1.5℃未満の世界を求める・・・

       1.5℃未満の世界を求める ・  ・  ・
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           地球環境を持続・保全するため平均気温1.5℃未満抑制の重要性を発信するライトアップアクション
・・・ 「1.5℃未満の世界を求める」…COP24会議場の入り口付近で、出席する各国の政府関係者に向けて若い世代が、地球温暖化防止への取り組みを求めて行ったアピールである。ポーランド南部の工業都市カトウィツェで、2018年12月2日から会期を1日延長して15日までの2週間にわたって開かれた第24回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP24)においては 、地球温暖化対策を巡る各国の政府間交渉が行われただけでなく、世界の国際機関やNGO、先住民族などが自らの取り組みを紹介したり温暖化防止を訴えたりする場ともなっていた。COP24では、地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」の2020年以降の本格的始動開始に向け、実際に始動させるための運用ルールが議論された。2016年11月に発効した「パリ協定」では、産業革命以降の地球平均気温の上昇を2℃未満に抑えた上で1.5℃未満に保つことを努力目標としているが、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が1.5℃未満に抑えることの重要性を「特別報告書」で公表(2018.10)した経緯から、COP24においても“1.5℃”に関連する催しが目を引いた。地球環境の持続・保全に向け「1.5℃未満の世界を求める」とした若人のアピールは、今後の地球温暖化対策を議論する上で共通の認識として捉えられていくことであろう ・・・

画像 パリ協定では、産業革命以降の地球平均気温の上昇を2℃未満に、可能であれば1.5℃未満に抑えることを努力目標に 据え各国は温室効果ガスの排出削減目標を自主的に掲げている。現状のこのままでは、2040年頃には地球の平均気温は1.5℃を超えて上昇が続くとIPCCの「特別報告書」が指摘しており、 2018年9月に米国サンフランシスコで開かれたGCAS(グローバル気候行動サミット)では各国政府に対して現行の温室効果ガス削減目標の引き上げを求める声が相次いだ。その排出削減を求める国際的枠組みの「パリ協定」を2020年以降に本格的に始動させられるか否かを議論する重要な局面として開かれたのが 、COP24(第24回国連気候変動枠組み条約締約国会議・ポーランド2018.12.2~15)である。
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               第24回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP24) ポーランド南部カトウィツェ
 世界は今、地球温暖化対策として温室効果ガス削減に向け各国政府が国を挙げて努力を傾注している最中にあり、パリ協定採択(2015.12)からのこの3年間で世界の動きは脱炭素化(温暖化原因の炭素の排出を防ぐ化石燃料からの脱却)の社会に向けその流れを加速させている。しかしながら、IPCCが公表した「特別報告書」によると、各国がすでに自主的に掲げている温室効果ガス排出削減目標を達成させたにしても、平均気温の上昇幅は今世紀末には3℃に達するとしている。そうなれば、地球環境においては異常気象や自然災害などの深刻な打撃は避けられず、各国はより一層の 地球温暖化対策(温室効果ガスの削減など)を進めて行かなければならない。すなわち、パリ協定の下で各国が自主的に作成している国別の削減は5年毎に見直されることになっているが、各国にはその削減目標の提出や見直し、達成のための対策が義務化されており、見直しの際に各国が削減量を容易に増やしていける何らかの手立てが必要となる。その見直しに関する環境(先進国と途上国の基本姿勢の違い)を整えようと開催されたのが、COP24であった。

