持続的鉄道網の確立に向けて ・ JR北海道

          持続的鉄道網の確立に向けて ・・・ JR北海道

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                    鉄道路線存廃の渦中に揺れる経営難のJR北海道 宗谷本線

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画像 近年の人口減少や自動車利用への転移で利用者を減らしているJR北海道が、“2016年11月18日に最早自社単独では路線の維持ができない”として全路線営業距離の半分に相当する10路線13区間(1237.2㎞)を公表してから2年半が経つ。その間にあって北海道の鉄道は、資金不足を理由に経営難を主張するJR北海道、JR北海道に対し自助努力を求めるだけで財政支援については触れなかった北海道、道が路線の存廃に対する姿勢を明示しない中で自らの態度を決めかねてきた沿線市町村、JR・北海道・沿線自治体のそれぞれが自らの立場に寄り添う姿勢に偏り、ともすると北海道の鉄道においては道民不在といった構図が描かれてしまったのではないだろうか…。
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                     2016年11月18日にJR北海道が発表した維持困難路線区
 深刻な経営難に陥っているJR北海道は、全営業距離の1割強にあたる5路線5区間(1列車あたりの平均乗車人数が10人前後と少ない留萌線全線、石勝線夕張支線全線、札沼線北海道医療大学~新十津川間、根室線富良野~新得間、日高線鵡川~様似間の計311.5㎞)を廃止にする方針を固めてはいるが、2019年4月1日に営業廃止になった石勝線夕張支線(新夕張~夕張間16.1㎞)以外は今もなおその動向(存廃)に関して沿線自治体との間で協議が続けられている。
 赤字で経営が厳しいJR北海道は、もともと新会社発足(民営化)のときから自力での黒字が見込まれないことから、民営化の際に国が設けた経営安定基金の受領(6822億円)による運用益で経営の赤字を穴埋めする構造で発足した。しかしながら、市中金利の低下で運用益が半減し、これまでにも基金の積み増しや 財政支援を受けるも赤字経営の解消には遠く及ばず、2018年3月期の決算では過去最悪となる416億円もの営業赤字を計上・更新をしてしまった。不動産業などの“副業”でも赤字を補えず、道内高速道路網の整備や人口減少も経営難に拍車をかけている最中にあってJR北海道は、このままでは列車の運行が出来なくなると説明する。北海道内の高速道路網は、JR北海道発足のこの30年の間に飛躍的に拡充され、料金無料の区間も多く自治体や住民は歓迎したが、鉄道離れが進んだ。地域住民が最も望む生活の“足”は、鉄道かそれとも…。余りにも急ピッチで進む高速道路網の整備に、戸惑いを隠せなかった北海道は今までの交通政策の失敗を認識し、公共交通を含め道内交通網の再編に取り組む。
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              JR石勝線夕張支線新夕張~夕張間16.1㎞127年の歴史に幕を閉じた 2016.3.31夕張駅
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国鉄改革(分割民営化)から30年余り、旅客会社6社の中で最も経営が厳しいJR北海道に対し国(国土交通省)は、新たに2019年度から2020年度の2ヵ年の間に総額400億円超の財政支援を行うことを2018年7月28日に表明し、併せてJR会社法(旧国鉄の分割民営化に併せて設けられた経営基盤の弱いJR北海道・四国・貨物の3社に国土交通相が監督命令を出せる法律)に基づく「事業の適切かつ健全な運営に関する監督命令」を出した。同監督命令は、JR北海道の徹底した経営努力の実施と鉄道を持続的に維持する仕組みの構築が必要な線区について、 地域と一体となった利用促進やコスト削減などの取り組みを盛り込んだアクションプランの策定等が命令されている。この命令の下では、2019~2020年度の2ヵ年を「第1期集中改革期間」として北海道の持続的鉄道網の確立に向け、2次交通も含めたあるべき交通体系について徹底的な検討を明示している。
 ちなみにJR北海道への国(国土交通大臣)による監督命令は、経営が厳しい中にあって必要な安全への投資を欠いて線路や車両などの修繕・更新を先送りしてきた結果、2011年頃から事故等の事象(列車火災や脱線、データ改竄、社員の不祥事)を頻発させて2014年1月に 「輸送の安全に関する事業改善命令及び事業の適切かつ健全な運営に関する監督命令」を受け、2度目である。
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                          〈 JR北海道事業見直しに係わる6者会議
 経営難の下で路線の存廃を巡り揺れるJR北海道だが、持続可能な交通体系の構築について昨年(2018.4)北海道から「北海道交通政策総合指針」が公表され、北海道の将来を見据えた鉄道網のあり方が示された。これに関し「JR北海道の事業範囲見直しに係わる関係者会議」が設置され、国土交通省、北海道市長会、北海道町村会、JR北海道、JR貨物、北海道の6者が出席して2ヵ月に1度の会議で議論が続けられている。

