BRT・被災地復興へ走る

JRグループ(JR北海道を除く)では2013年3月16日にダイヤ改正を実施するが、その改正に合わせ東日本大震災の影響により不通となっている路線の一部区間で運転が再開される。運転再開の区間は、JR常磐線の亘理~浜吉田間(5.0km)の1区間と、JR石巻線の渡波~万石浦~沢田~浦宿間(6.5km)の3区間(これにより同線の代行バス輸送区間は女川駅まで2.5kmの1駅間となる)である。
 そのような状況の推移の下で、現在でも被災旅客鉄道線の8路線・300km余りが依然として不通となっている。東北地方を中心に未曾有の被害をもたらした東日本大震災だが、甚大な被害を受けたJR気仙沼線(宮城県・前谷地~気仙沼間72.8km)も大震災から間もなく2年が経とうとしている現在、柳津~気仙沼間(55.3km)が不通のままである。被災状況の規模から、気仙沼線の鉄道での復旧や同沿線地域の復興には、街づくり計画などとの整合性を含め検討すべき緒課題を多く抱えているため、復旧・復興に至るまでには長期間を要するものと見られている。

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                      〈 JR気仙沼線志津川駅付近の津波被害の惨状・志津川町 〉
 そうした状況の中でJR東日本は、長期の不通が続いている鉄道線の復旧時期が不透明な下で鉄道事業者としては、必要とされている安全で利便性の高い鉄道による地域交通サービスをなるべく早期に提供すべきであるとの観点から、2011年末に開催された気仙沼線復興調整会議において気仙沼線不通区間に対する復旧策として“BRTによる仮復旧”(BRT=Bus Rapid Transit:バス高速輸送システム)を気仙沼線沿線自治体(気仙沼市・登米市・南三陸町)に提案した。その後、沿線自治体等との話し合いを重ねた結果、同提案に対し2012年5月に沿線地域との合意が得られ、JR東日本は同年内のBRT運行開始に向け仮復旧の工事着手に至った。

バス代行輸送としてのBRT導入のメリットには、バス専用自動車道の整備・活用による速達性や定時性の確保が挙げられる。すなわち、被災線区のBRTによる仮復旧においては、鉄道の線路敷を整備してバス専用自動車道として活用することで一般のバス代行輸送に比べより高い速達性・定時性が確保できるとともに、ルートや駅の選定・設定等において街づくりとの整合に柔軟に対応できる利点がある。また、一般道との併用運転が可能であるため、鉄道での復旧に対し代行運転への早期再開が可能になると同時に、自走できる領域がフレキシブルであることから地震や津波などの震災時においても避難行動が迅速かつ応変に行えるなど、BRTの導入は事業者・利用者双方にとっても代行輸送機関として利するところが多い。これらの素地が、先行きが不透明な鉄道での気仙沼線復旧を目の前に、BRTによる仮復旧の提案に対する沿線自治体の合意を導いたとも思われる。

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                    〈 JR気仙沼線の線路敷きを整備したバス専用自動車道を走るBRT 〉
 震災後の不通区間に対しては、路線バスによる振替輸送で凌いではいたものの、十分な輸送態勢の提供には至らなかった。そのため、沿線からは利用に即した一刻も早い地域交通手段確保の要請が出されていた。JR東日本においても、早期に不通区間に対する鉄道に代わる代行輸送手段を提供すべきという公共交通事業者としての社会的責任を全うする視点から、BRTによる仮復旧の提案に至ったのである。

画像 〈 JR気仙沼線の被災線路に並行して一般道を走るBRT 〉
BRT導入にあたってJR東日本は、陸前階上~最知間(約2.1km)の線路敷をバス専用自動車道として整備(道路運送法に基づく・幅員は単線の線路敷活用のため1車線)し、同区間の供用とともに国道45号線をメインに一般道を走るルートで、2012年8月20日から不通区間の柳津~気仙沼間でBRTによる暫定運行(運行業務は㈱ミヤコーバスに委託・宮城交通100%出資の子会社で宮城県全域でバス事業を行う)を開始した。
 その後、歌津~陸前港間(約2.3km)の線路敷をバス専用自動車道として整備し、2区間のバス専用自動車道(約4.4km)を供用することで2012年12月22日からBRTによる旅客輸送を正式に開始した。この、2012年5月の気仙沼線復興調整会議でのBRT導入合意から約7カ月という短期間の迅速な対応に、一刻も早い地域交通手段の確保をと願った沿線自治体や沿線住民は一様に安堵の気持ちを感じたのではないだろうか。
 この度、BRTの暫定運行から正式運行への切換に際し、鉄道路線は気仙沼線の“BRT路線”としての位置付けとなってBRT運賃の新設や、一部鉄道駅のBRT新駅への移行が行われた。運行ダイヤについても、大震災前における鉄道の運行本数(上下22本)の2~3倍に相当する運行頻度が確保され、パターンダイヤ(毎時の発車時刻固定)の導入など大幅な運行のフリークェンシーが図られ利便性が向上されている。同時に、安心な利用に配慮した「ロケーションシステム」を導入し、バスの運行情報をリアルタイムで提供(駅待合室モニターや携帯電話)している。
 現在、柳津~気仙沼間のBRTルートの大半は一般道を走るが、今後は順次バス専用自動車道の供用区間の整備・拡大を進め、最終的にはより安定した定時性・速達性を図っていくために不通区間の柳津~気仙沼間において約6割の区間をバス専用自動車道化する方向で努力していくとしている。

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                       〈 JR大船渡線大船渡駅の津波被害の惨状・大船渡市 〉
JR気仙沼線同様に、大震災の被災により不通となっているJR大船渡線(岩手県・一ノ関~盛間105.7km)の気仙沼~盛間(43.7km)についても、BRTによる仮復旧を受け入れた気仙沼市に足並みを揃えるかたちで、大船渡線沿線の陸前高田市と大船渡市は同線の仮復旧に対しBRT導入受け入れの方針を正式に決めている。2013年春の運行開始を目指すJR東日本は、すでに線路敷のバス専用自動車道化に向けた整備を進めており、地域交通の確保へ力を注いでいる。
 JR気仙沼線柳津~気仙沼間のBRT正式開業に際し、同線の歌津駅で開かれたBRT運行開始記念式典の席上でJR東日本社長(冨田哲郎氏)は、次のように述べている。『BRTを安全かつ利便性高い交通機関にしていくとともに、一人でも多くの観光客に訪れていただき、沿線地域の活性化に取り組んでいきたい。皆さまの一日も早い復興に貢献することを誓います 』…と。 (終)~JRガゼット参照  関連公開ブログ「BRT~被災鉄路復旧の担い手となり得るか」 2012.9.27

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