画像 1.5℃未満の世界を求めるとしてCOP24会議場の入り口付近で、地球温暖化防止を求めて若い世代が声を張り上げてアピールした“1.5℃未満”の行方は、果たしてCOP24でどう局面展開が図られたのであろうか…。
 IPCCは、公表(2018.10)した「特別報告書」の中でで温暖化の影響はもう見え始めているとして、地球の平均気温の上昇幅が1.5℃と2℃の場合の地球環境変動の様相を比較している。すなわち、わずか0.5℃の上昇幅の格差が地球環境へ及ぼす影響に大きな変動をもたらすことだ。1.5℃の上昇で干ばつや熱波、洪水の被害が急増し、海面の上昇や動植物の生息域の縮小・減少といったことに影響が及ぶ。2℃の上昇ともなれば、これらの影響は一層深刻度を増す。しかも、水や食料不足、健康被害が増え、社会・経済活動への 打撃は避けられない。現状の地球環境を持続させていくためには、平均気温の上昇は少なくとも1.5℃までに抑制すべきであると、「特別報告書」(IPCC)は地球温暖化対策への“メッセージ”として示唆している。ただ同報告書は、すでに平均気温は約1℃も上昇(産業革命以降)しており、1.5℃には早ければ2030年にも達すると見ている。
 そのような地球温暖化対策に向け開かれた国際会議COP24で交渉が図られた「パリ協定」の運用ルールについては、焦点だった先進国と途上国の間の温室効果ガス排出削減に関し各国に課せられる義務の差異(隔たり)を出来る限り無くして共通のルールにすることが決まり、会期が1日延長されて2020年以降の「パリ協定」本格始動に向け同運用ルールが採択され、2018年12月15日の深夜(日本時間16日早朝)にCOP24は閉幕した。
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               〈 「パリ協定の運用ルール採択を祝うポーランドのミハウ・クリティカ副大臣 2018.12.15
 すなわち、「パリ協定」を2020年以降(「京都議定書」以降)に本格的に始動させられるか否かの重要な局面を迎えていたCOP24ではあったが、先進国と途上国の基本的姿勢の違いを乗り越え全ての国が共通のルールの下で温室効果ガス排出削減に立ち向かう新たな一歩が踏み出されたのである。この地球温暖化対策の次期枠組み「パリ協定」の運用ルールが決まったことで、「京都議定書」から間を置かずして2020年以降の「パリ協定」に本格的に移行できることとなった。ただ一方で、温室効果ガスの大幅な排出削減が実施されなければ本格的に地球温暖化の影響を防ぐことには結びつかないとして、すでに海面上昇などの温暖化の影響を受けている島嶼国などが削減量の引き上げを呼び掛けていたが、結果的にCOP24では削減目標の引き上げを各国に促すような明確な表現は合意文書には盛り込まれずに終わり、残念ながら全面合意には至らずに後々の課題として残された。

