鉄道 ~ぶらり一景

交通系ICカードのパイオニアとしてJR東日本の「Suica」がサービスを開始してから今年(2013)で12年目を迎え、今や国民の新しい生活インフラに成長しつつあるICカードをベースに、鉄道各社の事業展開もますます加速している昨今である。そのJR各社と私鉄などが発行する10種類の交通系ICカードによる全国相互利用サービスが、2013年3月23日からスタートして早くも2カ月余りが過ぎた。これにより、利便性がさらに大幅に向上した10種類の交通系ICカード(Suica・JR東日本、PASMO・首都圏の私鉄、PiTaPa・関西の私鉄、ICOCA・JR西日本、TOICA・JR東海、Kitaca・JR北海道、SUGOCA・JR九州、manaca・名古屋市交通局 名鉄、nimoca・西鉄、はやかけん・福岡市交通局)は、使用が全国共通となったことでこれらカードの利用がさらに増えるものと鉄道各社は見込んでいる。

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 現在、これら10種類の総発行枚数はおよそ8千万枚に及んでおり、全国142事業者(鉄道52、バス96の事業者・内6事業者重複)の4275駅と約2万台のバスで利用できる。しかも、これらのカード(PiTaPaを除く)で全国約20万店舗に及ぶ駅の売店やコンビニエンスストア等で買い物ができる。これからは、出張先や旅行先においても、交通系ICカード1枚を持ち合わせていれば気軽に電車やバスに乗れ、買い物さえもできてしまう。
 今回の交通系ICカード10種の全国相互利用サービスは、日常の移動の足である公共交通機関の中でも最も利用されている鉄道を、より一層気軽に利用できる環境の交通機関に仕立て、さらなる利便性の高まりを期待させてくれる。そうした鉄道を通し、日常的に展開されている人々の営みや関心事は実にさまざまだ。鉄道に思い、鉄道に感じ、そして享受した悲喜こもごもの情景を文字にした、新聞の読者投稿欄に寄せられた声を以下に示します。


ネクタイ結び 頼んできた青年  (愛知県 無職男性70歳)
 長い鉄道員人生も終着駅が見え始めた頃、私は愛知県郊外の小さな駅に一人で勤務していた。活気ある朝の人の流れも、9時を過ぎるとまばらになり、駅は静けさを取り戻す。そんなある日、通路を右往左往する青年の姿が目に入った。
 意を決したようにその青年が、窓口に来て「これ結んでください」と1本のネクタイを差し出した。就職の面接に行くらしい。きちんとしっかり結んであげると、ペコリと頭を下げきびすを返すと、階段を駆け下りていった。
 忘れかけていた頃、見覚えのある青年が窓口に来て「先日はお世話になりました」と礼を言う。就職できたことを報告してくれた。思わず「桜咲いたじゃん」と、肩を叩くと頭を下げた。
 あの時から7年、あの好青年も今頃は中堅社員として頑張っていることだろう。まもなく、就職の季節がやって来る。満開の“笑顔桜”が大勢の人たちに咲くよう祈りたい。

秋田新幹線脱線 究明を急げ  (秋田県 会社員男性62歳)
画像 〈 吹雪の中で脱線した秋田新幹線「こまち25号」・2013.3.2 〉
 秋田県民にとって、秋田新幹線は首都圏とつながる重要な交通手段だ。特に雪に閉ざされる冬季は、安定した移動手段としてより重要性を増す。だから、2日(注・2013.3.2)の脱線事故には大かな衝撃を受けた。同時に、この事故の関係機関の対応について気になる点が二つあった。
 先ず、JR東日本だ。事故後、乗客が救出されるまで約6時間も要し、体調を崩す乗客もいた。事故現場は国道の近くなのに、何故そんなに時間がかかったのか、明確な説明がない。事故発生時の救出方法について、平時に十分な訓練を行っていたのか疑問に思える。
 次に、脱線原因を究明する国土交通省の運輸安全委員会の対応だ。調査官からは、事故原因の報告書は1年後を目途に作成されるとの説明があった。あまりに時間がかかり過ぎで、これでは来年の冬季の対策に生かすことができない。大惨事につながりかねない事故なのだから、迅速に調査結果をまとめ対策を講じるべきだ。
参考…2013年3月2日16時05分頃、激しい吹雪の中で東京発秋田行きの秋田新幹線〈こまち25号〉(6両編成・乗客約130人)が在来線区間の神宮寺~刈和野間(秋田県大仙市神宮寺)を先行列車との関連から時速約20㎞で低速走行中に、先頭車両の先頭台車が脱線して緊急停止した。幸いにも、怪我人等はなく済んでいる。ただ、猛吹雪と積雪が乗客の救出や復旧作業を阻み、乗客は約6時間にわたって列車内に留め置かれた。脱線事故の発生から6時間ほど経った同日の22時頃になって、車内の乗客はようやくにしてJRが用意した3台の救援バスに乗り移って救出されている。この際、乗客の男性一人が足のむくみを訴え、救急車で搬送された。

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                             〈 中越地震で脱線した上越新幹線「とき325号」・2004.10.23 〉
 新幹線が営業運転中に脱線したのは、2004(平成16)年の新潟県中越地震の際に上越新幹線(下り〈とき325号〉・乗客約150人、怪我人なし)が脱線したとき以来2度目である。国土交通省によると、新幹線で営業列車以外も含め4度の脱線のうち、新幹線が乗り入れている在来線区間での脱線は初めてである。


