鉄道と環境との調和

       鉄 道 と 環 境 と の 調 和 ・ ・ ・

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      〈 “海洋汚染”…やがて生態系への連鎖の影響が指摘されている世界の海に拡がり漂う分解されないマイクロプラスチック
・・・ ここ5年ほどの間で、広大な海に漂うマイクロプラスチック(細かく砕けた主に5㍉以下の粒)による海洋汚染がクローズアップされて“脱使い捨てプラスチック”が世界の潮流になっており、地球温暖化抑制の脱炭素社会の構築とともに、地球環境保全に対する世界的な関心が一段と高まりを見せている。その地球環境保全に関し、国連が国際社会共通の目標として2015年9月の国連サミットで採択した「SDGs」(持続可能な開発目標)には地球の環境問題に関わる17の項目が設定されており、その達成に向け各国政府やNGO・NPOに限らず、企業に向けても果たす役割の重要性の認識や持続性が強く求められています。環境に優しい交通機関でもある鉄道においても、その環境優位性をさらに高めた取り組みを中心とした地球環境保全に向けた積極果敢な施策が求められている。 ・・・

画像 昨年(2018)の夏は、世界各地で異常気象による猛暑や豪雨、大型台風、山林火災などの自然災害が頻発し、災害の多発した夏期として記憶に留められるであろう。地球温暖化の影響はすでに見え始めているとして、IPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)は社会のあらゆる分野で環境対策への大胆な変革を急ぐべきだと訴える。
 SDGs(持続可能な開発計画)が国連の開発サミットで採択された2015年に開催された「COP21」(国連の気候変動枠組み条約第21回締約国会議)で地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」が成立し、2018年12月にポーランドのカトヴィツェで開催された「COP24」)で「京都議定書」に次ぐ2020年からの「パリ協定」の実施指針が採択された。
 今、地球環境問題は世界の喫緊課題として受け取られており、環境負荷を抑制して持続可能な社会づくりを実現する上で鉄道も地球環境保全に向け大きな社会的責務を有しており、地球環境を守って行かなければならないという立場に鉄道事業者もあるという認識を欠いてはなるまい。
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                   ニューヨークの国連本部で2015年12月12日に採決されたパリ協定」 〉
画像 地球環境の保全が世界的趨勢の中で、鉄道技術及び鉄道労働科学に関する研究開発や調査等を全般的に手掛ける公益財団法人・鉄道総合技術研究所(鉄道総研・東京都国分寺市)では、“革新的な技術を創出し、鉄道の発展と豊かな社会の実現に貢献します”を基本的ビジョンに据え、その具体的な実現に向け5年間の実行計画を社会貢献への基本行動と定めている。その基本行動「RESEARCH2020」では、大規模自然災害に対する防御対策をはじめ安全性の向上、メンテナンスの低コスト化、効率的なエネルギー利用と環境との調和、さらなる高速化による利便性向上への取り組みなど鉄道等が抱える諸課題の解決に向け輸送機関としての発展に貢献する革新的技術を創出し、安全性の向上、低コスト化、環境との調和、利便性の向上(4項目)を鉄道総研が目指す今後の研究開発の方向として位置付けている。
 その研究開発の方向の一つである「環境との調和」においては、地球環境保全に基づくエネルギー利用の効率化をはじめ、鉄道沿線への騒音対策などの広く環境保護に関わる研究開発の実施が含まれている。この中で、省エネルギー化により将来の鉄道旅客サービス水準を的確に保ちつつ「エネルギーネットワークによる省エネルギー化」を実施し、列車運行に関わる消費エネルギーを10%低減する研究開発が進捗(2019年度末に終了予定)されており、所期の成果が期待されている。
 ちなみに「エネルギーネットワークによる省エネルギー化」とは、現在の電気鉄道への電力供給システムでは変電所等の電力設備の運用と列車運行とは各々独立して行われており、列車運行に応じた(即した)電力設備の効率的な制御は行われていない。そこで、近年の情報通信技術(ICT)を利用した情報ネットワークを構築して電力設備(変電所)と列車運行を一元的に制御・管理して必要なエネルギー(供給エネルギー)をより効率的に活用する取り組み(システム)である。

