡両被災路線のBRTによる仮復旧に対する専用道整備状況を示すと、JR気仙沼線の専用道延長は22.7kmで、鉄道営業キロ55.3kmに対する専用道整備率は約41%である。最終的には90%程度まで専用道整備率を高めていく計画という。また、JR大船渡線の専用道延長は16.2kmで、鉄道営業キロ43.7kmに対する同整備率は約37%である。最終的には同整備率を50%程度にまで高めていく計画を持つ。このBRT専用道は、街々の復興・伸展に連れ順次延伸整備されてバス待避スペースの設置によりバスの行き違いを容易にし、鉄道時代の1.5~3倍という運行頻度を創出して非常に高い運行のフリークエンシー性(パターンダイヤの構成や朝の通学時間帯の10~15分間隔など)が確保されている。駅についても、BRTが鉄道の仮復旧という位置付けにあることから既設鉄道駅での停車を基本としているが、地元被災地の自治体からの要望・要請に基づいても駅の新設(気仙沼線1駅、大船渡線5駅)や移設が行われてきた。また、バスであることの輸送特性等を活かした、需要変動に合わせた続行便の運行(沿線高校等の行事)や復興のまちづくり事業に合わせた一般道への迂回運行など、柔軟な輸送サービスの提供にも力を入れている。さらには、気仙沼・柳津方面から仙台(JR仙石線)・石巻(JR石巻線)方面への乗り継ぎ利便性向上を目的に、2015年6月27日から気仙沼線のBRTの一部を前谷地まで延長運行する取扱い(鉄道との併用運行)も実施されている。
画像      JR大船渡線陸前高田駅周辺の惨状東日本大震災
東日本大震災で甚大な被害を受け、BRTによる仮復旧で運行が継続されているJR気仙沼・大船渡両路線の沿線では、復旧以来3年以上を経る過程で鉄道に代わるこの新たな輸送(運行)形態(仮復旧)が定着しつつあり、膨大な費用と日時を要する鉄道による復旧・再生がBRTによる利便性(前述)を考え合わせれば現実的ではないとする地元の理解も浸透しつつある中で、今後もBRTによる運行(輸送)が維持・継続されていくことへの現実性(本格復旧)が表面化を見せている。冒頭で述べた如く、2015年12月25日に国土交通省主催で議論が行われた第3回の沿線自治体首長会議において被災沿線の大部分の自治体がBRTによる本格復旧の受け入れに合意したことは、復興に必要とする持続可能な交通手段としてBRTの継続運行(本格導入)が強く望まれていることを示しているのではないだろうか。
画像 震災で被災したJR気仙沼・大船渡両路線の復旧に導入されたBRTは、これまではあくまでも“仮復旧”という位置付けであることから、その運転形態や系統は被災沿線地域の鉄道路線に沿う制約された形で運行されている。しかし、BRTでの本格復旧という形(これまでの経緯からその公算は高い)が採られれば、バス輸送である以上BRT運行区域から外方(他市街地等)へ運行を拡げることも可能となろう。こうしたバス輸送のメリットを活かし、従来の鉄道では成し得なかったサービスの提供(利用者層に沿った学校や病院への乗り入れ、沿線観光スポットへの運行、新幹線アクセス急行便の新設など)を創出できる。しかしながら新しいサービス提供に当たっては、沿線周辺地域においても地域に密接した地元の一般路線バスも複数運行されており、また今のBRTの運行が地元バス事業者に委託されている状況もあって、バスの運行に際してはBRT&一般路線バスの相互間における協調と経営環境等が配慮されていかなければならない。すなわち、BRT運行区間以外の運行における地元の一般路線バスに対する運賃の擦り合わせや調整、一般路線バスによる一部BRT専用道への乗り入れ使用など相互の運営に関する整合・調整が必要となろう。
 なにはともあれ、被災地の早期復興には地域公共交通ネットワークの整備・構築が欠かせず、被災路線のJR気仙沼線・大船渡線両路線の一刻も早いBRTによる本格復旧が望まれるところである。 (終)


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