鉄道と再生可能エネルギーに寄せる

画像 石油やガスなどの化学燃料に代わるエネルギー資源として近年富に注目を集めているのが、資源の枯渇を招かずに繰り返し利用できる再生可能エネルギー(風力、水力、地熱、太陽光、バイオマス等・海外では“代替エネルギー”と称される分野)の導入である。昨今の日本のエネルギー事情は、東日本大震災(2011.3.11)で引き起こされた福島第一原発事故が日本の原子力発電に大きな影響を及ぼして以降、電力を主要エネルギーとする日本のエネルギー事情に大きな変換をもたらしている。
 大震災以降の日本全体のエネルギー不足と大幅な電力料金の高騰は、事業主体の輸送を支える運転用電力が大半を占める鉄道事業者にとっては、省エネルギー化に向けた施策の必要性がますます高まっている。モード別に見ると鉄道は、一般に他の交通機関に比べ省エネルギーな輸送機関であるのは論を待たないところだが、鉄道の使用電力量と旅客輸送量の推移(電気事業連合会公表の産業用電力販売量データ)によっても2013(平成25)年5月に施行された改正省エネルギー法(2013(平成25).5.31公布)以降の使用電力量が輸送量増加の下で確実に減少しており、今後も省エネルギーな交通機関としてより一層の効率化が求められよう。
 鉄道の消費電力エネルギーにおいては、鉄道事業者が消費する総電力量のうち運転(輸送)用電力がJR各社をはじめとする大手民鉄等においては70~85%程度を占めており、使用電力の主体を成している。また、その運転用電力には車両駆動用電力と補機用電力(車両搭載の発電機、圧縮機、車内空調・照明など)とがあり、エネルギー使用比率は8対2程度となっている。消費総電力の残りの部分は、安全保安設備(信号、通信、踏切等)や駅構内設備(照明、エレベーター、エスカレーター、空調等)、車両基地、本社などで消費される付帯電力となっている。ただ、地下鉄では、事業者によっては運転用電力より付帯電力の方が多いケースもあるという。こうした中で、鉄道事業者が目指す電力の省エネルギー化は、自らの使用電力料金の節減並びに地球の環境負荷低減対策(CO2排出量削減)に対処・貢献できるメインな施策づくりにあるとされている。
画像                                       太陽電池発電
今、各鉄道事業者においては、近年増え続けている付帯電力量の削減に向け駅や駅ビル、本社などにおける照明設備の見直し(LED化や照明範囲・配置)や空調設備の効率化(設備の更新)などが積極的に進められている。また、駅や車両基地などの広い建物の屋根上や空いている鉄道用地等を利用して、太陽光発電や地域の特性を活かした風力発電といった再生可能なエネルギーを導入した電力消費量削減化対策も全国各地で進む。ただ、これら再生可能エネルギーは、エネルギー密度(発電容量)が小さくしかもエネルギー変動(自然現象による発電量の不安定)が大きく、供給力や安定性の面から運転用電力としての使用例は殆ど見られていないのが現状で、今のところ再生可能エネルギーは専ら付帯エネルギー用としての使用範囲に止まっている。
 そのような現状の下で鉄道総研(鉄道総合技術研究所・東京国立市)では、鉄道の将来に向けた研究課題として「エネルギーの高効率な利用」に取り組んできた中で、その一環として「自然エネルギーを利用した電力システムの構築」の研究で太陽光発電や風力発電など変動する再生可能エネルギーを念頭に置いた鉄道への運転用電力として用いる方策を検討してきた。現在、鉄道が使用する運転用電力は、列車の力行・回生による運転等によって大きく変動を生じていることから、変動の素でもある回生電力を有効活用する手法として電力貯蔵装置の導入が進められている。その電力貯蔵装置に再生可能エネルギー発電装置を接続し、鉄道(変動電力)との協調制御を行うことで再生可能エネルギーの発電と運転用電力(変動)との連携が可能となり、使用エネルギーの効率化が図られるというものである。鉄道総研構内の実験線における試験およびシミュレーション計算の結果によれば、列車の高密度線区では回生電力を優先に、低密度線区では再生可能エネルギーを優先に使用できるよう電力貯蔵装置を制御することで、2~7%程度の省エネルギー効果を期待できることが示された。鉄道の運転用電力として再生可能エネルギーを積極的に取り込んでいける環境の創出には、まだまだ再生可能エネルギーの汎用的な利用に向けさらなる研究・開発が待たれるところだ。

