気候変動への対策を高める・・・

      気候変動への対策を高める ・ ・ ・

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       2018年12月15日に運用ルールが採択され、2020年以降に本格的に動き出す地球温暖化対策の国際枠組みパリ協定」 〉

・・・ 2018年12月、ポーランドで開かれた第24回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP24)で地球温暖化対策の次期国際枠組み「パリ協定」(2015.12採択、2016.11発効)の運用ルールが採択され、先進国も途上国も全ての国が共通のルールの下で地球温暖化に立ち向かう新たな一歩を踏み出す準備が整い、これにより「パリ協定」は2020年以降に本格的に動き出す。産業革命以降の地球平均気温の上昇を2℃未満に、出来得れば1.5℃未満に抑制することを目指す「パリ協定」は、先進国だけに温室効果ガスの排出削減義務を課した「京都議定書」(1997.12採択、約束期間2008~2019)とは異なり、全ての締約国に対し排出削減を促すことが大きな方針とされている。すなわち、途上国を含めた全ての締約国に対し温室効果ガスの排出削減目標を定めて、地球温暖化対策を執ることを義務付けている。ただ、こうした温室効果ガス排出削減で平均気温の上昇を抑える「緩和策」も温暖化対策の一つではあるが、排出削減を実施しても気候変動を避けられないような場合にその影響に対処し被害の回避と軽減を図っていくためには対策として十分ではないとして、「パリ協定」では対処に万全を図っていく「適応策」も温暖化対策には必要かつ重要な一つであるとして、“適応策”にも力を傾注するよう各国に求めている ・・・


画像 今の京都議定書に替わり2020年以降に本格的に動き出す「パリ協定」では、地球温暖化対策に向け備えを強固にしていく方向性が打ち出されている。地球温暖化対策としては、従来からとかく地球平均気温の上昇を抑えるなどの緩和策(温室効果ガス排出削減)に主力が向けられて推移しているが、現実には異常気象や自然災害、海面上昇などで人々の暮らしや経済活動、生活環境にまで温暖化の影響が及んでいる下では温暖化を抑制(緩和)するだけでは対策として十分であるとは言えない。そこで、温暖化の抑制にもかかわらずなおその影響で地球が被る被害の軽減・回避に向け万全を期していくための備え(適応)が必要かつ重要であるとして、冒頭の部分でも触れたように「パリ協定」では温暖化対策として“緩和策”と“適応策”に力を注いでいくよう各国に求めている。日本においても、地球温暖化による自然災害などの被害軽減を期すため、2018年12月1日に「気候変動適応法」が施行された。気候変動が及ぼす影響は地域ごとに異なるため、国や自治体には実態に応じた対処・対応が求められて行くことになる。今回の「気候変動適応法」の施行に伴い、温暖化対策に対し政府と自治体が緩和策と適応策の役割を分担して地球温暖化に対処していく枠組みが整った。
画像 地球温暖化対策としては、これまで普遍的に広く実施されてきた温室効果ガス排出削減などの“緩和策”と称される対処に加え、これから起こりつつあるまたはすでに起きている気候変動に関わる事象や影響に対処していく“適応策”(備え)の実施が重要となる。すなわち、適応策は気候変動等によって生ずる新たな被害や大きな災害の回避・軽減に備えるための対策であり、緩和策に比べ対策としては側面的な部分が主眼である。されど、地球温暖化が進む現状では人間社会や自然の生態系が危機に陥らないためにも世界の国々が継続して協力・連携を保ちながら、温室効果ガス排出削減を通して温暖化抑制の実効性を高めてより一層の緩和策の推進が必要である一方で、世界の各地で多発している気候変動による干ばつや洪水、浸水などの自然災害への対策・対処として“適応策”も温暖化対策の柱の一つとして必要欠くべからざる施策である。
