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zoom RSS どうなる被災鉄道路線の復旧 ・・東日本大震災

<<   作成日時 : 2011/07/19 16:33   >>

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東日本大震災(2011.3.11)では、東北地方の太平洋沿岸沿いを走る鉄道路線のほとんどが大津波により壊滅的な打撃を受け、震災から4ヵ月を過ぎた今も10の路線で不通区間を抱えたままである。不通による運転休止区間の復旧を妨げている背景には、巨大地震と大津波で市街地の流失や地盤沈下など壊滅的な被害を受けた地域の復興が、未だ途についていない実情がある。すなわち、被災市街地の復興にあたり、新たな街づくりと鉄道の復旧は不可分な関係にあることから、新市街地復興に併せた復旧路線ルートの選定に係わり沿線住民のさまざまな思惑の表面化が復旧の障壁ともなっているのだ。
画像 [ 石巻〜矢本間で運転を再開したJR仙石線・陸前山下駅 2011.6.16 ] 
 そうした中で、JR東日本が復旧を急ぐ宮城県の仙台市と石巻市を結ぶ動脈路線の仙石線(電化路線)は、海岸線沿いのルートが甚大な被害を受けながらも復旧区間を伸ばしつつ、2011年6月16日には石巻〜矢本(東松島市)間8.8kmを復旧させ、4ヵ月余りぶりに被災した変電所施設が整わない下でディーゼルカーによる運転を再開した。ただ、未開通区間の矢本〜高城町間15.9kmは津波の被害が市街地域とともに特に甚大で、全線開通の見通しは立っていない。
 ちなみに運転休止の不通区間(2011.6.16現在)を挙げると、JR東日本では八戸線階上〜久慈間37.4km、山田線宮古〜釜石間55.4km、気仙沼線柳津〜気仙沼間55.3q、大船渡線気仙沼〜盛間43.7km、石巻線石巻〜女川間17.0km、仙石線高城町〜矢本間15.9km、常磐線久ノ浜〜亘理間110.6km、第三セクター鉄道では三陸鉄道北アリス線小本〜陸中野田間34.8km、同南アリス線盛〜釜石間全線36.6km、仙台空港鉄道名取〜仙台空港間7.1kmの計10路線・413.8kmの区間である。これらの不通区間ではバス等による代替輸送が行われてはいるが、沿線住民の日常の不便さは解消されていない。また、2011年9月までに運転再開の見通しが立っている区間は、八戸線の階上〜種市間6.7kmと仙台空港鉄道全線の2路線(13.8km)に過ぎない。

JR東日本の幹線路線である常磐線は、津波による原発事故(東京電力福島第一原発・原子炉冷却装置の故障による放射性物質の外部飛散事故)に伴う避難指定区域内に位置する久ノ浜(福島県)〜亘理(宮城県)間で被災復旧への工事着手ができずに不通が続いているが、震災後4ヵ月を経って路線の復旧を巡り沿線住民の間で対立が表面化している。
 隣り合う坂元駅(宮城県山元町)と山下駅(同)の周辺では、津波で駅舎や線路が流失した坂元駅の周辺住民からは津波の被害を繰り返さないためにも内陸へのルート変更を求める声が強く、町長も“百年先を見据えた町づくりが必要”と支持を唱える。
           [ 津波で駅舎が流出したJR常磐線坂元駅 ] 画像
 一方の山下駅は、駅舎や線路に津波の被害はなく、住民は既存ルートのままでの早期復旧を求めている。内陸へのルート変更が行われれば、新たに必要となる路線建設用地の獲得に時間を要すると見られ、しかも既存地域からの人口流出が予測され地域の衰退につながるとしており、町長へのリコール請求の声さえ出ているという。復旧に関した同町の波紋は、近隣自治体へも広がる。山下駅の北隣(仙台方)の亘理町では、ルートが変更になれば同町内にある浜吉田駅が現在地から離れた場所へ移動する可能性が高いと見られ、現駅勢圏を保つためにも既存ルートでの復旧を望んでいる。また、坂元駅の南隣(いわき方)の福島県新地町は、津波で新地駅を失ったものの、既存あるいは変更のルートであれ町の活性化を早く取り戻したく、早期の復旧を求めている。
 こうした被災路線の復旧に向け、二分化するかたちの沿線の民意とともに、その早期復旧の壁になっている一つに財源の問題がある。勿論、鉄路復旧の大前提として被災地域復興計画の具現化が欠かせない。