画像 鉄道は、他の輸送機関に比べエネルギー効率が高く、地球環境への負荷が少なく環境優位性の高い輸送機関であると言われてきた。その一方で、近年の電気自動車や燃料電池自動車の登場で鉄道は、環境への負荷優位性が高いと言われている下で従来と変わらぬ取り組みを淡々と継続しているだけでは、今後も環境優位性を保ち続けて行くことは難しいとされている。近年、“持続可能な開発目標”と謳われている「SDGs」という語彙をよく耳にする機会が増えている。2015年9月の国連サミットで採択された2016~2030年までの国際目標で、持続可能な世界を実現するため17の開発目標が掲げられている。先の鉄道運行に関わる効率的なエネルギー利用については、主に開発目標13の気候変動対策に貢献(脱(低)炭素化社会)するものである。パリ協定では、産業革命以降の地球平均気温の上昇幅を2℃未満に、出来得れば1.5℃未満に抑えることを目指しており、世界の各国も地球温暖化の原因である温室効果ガスの排出削減目標を自ら設定して地球温暖化防止に努めているところであるが、IPCCが出した特別報告書では各国がすでに掲げている温室効果ガスの排出削減目標が全て達成されたにしても平均気温の上昇幅は今世紀末には3℃に達するとしており、そうなると世界の各地で異常気象や自然災害が頻発して深刻な地球への影響は避けられない。すなわち、地球温暖化の主な原因とされている温室効果ガス(大気圏にあって地表から放出された赤外線の一部を吸収することでもたらされるオゾン・二酸化炭素・メタンなど)は人間(人為的)活動を行った際に排出される二酸化炭素などで構成さているもので、鉄道のエネルギーネットワーク化によるエネルギーの効率的な活用は無駄な電力消費を抑え(二酸化炭素の排出抑制)て地球環境の保護に貢献する ことになる。
 そのような中で、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」が2015年に採択されてから3年余りの短い間なが゛ら、地球温暖化に対する“緩和”を目的としてその原因である温室効果ガスのうち最も大きな排出割合を占めている二酸化炭素の排出が少ない“脱(低)炭素社会”の構築に向け、世界の環境保全への動きが力強さを増している。
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画像 温室効果ガスの削減が今、気候変動対策として強く求められている。その温室効果ガスの中でも、二酸化炭素(化石燃料由来)の削減が急務とされており、地球の平均気温上昇を抑制するためには人為的に排出される二酸化炭素と吸収される二酸化炭素とがイコールとなるよう、世界全体におけるカーボンニュートラル(“炭素中立”・環境化学用語で排出される二酸化炭素と吸収される二酸化炭素が同じ量であるという概念)の達成が不可欠であるとされている。この地球規模とされる目標(脱(低)炭素社会)の実現化には、ただ努力目標として据えるという流暢なことに終始するのではなく、今や社会や経済活動などの方向性そのものを変革していくことが私たち地球人に求められている。
 輸送機関としての鉄道は、国内旅客輸送の約3割を担っているにも関わらずそのエネルギー消費量は輸送機関全体の約4%であることから全輸送機関の消費エネルギー量に占める鉄道の割合はごく僅かで、この頗る高いエネルギー効率は地球環境への負荷が少ないという輸送機関としての優位性を示す証でもある。しかしながら、脱(低)炭素社会の構築を目指すには鉄道にもカーボンニュートラルの実現に向け、さらなるエネルギー効率の施策向上が求められよう。

画像 鉄道輸送は、他の輸送機関と比べエネルギー効率が高く、地球環境への負荷も少ないという優位性について先にも触れたが、鉄道の単位輸送量当たりの二酸化炭素排出量は他の輸送機関に比べ大幅に少ない(乗用車の約7分の1、航空機の約5分の1)ことは周知の如くである。
画像 その中で、“日本の大動脈と社会基盤の発展に貢献する”ことを経営理念としている東海道新幹線が走るJR東海、2017年度実績で1日当たり列車運行本数368本・輸送人員46.6万人という日本の経済・文化の中心である東京~名古屋~大阪の三大都市圏を結び、人口・GDPのおよそ6割を占める日本のマーケットエリアである大動脈を奔走する東海道新幹線はその輸送環境から鉄道の運行エネルギー効率(省エネ車両の積極的な開発・導入)が高められており、この地球環境負荷の低減へ向けた積極的な取り組みは地球環境保全へ大きな貢献を果たしている。そこで同社は、鉄道運行に係わるエネルギー効率をさらに高めていく(利用状況に即した運行形態の創出)ことで直接的に環境負荷を低減していくことに加え、東海道新幹線を主体とした車両の省エネルギー化等鉄道輸送に係わるエネルギー効率を一層高めていくことが地球環境保全につながる近道と考えている。
 これまでJR東海は、新幹線運行の一層の省エネルギー化を図るため省エネ型車両の開発・導入を積極的かつ継続的に進めてきた。具体的に示せば、開業時(1964)に登場した世界初の高速鉄道車両の0系及び100系(1985~2003)に次いで登場した300系 (1992~2012)以降の車両で軽量化(シンプル構造のボルスタレス台車の採用、車体にアルミニウム合金の採用、小型交流電動機の採用など)が図られ、また新幹線初の電力回生ブレーキを実用化させより一層の環境性能の向上に向けた取り組みが始められた。その後に登場したN700系(2007~)以降では、走行抵抗低減による省エネルギー化を図るため新幹線車両の先頭形状を常に空力特性に優れた形状へと変化させてきた。さらに、走行抵抗の低減化を目指しN700系以降では、車体外板と窓ガラス間の凹凸を取り除いた客室窓構造の採用と全連結面車両間への全周幌の設置による車体外周の平滑化が図られている。その他の環境保護・エネルギー対策として2013年に導入されたN700Aでは、客室照明の最適化(シート色に合わせた照明、トイレ・洗面所に調光機能付きLED照明などの導入)と客室のLED照明の採用が図られ、車内の照明電力をN700系に比べ約20%削減して地球環境に優しい環境づくりが図られている。さらに、環境性能をより高めたN700系以来のフルモデルチェンジとなる次期新幹線車両「N700S」(駆動システムの低損失かつ高温下での動作可能な次世代半導体「SiC素子」の採用、新幹線車両初の前照灯へのLEDの採用、車両構成機器などの徹底した小型・軽量化)の確認試験車両が2018年3月に完成を見ており、2020年7月の営業投入を目途に走行試験が開始されて検討が進められている。また、走行風を整流(空気の流れを円滑化)することで走行抵抗を低減して省エネルギー効率を向上させるため先頭部分の形状を「デュアルスプリームウィング形」に変えている。
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                東海道新幹線全区間で2018年3月20日から開始されたN700Sの確認試験走行
 現在、東海道新幹線の主力車両として東京~新大阪間を最高速度285km/hで走行するN700Aのエネルギー消費量は、最高速度で走行した場合の300系(270km/h)に対して23%、700系(270km/h)に対して16%の削減が図られており、N700Aは速度向上の実現と同時にエネルギー消費量の顕著な改善により省エネルギー車両となっている。
 その結果、2017年度末の段階で新幹線のエネルギー消費原単位は1990年度比で約34%も改善されている。今後も、N700Aの継続投入やN700Sの導入を積極的かつ堅実に進め、さらなる省エネルギー化に努めて鉄道の環境性能の向上に取り組んで行くとしている。