近年の日本の電力事情においては、東日本大震災の影響による電力量の逼迫(原発事故による原子力発電の抑制)や再生可能エネルギー固定価格買取制度の施行(FIT制度…2012(平成24).7.1施行)等により再生可能エネルギーに対し産業界などの関心が高まりを見せる中で、環境やエネルギーの循環型社会の創出に向けた取り組みとして太陽光や風力、バイオマスなどによる発電への取り組みが全国で推進されている。
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                           内原第一太陽電池発電所茨城県) 〉
 その中でも、年間約58億kWhという大量の電力を消費しているJR東日本においては、豊かな自然環境を豊富に有する北東北の路線沿線周辺を“再生可能エネルギー基地”として地域の活性化も含め、太陽光、風力、地熱、バイオマスによる発電設備の導入を着実に進めていくとしている。すでに、2011年2月には東京駅の一部東海道線ホーム上屋全面に太陽光発電パネルを設置するなど、2012年3月にはさまざまな環境保全技術を導入する施策の一環として四ッ谷、平泉、海浜幕張、福島などの駅をはじめとする駅施設などへの太陽光発電パネルの設置を順次進めている途上にある。さらには、JR東日本では初の大規模太陽光発電設備として太陽電池発電所(1050kW容量のメガソーラ)を2014年2月に京葉車両センター構内に建設して稼働を開始している。その後も、内原第一・第二太陽電池発電所(約3MW・常磐線友部~内原間)や秋田追分(秋田県潟上市・約1.3MW)および秋田天王(同市・約1.8MW)の太陽電池発電所を開設して運用を開始しており、今後も青森と秋田での建設が予定されている。
画像               〈 下浜風力発電所のイメージ 羽越本線道川~下浜間秋田県秋田市) 〉
 また、風力発電に関してJR東日本は、羽越本線道川~下浜間にある自社の鉄道林用地(秋田県)を利用して風力発電設備1基を新設(総工事費約10億円)する工事の開始を2015年秋に予定しており、2016年秋の営業運用開始を目指した風力発電事業への参画を発表(2015.4.7)している。風力発電設備の規模は、高さ約78㍍のタワーに3本の羽根を持つ風車(直径約86㍍)1基を設置しで約2MWを発電し、年間に約5800MWhの発電量(一般家庭約1600世帯分の年間使用電力量に相当)を得るものである。発電した電力は、FIT制度を利用して売電されるという。また、同風力発電事業の展開にあたりJR東日本は、地元企業などにパートナーとして参画してもらう仕組みづくりを通して地域に根差した風力発電事業を行っていくために、風力発電事業の企画・開発を手掛ける地域エネルギー開発(株)と共同で新会社「JR東日本エネルギー開発(株)」を設立(資本金1億5000万円)して同事業に臨んでいる。