災害復旧事業費の補助費用に関しては、鉄道軌道整備法(1953(昭和28)年施行)によるところの事業費補助率は国と自治体が4分の1(25%)ずつで、残りの半分を事業者自身が負担することになっている。ただ、補助費用の助成対象は、災害復旧に要する費用が当該路線運輸収入の10%以上であることや、経営実態が被災年度の過去3ヵ年間において赤字であることなどの条件が必要とされる。すなわち、経営状況が厳しいながらも、復旧事業費の半分を自己捻出できる事業者を対象に交付される補助金の制度である。
 したがって、黒字経営下のJR東日本にとっては同補助費受給は対象外ということになる。よしんば補助を受けられたにしても、JR東日本とて2分の1の負担(出費)は重い。被災路線の復旧にあたっては、被災市街地の復興との一体化が必要で、しかも再び津波被害を被らないためにも新市街地の再建には高台等への移転を望む沿線自治体もあり、内陸へ路線ルートの変更が行われれば新たに用地の取得が必要となり、自力復旧を求められるJR東日本にとっては復旧費用がさらに大きく膨らむこととなる。

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                     [ 津波で流出した気動車列車・JR気仙沼線最知〜松岩間 ]
 2010年度のJR東日本における収入(約1兆6000億円)の内ほとんどの約95%を新幹線と関東圏の在来線で稼いでおり、被災した7路線を含む在来線はほんの5%に過ぎない。そうした状況の下で、東北新幹線や東北本線の復旧費用約570億円をJR東日本は全額自己負担しており、ローカル路線である被災7路線の復旧費用額が1千億円以上と見込まれていることを考えれば、その復旧に巨費を投じることにJR東日本としても躊躇いを禁じ得ないのではないだろうか。
 こうした状況に鑑みJR東日本では、深刻な津波被害を受けた太平洋沿岸部線区の復旧について現行の災害復旧支援制度に基づく手法(黒字経営のJR東日本は対象外)では事業者に過大な負担が及ぶとして、国と地方自治体、事業者が連携の下で街づくりと一体となった鉄道の復旧整備を進める新たな財源の枠組みづくりを国に要望し、被災からの復旧に特段の配慮と支援を求めている。

第三セクター鉄道の仙台空港鉄道は、被災復旧費用の36億円全額を宮城県から貸付けを受け、2011年9月末の全線運転再開に向けてようやく復旧工事に着手している。
 同じ第三セクターの三陸鉄道は、ことのほか被災が深刻な状況であった中で3年後の全線運転再開を目標に置くも、赤字運行が続いている状況にあっては最大180億円と見込まれる復旧費用を賄える(90億円の事業者負担)見通しが立たないでいる。

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                        [ 三陸鉄道北アリス線を走る“復興支援列車” ]
 今から6年前の2005(平成17)年に台風の被害を受け、鉄橋が二つも流されるなどして全線が運休に至った高千穂鉄道(第三セクター・九州宮崎県)は、沿線住民の運転再開の求めに赤字経営の身で復旧費用を出すことができず、3年後の2008(平成20)年12月に廃線に追い込まれてしまった。“復旧費用をどう賄うのか”“復旧しても赤字が続く可能性が大きい路線をどう維持していくのか”…かつての高千穂鉄道はこうした壁を越えることが叶わずに消えていったのだ。
 これは、今、三陸鉄道が復旧に向け直面している課題でもある。同鉄道の復旧費用の大きさは高千穂鉄道の比ではないが、高千穂鉄道同様に膨大な復旧費用が再建へ向かうネックとなってのしかかる。されど三陸鉄道は、東北太平洋側の交通ネットワークの構成に欠かせない存在であることは、震災から数日後には早くも一部区間で運転を再開するという公共性を重んじた対応ぶりが物語る。
 勿論、太平洋沿岸部における主要生活路線の三陸鉄道には国のしっかりした助成が必要で、高千穂鉄道のケースを考えれば復旧再建後の運営にも財政支援は欠かせないだろう。三陸鉄道の生活路線としての生命線を保持するためには、“復旧には国費の投入しかない”“JR東日本が買い取ることも選択肢”とまで、廃線となった高千穂鉄道の地元選出の某国会議員は言及する。

いずれにせよ、未だ復旧の目途が立たない東日本大震災の被害を受けた東北10路線、ともに長い歴史の中で地域に根づいてきた大切な生活路線であることから、被災地域復興計画の立案とともに早期の復旧・運転再開を願うばかりである。
 時間が経つほどに、列車が走らないということが日常化して行き、運転再開への機運が、路線の使命が失われないためにも…。 (終) 関連公開ブログ 「復旧が待たれる被災路線〜東日本大震災」2011.7.9

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