画像 地球温暖化対策として現在、温室効果ガスの排出削減が世界各国に強く求められてはいるが、パリ協定が温暖化対策で目指している地球の平均気温の上昇幅を1.5℃に抑えるには、温室効果ガスの排出を2050年頃までに実質ゼロにする必要がある(IPCC)とされている。しかし、各国が独自に掲げている削減目標(温室効果ガス)を積み上げたにしても上昇幅を2℃に抑えることさえ難しい状況に今の地球環境は直面しており、各国はより大胆な削減目標を立てその実現(脱(低)炭素社会)へ努力を惜しんではいられない。
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                           〈 太陽光発電所宮崎県宮崎市) 〉
 地球環境に優しい交通機関とされている鉄道とて、さらなる高速化などによる利便性の向上に向けてはエネルギー利用の効率化を一層促進させていくことで、環境との調和 を図っていかなければならない。すなわち、東海道や同地域の日本の大動脈輸送を担う鉄道の安全・安定輸送サービスの充実を図っていくためには、直接的な環境負荷の低減へつながる車両などの技術改善・開発及び環境性能に優れた設備の導入を積極的に進めて行くことを以て、さらなる地球環境保全に貢献していく企業努力が待たれる。今、脱炭素社会に向けた世界の動きが高まりを増している中で、地球温暖化の抑制に向けた対策として化石燃料から再生可能エネルギーへの転換、二酸化炭素排出量の削減、植林開発による二酸化炭素の吸収施策、二酸化炭素の回収・貯留技術の実用化など実施すべきことは数多ある。
 鉄道と環境との調和による環境保護・エネルギー対策についても、前述の如く鉄道の事業運営全般にわり地球環境保全に向けたさまざまな施策(取組)が進められている。エネルギー効率が高く、二酸化炭素の排出量も少ない環境優位性に優れた輸送機関の鉄道も、近年の電気自動車や燃料電池自動車などの登場・普及が進む中で従来のエネルギー効率化の取り組みに終始(継続)しているだけでは輸送機関として培ってきた鉄道の環境優位性を今後も保ち続けて行くのは、さまざまに温暖化対策が講じられて行くであろう過程で難しさも加わるであろう。21世紀における世界共通の課題とされている地球の環境保全、特に喫緊の対策を必要とされている地球温暖化防止への取り組みについては、業種や業態の枠を超えた企業連携を図りなが環境負荷低減に関する研究・開発・実践を通した地球環境保全への貢献が期待される。 (終)

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この記事へのコメント

みえ😢😢
2019年03月17日 16:37
毎年8月29日は電磁波を使うテクノロジー集団ストーカー撲滅の日です。TI-dayjapan 4月26~27日は春のラリーです。皆さま感心をお持ち下さい。世界中に被害を受けている人が沢山います。精神疾患を思わせる手法が使われ、証拠が取れません。世論だけが解決の道です。是非ネットで検索して話題にして下さい。宜しくお願い致します。

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