北の大地へ新たな挑戦・新幹線・・・

        北の大地へ新たな挑戦  ・ 新幹線 ・  ・  ・

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                  共用区間新小国信号場~木古内を行く北海道新幹線と在来線のJR貨物
画像 北海道へ初の新幹線(北海道新幹線・新青森~新函館北斗間148.8㎞)が2016(平28)年3月に開業してまもなく3年が経とうとしているが、津軽海峡を越えて走行する同新幹線は青函トンネル(53.85㎞)を含む82.0㎞の区間(青森県側・新中小国信号場~北海道側・木古内駅間)で在来線の貨物列車と同じ線路上を共用して走行(三線軌条方式)する全国で唯一の新幹線であることから、同区間の最高速度260km/hは貨物列車とのすれ違い時の安全確保(風圧による貨物列車の荷崩れ防止)のために140km/hに抑えられており、 東京~新函館北斗間の所要時間が航空機より新幹線を選ぶ目安とされている「4時間切り」が見送られ最速4時間02分を以て開業している。故に、北海道新幹線は速達性を発揮できずに、JR北海道は開業当初から新幹線の開業を一過性の開業フィーバーに留めることなく継続的な新幹線の利用促進を図っていく取り組みを行ってはきたものの、利用者の伸び悩みで2017年度は98億円の営業赤字を計上した。
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        JR東日本の次世代新幹線車両開発用ALFA-X試験車両の先頭形状東京寄り1号車新青森寄り10号車) 〉
 北海道新幹線の開業で、首都圏から東北エリアや北海道方面への関心の高まりからその効果を波及させていくことが大切と考えてさらなる速達化を求めるJR東日本とともに、今後の新幹線利用者の増強・獲得に向け新幹線の高速化(速達化)を目指すJR北海道は、当面の間貨物列車との共用走行区間(青函トンネルを含む82㎞)における新幹線の最高速度を在来線特急時代と同じ140km/hとしてきたものを、2019年3月のダイヤ改正を機に最高速度を160km/hまで引き上げ、新青森~新函館北斗間の所要時間を最大4分短縮する。またJR東日本も、首都圏~北海道方面への利用者低迷の状況に対し巻き返しを図るには“高速化”(所要時間短縮)が欠かせないとの判断の下で、現在最高速度が260km/hに抑えられている東北新幹線の盛岡~新青森間の整備新幹線区間(178.4㎞)の最高速度を騒音対策を施した上で320km/hに引き上げて新青森まで現行の宇都宮~盛岡間(425.8㎞)と同じ320km/hの速度で臨む方針を固め、東京~新函館北斗間の最速達時間の3時間台(3時間58分)実現を図るとしている。そして、首都圏を中心に東北や北海道方面への輸送サービスの品質向上に重点的に取り組むためさらなる速達化に向け、北海道新幹線が札幌まで延伸開業(新函館北斗~札幌間211㎞)する2030年度末までにE5系新幹線車両の後継車両として最高速度360km/h運転の実現を目指した次世代新幹線車両の開発・製作を進めており、それに向けたE956形式新幹線試験車両(ALFAーX(アルファエックス))の新造(10両編成)を行い、2019年5月の完成を機に次期新幹線の最高速度360km/hによる営業運転を目指した試験が行われていく。