 海抜最高地点が2.4㍍という、インド洋に浮かぶ平坦な地形のモルディブ共和国(通称“モルディブ”・1000を超えるサンゴ島と26の環礁から成る熱帯の国)は、温暖化による近年の海面上昇やサンゴ礁の死滅などで国土が消滅の危機に晒されており、1㍍の海面上昇で国土の80%が失われるとされている。消失の危機に直面するモルディブでは、観光収入(基幹産業)の一部を使って海外の土地を確保して国民移住の意向を示しており、また国土の盛り土で水没を防ぐ方策も検討されている。この国難に予め対処すべくモルディブは、これら適応策に温暖化対策の活路を見出そうとしている。地球環境の保全に向け、こうした緩和策と適応策を地球温暖化対策推進の両輪として捉え、気候変動に立ち向かう基盤としたい。
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                 海抜の最高が2.4㍍のインド洋に浮かぶ島々からなる熱帯のモルディブ共和国
画像 気候変動は、農作物への被害、短時間・局地的豪雨、台風の大型化、自然災害の多発、熱中症などの健康障害等々に影響を及ぼす。想定される対策(適応策)は、インフラの整備、農作物などの品種改良、ハザードマップの作成などの対策や、熱中症・感染症・水不足といった日常に直結する生活環境への対策など人命に係わる適応策は多岐にわたっており、予め綿密な計画の下に取り組む必要が肝要である。その取り組みへの土台となるのは、今後の気候変動とその影響を科学的に分析・評価し、産業や防災、健康などの分野ごとに政府が示す対策の方向性である。とにかく、温暖化対策は社会や経済の幅広い分野に係わっており、人間の英知が及ばない想定外の被害に対する対策(適応)が後手後手に回らないために政府が出す分析・評価の情報共有が強く求められることになる。
 昨年(2018)12月にポーランドで開催されたCOP24では、地球温暖化対策として温室効果ガスの排出削減に取り組む緩和策を主体に議論が交わされた。同時に、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」についてはその運用ルールが採択され、京都議定書に次ぐ2020年以降の次期国際枠組みとして本格的稼働の準備が整ったことになる。COP24では、全ての締約国(先進国と途上国)が共通ルール(途上国の一部を除く)の下に温室効果ガスの排出削減に取り組むことが決まった。ただ現在、各国が自ら定めた温室効果ガス排出削減目標が2030年までに全て達成されたにしても、地球の平均気温の上昇は今世紀末には3℃になるとの示唆もある。「パリ協定」が目指す“1.5℃未満”に抑制するには、 もっと思い切った排出削減の努力が各国には求められる。しかしながら、すでに温暖化による海面上昇の影響を受けている島嶼国などが各国に対し排出削減の引き上げを呼びかけてはいたものの、COP24では温室効果ガス排出削減引き上げの機運は高まらずに結果的には排出削減の努力を促す明確な文言は示されず、引き上げ合意には達しなかった。すなわち、各国に対する温室効果ガス排出削減目標の引き上げに踏み込むことが出来ずに、温暖化対策として最も大きな課題の一つである温室効果ガス排出削減引き上げ (緩和策強化)への道は広く開かれることなく残された。