使い勝手悪い先端技術の新駅  (東京都 主婦50歳)
 16日(注・2013.3)に東急東横線渋谷駅が新しくなった。長いこと東横線沿線に住み、自分の成長と共に思い出を刻んできた旧プラットホームがなくなるのは残念だったが、一方で先端技術を駆使した新駅への期待感もあった。早速、週末の混雑を避け、月曜日に渋谷駅探索へ出かけてみた。
 新ホームの第一印象は、「狭い」。エスカレーターにはすぐ長蛇の列ができ、利用するには延々と続く列の最後尾へ移動する必要がある。しかも、並んで待っていると、エスカレーターに乗らないうちに別の電車が到着。ホームは人で溢れかえった。平日の午前10時半でこれでは、週末やラッシュ時はどうなるのだろう。
 エスカレーターも、下りをもっと増やすべきだと思った。足の悪い私の母は、「若い人は下り階段を苦にしないだろうが、足の悪い高齢者にとっては上りより怖い」と常々話している。駅の設計者は、高齢者のことが分かっていないのではないか。東横線と東京メトロ副都心線の乗り入れで、利便性はアップしたが、元々の利用者にとって新駅の使い勝手はかなり悪いと感じた。
参考…東急東横線(東京急行電鉄)は、渋谷~代官山間(1.5km)の地下化完成により線路の切り替えが行われ、行き止まり式の高架駅だった東急東横線の渋谷駅は新装されて地下駅になった。これを機に、2013(平成25)年3月16日のダイヤ改正に合わせ東急東横線は東京メトロ副都心線との相互直通運転を開始した。同時に、東京メトロ副都心線は従来から東武東上線と西武池袋線・有楽町線との相互直通運転を実施しており、東京急行電鉄を含め同電鉄東横線渋谷駅を経由して東武鉄道、西武鉄道、東京メトロと、東急東横線が相互直通運転を実施している横浜高速鉄道みなとみらい線とを合わせ5社が相互に乗り入れる直通運転が開始されている。

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                  〈 東急東横線・東京メトロ副都心線相互直通運転発車式・渋谷駅 2013.3.16 〉
 5社による相互直通運転は、みなとみらい線の元町・中華街駅から東武東上線方面は森林公園駅までの80.6kmの区間、西武池袋線方面は飯能駅までの80.5kmの区間で実施されている。ただ、こうした複数事業者間にわたる長距離の相互直通運転は、利用者にとって利便性が高まり好都合だが、一方で事業者間の調整が複雑化して輸送障害時等の対応に苦慮することにならないか。
 投稿の中で、新渋谷駅の使い勝手はかなり悪いと感じた、とあるのは次のようなことではないだろうか。列車相互間および駅相互間の移動は円滑に行えるが、渋谷駅構内における移動に戸惑いがあるものと思われる。東横線・副都心線のホームがある地下5階から地下3階の改札口までは、2層のエスカレーターを利用しなければならない。さらに、地上2階にホームがあるJR山手線、地上3階にホームがある東京メトロ銀座線、その先の京王井の頭線までの各々の移動には、従来より連絡通路を長く歩かなければならない。東横線ホームから山手線まで3分、銀座線まで6分、井の頭線まで7分が平均的な移動時間だが、地下5階から地上2~3階までという長い移動距離は戸惑っていると、実際には以外と長く感じられるのではないだろうか。東急電鉄広報部では、当分の間は駅構内の案内係や警備員を増員して利用者の不便に対応するとしている。


駅階段 心のふれあい残して  (横浜市 会社員女性26歳)
 近く、最寄り駅に待望のエスカレーターとエレベーターが設置される。朝、狭い改札口に密集する学生たちをかき分け、息切れしながら必死に上っている階段も、あまり使わなくなる。
 ただ、少し心配なことがある。これまでの駅には、ホームから改札まで長く狭い急な階段がひとつあるだけだった。杖をついたお年寄りや乳幼児連れ、病人、けが人、大きな荷物を持った人たちを見かけた際には、居合わせた利用客それぞれが、自然と気にかけ、大丈夫ですかと声をかけたり、荷物を持ってあげたりと、お互いに助け合って上り下りしてきた。私自身も、海外渡航の行き帰りなどで何度も助けられた。
 駅舎の新装は大変うれしいが、利便性の向上の一方で、あの下町の雰囲気が漂う、心地よい温かさが失われないことを願う。

ベビーカー ご面倒かけます  (東京都 主婦42歳)
 さいたま市の鉄道博物館で行われた、ベビーカーの安全利用教室に参加した。電車待ちの際、ベビーカーをホームと平行になるように止めるよう指導され、教室の帰りから早速実践し始めた。
 ホームは、雨水がたまらないように傾斜がつけられており、ベビーカーをホームと垂直に止めると、ひとりでに動いてしまう恐れがあるという。ベビーカーで行動するようになってからは、安全確保は勿論のこと、“他者の存在”を意識するようになった。正直、独身時代にそんな余裕はなかったが、子育て中の今は電車移動に限らず、周りの人にご面倒をかけたり、お世話になったりすることが生活の前提だ。他者の存在を意識することが、結局は自分たちの身を守ることにつながる。
 電車内でマナーの悪い人を見かけるが、今の立場にならないと分からないことがあったので、大きなことは言えない。逆に、同じベビーカーの人たちが笑顔で声を掛けてくれる温かさには敬服する。子育ての孤独から解放される瞬間だ。公共の場は、いろいろなことを教えてくれる。 (終)

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