画像 閑話休題…世界初の高速鉄道として誕生した日本の新幹線(東海道新幹線)は、デビュー以来半世紀余りを経て今も進化を続けており、世界の高速鉄道の“代名詞(顔)”としてその名を馳せている。その来し方の様相に、朝日新聞「天声人語」(2018.11.29)のコラム欄から寄り道をしてみる。
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                          東海道新幹線の0系車両 新大阪駅
・・・ 『新幹線と聞くといまだに「団子っ鼻」が浮かぶ。大きく平べったい鼻が特徴の0(ゼロ)系である。東京・大阪・博多間を44年も走り、2008年11月末に引退した。もう10年になる▼開業した1964年の記事では、意外にも「鼻筋の通った流線形の好男子」などともてはやされている。「当時としてはあれでも画期的な流線形。それ以前の列車はどれも角張った箱形でしたから」とJR西日本OBの山田邦明さん(71)。国鉄時代、後継新幹線の開発に打ち込んだエンジニアだ▼「夢の超特急」と呼ばれた0系だが、高速ゆえにエンジニアを悩ませる弱点が二つあった。一つは「耳ツン」。長いトンネルに入ると、乗客の耳に不快感がツーンと来た。車両の密閉度を高めて気圧の急変を抑えた▼もう一つは関ヶ原(岐阜)の雪。車体の底に氷魂が生じ、軌道の砕石をはじき飛ばした。沿線の民家に石が飛び、車両の故障も多発する。駅に入ると大勢の作業員が棒で雪を落とし、付近には雪を溶かす散水装置が設けられた▼先日、京都鉄道博物館で0系と再会した。正面から見ると、顔立ちは記憶よりはるかにやさしい。乗り込めば、窓の形や硬く狭い座席も懐かしい。祖父母と旅した「こだま」、受験前日に乗った「ひかり」。昭和育ちとしては0系に格別の郷愁を覚える▼〈「もっと速く」と叱咤されしや疲れたる車体の眠る新幹線基地〉宮野哲子。高度成長を支え、走りづめに走った長距離ランナーはいま、静かに余生を楽しむふうである。』 ・・・
画像 0系新幹線車両22-141号) ・ イギリスヨーク国立博物館
 日本の1960年代高度経済成長期の最中、日本の交通史上に一大エポックを画したのが名神高速道路(1964.9.5)と東海道新幹線(同10.1)の開通であった。その一つ、東海道新幹線は総工費3800億円を投じ、210名という尊い犠牲を払うなど数々の艱難辛苦を乗り越えて着工(1959.4.20)以来5年半の短い歳月で開業にこぎ着けている。
 技術的に万全な安全性(CTCやATCなど)の下で、国鉄始まって以来初の210km/h(後に220km/h)という世界一速い営業列車として鉄道高速化時代へのパイオニアとなったのである。その主役が、後に「団子っ鼻」の愛称を頂くこととなり、アイボリーホワイトとブルーのツートンカラーを身に纏った流線形の「0系新幹線車両(電車)」であった。ちなみに0系新幹線車両は、総数3216両が製造され、営業運用が終了したのは2008年11月30日である。現在、世界の高速鉄道車両のパイオニアである「0系」は今も一部の車両が国内の博物館で余生を送っており、2001年にJR西日本から寄贈されて海を渡った「0系(22-141号)」の先頭車両が、世界の鉄道発祥の地であるイギリスのヨーク国立鉄道博物館で展示されている。

画像 JR東日本は現在、東京~新函館北斗間(862.5㎞)の所要時間が航空機との選択肢の基準とされる「4時間」の壁を運行上の制約から崩す(切る)ことが出来ずに運行を続けており、最短でも4時間02分を要して利用者の低迷を招いている状況にある。この東京~新函館北斗間の利用者の低迷打開に向け同社は、さきにも触れたように整備新幹線区間内の最高速度が一律260km/hに抑えられている東北新幹線の整備新幹線区間である盛岡~新青森間について宇都宮~盛岡間と同じ最高速度320km/h運転の方針を固め、 現在最短で4時間02分を要している東京~新函館北斗間の運転時分を航空機との競合の“壁”である4時間を10分以上短縮(3時間50分)して、ライバルである航空機との競争力 を高めていく 構えである。
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 世界初の高速鉄道としてデビュー以来進化を続ける日本の新幹線は、初代車両「0系」の最高速度は210km/hであったが、現在の主力新幹線車両の最高速度は東北新幹線の「E5系」が320km/h、山陽新幹線の「N700系」が300km/hと世界でも トップクラスの高速性能を示している。ただ、こうした高速性能を持ち合わせながら走行路線の全域にわたってその力(高速化)が発揮されている訳ではない。すなわち、東北新幹線(713.7㎞)の「E5系」は宇都宮~盛岡の間(425.8㎞)は最高速度320km/hで走ってはいるが、同路線の盛岡~新青森間が整備新幹線区間であることから最高速度が260km/hに抑えられて整合性に欠け、速達化への足枷となっている。
 そもそも新幹線鉄道の建設は現在、1970(昭45)年に成立した“全国新幹線鉄道整備法”に基づき政府が定めた計画に沿って進められている新幹線路線であり、それ以前に建設・開業した東海道新幹線(開業1964)やすでに建設工事中であった山陽・東北・上越の各新幹線(整備新幹線とは呼ばれない)に続く新幹線鉄道路線として、 1973(昭48)年に 全国新幹線鉄道整備法に基づいて5路線(東北新幹線・盛岡市~青森市間、北海道新幹線・青森市~札幌市間、北陸新幹線・東京都~大阪市間、九州新幹線・福岡市~鹿児島市間、九州新幹線・福岡市~長崎市間)の建設・整備計画が定められた。これらの5路線を「整備新幹線」と呼称し、現在は3路線(2030年度末開業予定の北海道新幹線の新函館北斗~札幌間約212㎞、2022年度末開業予定の北陸新幹線の金沢~敦賀間約124㎞、2022年度末開業予定の九州新幹線西九州ルートの武雄温泉~長崎間約21㎞)で延伸建設工事が進捗中である。
 なお、東北新幹線の盛岡~新青森間(2010.12開業)および九州新幹線(鹿児島ルート)の博多~鹿児島中央間(2011.3開業)はすでに全線で開業している。ただ、整備新幹線路線の運転最高速度は、整備計画時点の整備方針により一律260km/hに統一されて、後に顕在化することになる騒音対策に対する建設に関わる環境基準は施されてはいない。それが今も、車両の高性能化(高速度化)に伴って整備新幹線区間における速達化促進への足枷ともなっている。