画像 パリ協定は、産業革命以降の地球の平均気温の上昇を可能な範囲で1.5℃未満に抑えることを目標にしており、これに基づきIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)は1.5℃に上昇した場合の地球環境への影響などをまとめた「特別報告書」を作成(2018.10.8公表)した。この報告書は、韓国・仁川で開かれたIPCC総会(2018.10)で採択され195の国が承認したもので、今後の温暖化対策を議論する上での科学的根拠ともなる。世界の平均気温は、産業革命前よりすでに約1℃上昇しており、現状のままで推移すると2030~2052年の間に1.5℃に上昇すると特別報告書は予測している。 この平均気温が1.5℃に上昇した場合の地球環境へ及ぼす影響として同報告書は、海水面が2005年の水準に比べ最大で77㌢上昇する予測を示し、生態系においては脊椎動物や昆虫、植物のおよそ8%近い種が生息域の半分以上を失うと予測しており、またサンゴの生息域もほぼ70~90%が消失するとされている。ちなみに、平均気温の上昇を1.5℃に抑制して安定させるには、世界全体の年間CO2排出量を約45%削減(2010年比)して2050年頃には“実質ゼロ”にする必要があるとの指摘がある。ただ、「パリ協定」の下で各国が自ら定めている2030年までの温室効果ガス排出削減目標が全て 達成されたにしても、平均気温の上昇が2℃を超えるレベルに現状の地球環境はある。
画像 IPCCは、昨年(2018)10月に公表した特別報告書で世界の平均気温が1.5℃に上昇すると大部分のサンゴの生息域が消失してしまうと述べているが、サンゴ礁の危機が世界的に注目され始めたのは1997~98年にかけて起きた高水温による大規模なサンゴの白化現象(世界の16%のサンゴ礁が死滅)である。オーストラリアや米国などの研究チームは、地球温暖化によって白化現象の間隔が短くなっているとする論文を、昨年の米科学誌サイエンスに発表している。同誌は、サンゴが深刻な白化現象に見舞われる頻度が近年は約6年に1回と発生の間隔(1980年代は平均25~30年に1回)が短くなっている という。日本でも、国の天然記念物に指定されている沖縄県・宮古島沖に存在する日本最大級のサンゴ礁群「八重干瀬(やびじ)」(大小100余りのサンゴ礁から成る)の海で、生きているサンゴの激滅が国立環境研究所などの調査で判明している。その結果、海底に占める生きたサンゴの面積は10年前に比べ約7割(71万平方㍍から23万平方㍍へ)も激減していた。
 画像主な原因は、2016年の日本近海の高い海水温に伴う白化現象でサンゴが大量死したためだと国立環境研究所は指摘している。地球温暖化の及ぼす影響が如何に深刻か、世界のサンゴ礁生態系が受けている打撃が裏付けている。この他にも、沖縄県のサンゴ礁を巡っては八重山列島の石垣島と西表島の海底に広がるサンゴ礁群の「石西礁湖」においても、2016年の高水温による白化が深刻化してサンゴが大量死したことが環境省の調査で確認されている。ちなみに八重干瀬(やびじ)とは、沖縄県の宮古島沖に分布する南北約17㎞・東西約6.5㎞ の細長い地域に広がる日本最大級のサンゴ礁群で、海底にはテーブル状のサンゴが豊富に生育しており、大潮の干潮時にはサンゴ礁の広大なエリアが海面から露出することで知られ、2013年には日本のサンゴ礁群として初めて天然記念物に指定されている。
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画像        沖縄県宮古島沖に広がる国内最大級のサンゴ礁群八重干潟」 〉
また、地球環境の保全にとって大切な存在でもある世界の干潟だが、1984年以降の33年間で16%に当たる約2万平方㌔も失われていることを豪州クイーンズランド大学などの研究チームがこのほど発表した。地球環境にとって大切な世界の干潟が、その変動・変化が長い間見過ごされてきた中で、人間によって脅かされその面積を大きく減らしていることが最近の調査で明らかにされている。干潟(生き物の生息域で潮が引いて現れた遠浅の海岸域)は、多種多様な生き物の生息地の宝庫であり、水質浄化の働きもしている。さらには、二酸化炭素を吸収したり海岸線の浸食を抑制するほか、食糧生産の場にもなっている。世界規模で行われた干潟の初の調査・分析では、2014~16年時点で世界には少なくとも約13万平方㌔の干潟が存在(44%がアジアに集中)していたことが判明している。その干潟減少の原因は、 人口増加による埋め立て地造成などの沿岸開発や温暖化による地球規模の海面上昇などであるとされている。
 魚介類や海洋生物の宝庫であるサンゴ礁や、多種多様な生物の生息地である干潟は、地球の環境変化(変動)に影響され易い部分でもあり、持続可能な環境保護を図っていく上で地球の平均気温の上昇を抑える緩和策(温室効果ガス排出削減など)とともに、自然災害の被害などに対する備えを怠らない適応策(温暖化による被害軽減の対処など)が 必要とされる。絶滅危惧種のオキナワハマサンゴをはじめ美しいサンゴ礁で知られる沖縄の海で、いま進められている米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画において国は、辺野古沿岸部の埋め立て土砂投入にあたって多くのサンゴが残る周辺海域のサンゴ保護のため、砂をさらって別の浜に移植するというサンゴの保護策を採って自然環境の持続に向けた適応策に力を注いでいる。サンゴは、大量死に追い込まれても10年程度の歳月を経て再生する回復力を持っていると 言われているが、回復の途上にあるサンゴが再び白化のダメージに襲われると回復できずに減少の一途を辿ると いう。世界各地のサンゴを減らす要因には、高い海水温による白化現象に加え、天敵オニヒトデの大発生、陸からの汚染物質や赤土の流入、感染症 などなどがあり、前にも触れたがIPCCの特別報告書は地球温暖化で世界の平均気温が産業革命前より1.5℃上昇するとサンゴ生息域の70~90%が消失し、2℃の上昇では99%以上が失われてしまうとの予測も示している。
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               〈 オランダ、ドイツ、デンマークの沿岸650㎞に広がる世界最大の干潟ワッテン海」 〉
 こうした万物の生息の地である地球は今、地球温暖化という災禍に蝕まれており、地球環境の保全が急務とされている。その温暖化抑制と温暖化に起因する災害や被害の対処策を高める対策として、昨年(2018)12月に温暖化による自然災害の被害などを軽減する適応策として気候変動適応法が施行されて間もないが、地球温暖化対策に向けては温室効果ガス排出削減や脱炭素社会への移行などを駆使した平均気温の上昇を抑える「緩和策」の強化とともに、暮らしや経済、環境への被害を減らしていく積極手法の「適応策」についてもさまざまな対策を加速させて行かなければならない。 (終)

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