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新幹線を含む全路線(幹線5・地方交通線9の2535.9㎞(2019年))が赤字の厳しい経営が続くJR北海道は、北海道新幹線の2030年度札幌延伸開業を機に経営自立を図る意向を示す。その上で2019年の年頭にあたり島田 修JR北海道社長は、新元号元年となる本年をJR北海道の経営自立に向けた長期経営ビジョンと今後5年間の中期経営計画策定による取り組み開始の時と位置づけており、JR北海道経営再生に向けたスタートの年になるとしている。
画像 JR北海道社長島田 修氏
 経営難の苦境にあるJR北海道は昨年(2018)7月、国から2019~2020年度の2年間で400億円超の財政支援を仰ぐことが告げられた。ただ、国が2021年度以降も支援を続けるか否かは、先の国土交通大臣から出された「事業の適切かつ健全な運営に関する監督命令」による経営改善の取り組み次第とされており、これはとりもなおさず今後も国からの財政支援がJR北海道に対し行われる可能性の含みを示唆していることになる。ただ、この2021年度以降の財政支援の継続については、あくまでJR北海道や地域関係者の経営改善への着実な進展を前提に行われるものとされている。こうした下で、JR北海道や地域関係者に残されている時間は2020年度までの2年を切っており、最早お互いの置かれている情勢・状況を斟酌している場合にはなく、それぞれの立場を超えて取り組みを進めていかなければならず、JR北海道としても維持費の嵩む鉄道網をどう支えていくのかこの2年足らずの間にその方策を見定めなければならない。