画像 このほどJR東日本は、全国5つの整備新幹線では初めての最高速度の引き上げを実施する構えだ。東北新幹線の盛岡~新青森間(整備新幹線区間)の最高速度である260km/hを引き上げて宇都宮~新青森間で最高速度320km/h運転を実施する方針を固めており、これにより航空機との競合の“壁”である4時間を大きく短縮して東京~新函館北斗間の北の大地へ最速3時間50分を目指す。
 近年の地球環境問題を踏まえ、次世代の交通ネットワーク構築の基幹として位置づけられてきた高速鉄道網の整備は、都市間の交流拡大・促進や産業・経済活動などの生活環境に活性化をもたらすものであることが世界の多くの国々で喧伝されてきた。そうした高速鉄道網に対する世界の関心の高まりの中で、とりわけ各国の高速鉄道網の整備が2000年以降に積極かつ果敢に進捗されてきた。2000年時点での高速鉄道の整備は日本とフランスのみであったのに比べると、今ではベルギーやペイン、イタリア、ドイツ、オランダなどの欧州地域を問わず、中国や韓国、台湾などのアジアへもその裾野の拡がりを見せており、世界の高速鉄道網の整備が如何に急ピッチで進展してきたかが分かろうというものだ。勿論、こうした急展開を示している高速鉄道網整備の世界的な兆候のベースには、世界の高速鉄道のパイオニアとして日本の東海道新幹線の成功があったことに論を俟つまでもない。その東海道新幹線の歴史は、高速鉄道として世界の都市間交通の常識を変えてきた50有余年であったと言っても過言ではあるまい。すなわち、高速鉄道としては巷の通勤列車並みと紛うばかりの桁外れに高い運行(1日およそ360~400本)のフリクエンシー(頻度)が確保されている東海道新幹線の現況(存在)は、高速鉄道の整備が世界的な流れとなって拡がりを見せている中では、まさに世界に比類なき驚異的な存在なのである。