再生可能エネルギーのバイオマス発電への取り組みでは、近年の木材利用の減少や安価な輸入材の増加で日本の林業全体が衰退化しつつあり、健全な森林運営が困難になっている昨今、その対応・対策施策の一環として木質チップを使用するバイオマス発電が注目されている状況にある。
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                                 〈 鉄 道 林
 140年を超える歴史を持ち、もとより鉄道の災害防止を目的に100年を超えて膨大な鉄道林(吹雪、雪崩、飛砂などの防止林や斜面保全林)を全国各地に育成・保有してきた日本の鉄道。その歩みの中にあってJR東日本は、自社管内に数多くの鉄道林(林地数約1100林地・面積約3900ha)を保有しているが、森林の樹木管理等から派生する間伐材などの残材については必ずしも有効利用できていないのが現状であるという。そこでJR東日本では、鉄道林の間伐材等を有効活用できる木質バイオマス発電が検討され、間伐材などの有効活用を目指して2014年10月に青森県八戸市にバイオマス発電(株)を設立し、2017年度の使用開始に向けバイオマス発電事業を展開することとした。
 事業概要としては、発電規模約12MWのバイオマス発電施設を建設(八戸港付近)してFIT制度を利用した発電事業を行い、年間8万5000MWh(一般家庭約1万7000世帯分)の発電量を見込むとしている。環境面に関しても、木質チップによるバイオマス発電は環境に優しいとされ、木質チップが燃焼する際に排出されるCO2はもともとは樹木が成長過程で光合成により大気中から吸収したものであり、燃焼によっても地球全体におけるCO2を増加させたことにはならない(カーボンニュートラル)とされている。
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 燃料となる木質チップには、鉄道林の中でも比較的搬入出の確保が容易な仙台、盛岡、秋田各支社内にある吹雪防止林等の平地林(計約1140ha)の間伐材などが使用される予定だという。このバイオマス発電事業の展開により、継続的に木質チップを利用することで林業全体の活性化が図られるとともに、適切な間伐が行われることで地域の森林の健全化に寄与できるとしている。さらには、発電施設だけではなく、運搬や加工といった関連事業にも活力を派生させ、地域の活性化にもたらされる期待は大きいとされる。

世界の人口が増加している中で、新興国の経済発展や産業の多様化を背景に増大する世界のエネルギー需要に対して、環境保全に向けた地球温暖化防止への取り組みは世界共通の大きな課題となっている。
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                             2030年電源構成案日本) 〉
 2015年6月1日に開催された総合資源エネルギー調査会(経済産業大臣の諮問機関で資源エネルギー庁の所管・2001(平成13).1設置)の小委員会で政府は、2030年時点での日本の望ましい電源構成(図・「2030年電源構成案」参照)として再生可能エネルギーの比率を22~24%とする案を策定している。また、経済産業省は2015年9月に、再生可能エネルギーを持続可能な形で長期的かつ安定的なエネルギー源として導入・拡大を図るため、新たに専門家などの有識者を交えた「再生可能エネルギー導入促進関連制度改革小委員会」を総合資源エネルギー調査会の下に設置し、検討(固定価格買取制度を含めた制度改革等)を開始している。こうした再生可能エネルギーに対する国の動きを受けるかたちで今後、同エネルギーの社会への導入・活用(運用)に向けた動きは一層加速されていくものと思われる。
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 エネルギーの消費効率が高く、環境への負荷も少ないとして位置付けられている鉄道事業は一方で、列車の運行はじめとして駅や保安装置、車両、施設・設備等のメンテナンスに費やされるエネルギーにおいては大量消費事業者であることも事実で、昨今の駅ビル事業やホテルといった事業の多角化でエネルギーの消費量は膨らんでいる。
 そして、このところのエネルギー政策の動向や環境に対する世の中の関心が高まりを見せている中で、地球環境保全の取り組みに加え、効率的なエネルギーの使用や資源の有効活用、廃棄物の削減、再生利用などの適切で継続的な対応への取り組みがますます求められていくのは必至だ。
 今後、日本のエネルギー政策においては、原子力発電への依存度が低下していくであろう中で、環境に優しくCO2排出量の削減化に貢献し地球温暖化防止にも期待の大きい鉄道事業においては、さらなる省エネルギー化への取り組みの重要性が増してこよう。先のJR東日本では、2015(平成27)年度の事業計画の中で電力の安定供給確保に向け川崎火力発電所等の設備更新を進めるほか、再生可能エネルギー設備(太陽光発電、風力発電、バイオマス発電等)の新設や電力貯蔵装置のさらなる整備を推し進め、また、照明装置のLED化や空調設備の高効率機器への取り替えを進めるなどの実施計画を定めている。そして、さらなる省エネルギー化を推し進めることで一層環境に優しい鉄道事業の実現を目指し、今、JR東日本はその計画実施の最中にある。 (終)・JRガゼットを参照させていただいた.

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