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経営難のJR北海道に対し地元の北海道は、持続的な鉄道網の確立に向けてJR北海道を支援するため、2018年12月1日に「北海道鉄道活性化協議会」を設立した。同協議会は、道内基幹産業の一次産業や観光事業の業界団体、教育団体などで構成され、民間企業として唯一JR北海道が参加しており、このほか国土交通省北海道運輸局とJR貨物がオブザーバーとして加わっている。会長は北海道知事が務め、副会長として北海道市長会、北海道町村会、北海道経済連合会、北海道商工会議所連合会、北海道経済交友会など道内政財界の代表者が務める。
 同協議会の目的は、北海道の持続的鉄道網の確立に向け道民が一丸となって利用促進をはじめとする様々な行動を展開するとともに、JR北海道が置かれている厳しい状況を全国に広く発信して関係者と共有することで、北海道の鉄道に対する国民的理解や応援機運を醸成することにある。また、 同協議会の事業内容としては、北海道の持続的な鉄道網の確立に向けた道民運動の展開および北海道の鉄道の役割や現状等に対する国民的理解、応援機運の醸成である。
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                        道民キックオフフォーラム ・ 2018.12.22札幌市
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昨年(2018)12月22日、この北海道鉄道活性化協議会主催の道民による「公共交通の利用促進に向けた道民キックオフフォーラム」(約600人参集)が札幌市内のホテルで開催され、岸 邦宏氏(北海道大学大学院工学研究院准教授)による「みんなで乗って、未来を変えよう~道民自らが創るまちと公共交通の未来~」と題した基調講演が行われた。
画像 北海道大学准教授岸 邦宏氏
 その講演の中で岸氏は、まず道民運動としてJR北海道の利用促進に対する具体的な目標の設定を提唱した。すなわち、JR北海道の利用を増やすためには、観光列車などの運行を通して道外や海外からの利用を呼び込むのも是とするが、最も重要なことは至極当たり前のことではあるが道民が先ずJR北海道を利用することであるという。その上で、交通計画や交通工学が専門の岸氏は、机上の計算に過ぎないとしながらも、公表されている統計データを基に して道内をクルマで移動している人の一部がJRに切り替えた場合のシミュレーションの結果を示した。すなわち、若しクルマを利用している人の10%がJRの利用へ切り替わった場合には、JRの運輸収入は年間53.7億円(15%では80.6億円、20%では107.4億円)にアップする。この数値を現実的なものにするためには、JR側も道民が利用したくなるような姿(交通機関)に変わらなければならない、とする。さらに岸氏は、経営が厳しいからといって諦めを見せてはならず、鉄道としての利便性を高めるためにはやるべきことはまだまだあるとし、鉄道をはじめとする公共交通については“使おう”“使ってほしい”という両輪で動くことが必要であり、公共交通の利用促進に向けては前述の如く先ずは道民が公共交通に関心を寄せる事が大切で、それによって社会インフラとしての必要性の認識を高めながら官民が一体となって北海道全体(オール北海道)でJR北海道の持続的な鉄道網の確立に向け行動を展開していかなければならない、と結ぶ。
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昨年(2018)12月に札幌で開かれた「公共交通の利用促進に向けた道民キックオフフォーラム」では、公共交通についての講演の中で“関心”という言葉が頻繁に使われていた。公共交通に対しては、“関心がないから乗らない”“乗らないから不便になる”“不便だから乗らない”とするこの悪循環を逆転換させて公共交通に関心を寄せる取り組みを図る必要があり、その上で2年(2019~2020年度)の間に公共交通への道民の利用機会を目に見える形で増やしていかなければならずこれは容易なこととではない。というのも、道内の高速道路網の急テンポな整備が鉄道離れを呼んで北海道は今までの道内交通政策の失敗を認識したが、この時にはすでに道民の鉄道に対する“関心”は薄らいでいたからである。
 道内の移動に関しては、旅行などをする場合はともかくとして、ビジネスや私的の場合には速達性や利便性の上からも飛行機や都市間バス(高速)の利用が少なくない。時間や料金の面でも、鉄道での移動は中途半端な場合(乗換や途中下車など)が多いといえる。すなわち、鉄道(公共交通機関)での道内移動には二次交通も含め手間がかかり面倒な場合が多いのである。“道民は公共交通に関心がない”とはいっても、決して阻害視しているわけでなく、ただ関心を持つきっかけへの方途が欠けているだけなのではないか。この度の「北海道鉄道活性化協議会」の設立や北海道の「公交通の利用促進に向けた道民フォーラム」の開催を機に、道民の間に鉄道(公共交通)への関心を広く呼び起こさせ、存廃の危機にある北海道の鉄道網の維持へとつながることを期待したい。
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                               北海道新幹線
 2016年11月、JR北海道が経営危機に直面して全営業距離の約半分を自社単独では維持できないと発表してから2年半 。そのJR北海道に対し、経営への自助努力を迫りながらも財政支援については触れてこなかった北海道が、道内で唯一の第三セクター道南いさりび鉄道(五稜郭~木古内間37.8㎞)を除き、ようやくにして今までの道内交通政策失敗の反省にたって総人口538万人の道内鉄道路線であるJR北海道の持続的な鉄道網の確立に向け動き出したのである。
 今後、公共交通としての鉄道に社会はどのような機能を求め、地域や地域外の人を含め路線の持続的な維持に誰がどう支えるのか検討を怠っては、 JR北海道という企業のあり方を含め時代に沿った地域公共交通の新しい姿の追求は叶わない。今後のJR北海道の持続的鉄道網の維持・確立には、一重に道民の公共交通に対する関心への意識がその鍵を握る。 (終)

この記事へのコメント

みえ
2019年05月23日 15:02
2008年の記事にお尋ねします。続事故による鉄道史等によると通告券が津駅で発行されなかったことが、事故責任に問われるとあります。が、当時の運転規範は昭和23年に改正されており通告券は発行しないとされています。信号重視を原則とする。また昭和35年2月26日津地裁第54回公判では津駅当務駅長は421普通列車の阿漕駅待避松阪以南の乗客を津駅で乗り換えを促すの指令はあったが六軒駅での243列車の行き違い指令はなかったと証言しているはずです。知らないのでは、通告はできえません。判例時報344では仮に津駅が行き違いを知っていたとしても何ら通告する義務はなかったと書いています。当時津駅にミスがあったとしてもなかったとしても尊い命が失われたことは悲しいことですが、市民が当時の駅員とその家族に復讐する事実は許せるものではありません。亡くなった方への供養ではなく、生きた方の自己満足です。歪んだ被害者学を考え直してください。鉄道に生きる方々にお願いします。警笛ブレーキ音枕木砂利音等鉄道を愛して働いてきた鉄道員への冒涜です。伊藤
田中さんへ

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