画像 日本における全国の高速鉄道ネットワークの高度化は、全国新幹線鉄道整備法基づき進められてきた“整備新幹線”の建設に負うところが大きい。整備新幹線の開業営業キロ数は、直近の2016年3月26日開業の北海道新幹線新青森~新函館北斗間の148.8㎞をはじめ、東北新幹線の盛岡~新青森間178.4㎞、北陸新幹線の高崎~金沢間345.5㎞、九州新幹線(鹿児島ルート)の博多~鹿児島中央間256.8㎞の計929.5㎞(日本の新幹線総延長営業キロ数(山形・秋田ミニ新幹線を除く)は約3130㎞)に及ぶ。ちなみに整備計画決定5路線のうち、現時点(2019)での未着工区間は北陸新幹線の敦賀~新大阪間約143㎞、九州新幹線(長崎ルート)の新鳥栖~武雄温泉間約51㎞である。また、全国新幹線鉄道整備法の下で、1973年に整備計画が示された新幹線は前述の5路線の他に「四国横断新幹線」や「四国新幹線」(いずれも仮称)など全国に11路線あり、整備時期やルートなどは未定ながら関連各地で整備路線への格上げを求める声は頗る高い。だが、計画された路線だからといって闇雲に建設・着工(整備路線への格上げ)を求めることが出来る訳ではない。計画から整備路線への格上げの取扱いに関しては、その建設・着工に当たって不可欠な基本的5条件が新幹線問題に関する検討会議(2009.12開催・国土交通省所管)において示されているのである。すなわち、①安定的財源見通しの確保…新幹線の確実な供用に向け整備期間を通じた安定的財源が確保されること。②収支採算性…整備後の経営が安定的かつ継続的に行えるよう営業主体の採算性が確保されること。③投資効果… 公的資金で社会資本を整備するため所要時間短縮など営業面での投資効果が顕著であること。④営業主体のJRの同意…整備に当たっては予め営業主体としてのJRの同意を得る。⑤並行在来線の経営分離について沿線自治体の同意…整備後の新幹線と並行在来線を共に経営することで営業主体にとって過重な負担となる場合には並行在来線を営業主体の経営から分離させざるを得ず、この場合の経営分離については沿線自治体の同意を得るものとする。 以上のこれら5条件と、整備路線が抱える課題に対する検討を踏まえ、基本的な5条件が確実に満たされていることが確認された上で建設・着工するものとされた。整備新幹線5路線の整備計画から45年、1989年に北陸新幹線(高崎~軽井沢間)が着工、その後順次着工が続いて整備網は着実に拡がり2011年3月にはすでに2路線(九州新幹線鹿児島ルート、東北新幹線盛岡~新青森)が完工・開業している。残る整備路線も、2046年度頃までには全路線の開業が想定されており、その全5路線開業による新たな日本の高速鉄道ネットワークの構築・実現には大きな期待と展望が嘱望されている。
 前にも触れたが、JR東日本ではこのほど最高速度が260km/hに抑えられている整備新幹線区間の盛岡~新青森間について、利用者が低迷気味の首都圏~北海道方面への輸送力を高めライバルの航空機との競争力に打ち勝つため200億円を投じて5年以内の完工を目指し騒音対策を講じて最高速度320km/h運転の実現を図り、首都圏~北海道圏内の輸送力の強化を図る方針を打ち出した。またJR北海道も、北海道新幹線について2019年の年頭所感(JR北海道島田修社長)で2019年3月のダイヤ改正を機に、最高速度が140km/hに抑えられている青函トンネルを含む82㎞の新幹線と貨物列車との共用区間における最高速度を160km/hまで引き上げ、懸案となっている東京~新函館北斗間の最速達時間の3時間台実現を図って航空機との競争力を高めていくとしている。
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                        国内最速の320km/h走行を行うE5系新幹線車両
画像 “狭い日本そんなに急いで何処へ行く”…ひと頃そんな標語が交通業界を賑わせた。その狭いといわれた日本の南北を、ところ狭しとばかりに繋いでいる新幹線ネットワークが今ではその時間的距離を益々狭めつつある。その主体を為しているのは、鉄道の高速度・速達化だ。
 世界の高速鉄道のパイオニアである東海道新幹線は開業以来半世紀余り、高速鉄道の代名詞ともいわれている“新幹線”は世界最先端の高速鉄道として安全・正確・高速・快適・高頻度・大量輸送・環境適性等々あらゆる面で最高水準の輸送サービスを提供している。東京~名古屋~大阪の三大都市圏の人口・GDPの約6割を占める世界的にも稀有な需要構造の地を走破する東海道新幹線は、開業以来半世紀余りの間に約62億人もの人々を安全に輸送してきた日本が世界に誇れる高速鉄道でもある。
 日本経済の大動脈として、また社会基盤の発展に貢献している高速鉄道は今また、北の大地へさらなる速達化に向けて本領発揮へ健闘の最中にある。 (終)

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