画像 地球温暖化の抑制には、地球の平均気温を1.5℃未満に抑えることの重要性をIPCCが特別報告書で公表しており、COP24ではパリ協定運用ルールの採択と並びもう一つの協議の柱(焦点)が温室効果ガスの排出削減目標についてだった。途上国の大半が先進国とは異なる緩和したルールの適用(排出量緩和措置)を強く求めていたが、全ての国が排出削減目標を掲げて地球温暖化対策に取り組むというパリ協定の意義を踏まえて途上国が折り合いを見せたことから、一部の項目で途上国の能力に応じた柔軟な適用を容認することとして全ての締約国(先進国・途上国)が共通ルールの下に温室効果ガスの排出削減に取り組むこととなった。採択された運用ルールでは全ての国が温室効果ガスの排出削減目標や目標達成の道筋に関しての情報などを提出して説明する義務を負うとし、先進国も途上国も地球温暖化への危機感を共有していく素地の強化が図られた。
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 こうしてCOP24では、地球温暖化対策の次期枠組みである「パリ協定」の運用ルールも決まり、全ての国が共通ルールの下で地球温暖化に立ち向かう新たな一歩を踏み出す準備がどうにか整いはしたが、一方で全ての締約国に温室効果ガスの大幅な排出削減を促す方針ではあったが、排出量が世界最大の中国や同3位のインドを含む途上国からの先進国より緩和した排出量を求める姿勢が強硬であったがために排出削減目標の引き上げに踏み込めない状況ではあった。それゆえにCOP24では、排出削減目標を引き上げる機運に至らずに各国に排出削減を促す明確な文言は合意文書に盛り込まれなかった。ただ、パリ協定が国家能力の観点から柔軟性を必要とする途上国には緩い運用を認めるとする中で、現状の地球環境の持続・保全 に向けて「1.5℃未満」(平均気温)を守って行くにはもっと思い切った排出削減のルールを途上国にも課していかなければ温室効果ガス削減の“実効性”は担保できないとする先進国の訴えに、最終的には途上国側が歩み寄りを見せて排出削減のルールに一応の決着を見せている。今回のCOP24における先進国・途上国の地球温暖化対策に対する取り組みは、「パリ協定」の維持・遵守なくして地球を気候変動から守れないとする確かな認識を国際社会が共有した顕れと見る。
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画像  しかしながら、COP24で検討すべき柱であった各国が掲げる2030年までの温室効果ガス排出削減目標を2020年までに引き上げるという、締約国全体の機運を明確に示すには至らなかった。「パリ協定」においては、国連に対し2020年までにすでに各国が掲げる温室効果ガス排出削減目標を既定のままで再提出するかあるいは更新して提出すか、その目論見は遠のいたかたちとなった。
 「パリ協定」が、平均気温の上昇を2℃未満に、出来れば1.5℃未満に抑えることを目標に掲げる中で、2018年10月に国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表した「特別報告書」は平均気温の上昇を“1.5℃未満”に抑えるには、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする必要があると指摘した。このIPCC報告書の評価について、採択文書に「報告書を歓迎する」との文言を入れることを海面上昇などの影響を受け各国に対し温室効果ガス排出削減を呼び掛けている島国のモルディブ(インド洋に浮かぶ1000を超える珊瑚島と26の環礁からなる熱帯の共和国)が提案したが、COP24の検討部会では立場が分かれた。EU(欧州連合)やアフリカ、南米諸国は賛成したが、米国、サウジアラビア、クウェート、ロシアの天然ガス産出の4ヵ国が反対した。また、海岸浸食が進むフィジー(300以上の島からなる南太平洋に浮かぶ共和国)など島嶼国が温室効果ガス排出削減目標の重要性を表明し、EUも同委員会による長期の目標案を提示して温室効果ガス排出削減の目標引き上げ機運を盛り上げようと諮った。
 しかしながら、温暖化対策(パリ協定)に懐疑的なトランプ政権の下で米国が環境保護と経済成長とのバランスの取れた政策の踏襲を主張するなど削減目標引き上げの動きは拡がらず、2020年までに引き上げる(温室効果ガス排出削減目標)という締約国全体の機運を明確に示す文言は盛り込まれなかった。
 このように、今回のCOP24の議論がやゝ低調に終始したとする一端には、リーダーの不在があったとさえ言われる。常々、リーダー格としての存在を堅持してパリ協定の取りまとめを主導した米国(前オバマ政権)だが、そのパリ協定離脱を表明しているトランプ政権はCOP24には閣僚級を派遣しなかった。すなわち、先進国の中でも主導的役割を示してきた米国の“影”が薄らいでしまっていたこであろう。また、これまで気候変動との闘いの先頭に立ってその温暖化対策の交渉を担い引っ張ってきたEUも、マクロン仏大統領が燃料税引き上げに端を発した国内デモの対応に追われるなどの影響で本来のEUの存在感を示せなかった、などの背景があった。同様に影の薄かった日本は、2019年のG20(主要20ヵ国)サミットの議長国であり、2020年には東京オリンピック・パラリンピック主催国として国際的な脚光を浴びる。そのような中で日本は、自らの温室効果ガス排出削減目標を率先して引き上げるとともに、削減に向けた国際社会の動向が再び高まりを見せるよう各国への働き掛けを強めて行くべきであろう。

画像 COP24では、地球温暖化防止を求めて若い世代が「1.5℃未満の世界を求める」アピールを各国の政府関係者らに訴えるとともに、自らの地球温暖化防止の取り組みを紹介する場ともなっていた。そんな若い世代の地球環境 へ寄せる関心を、2018年12月23日の朝日新聞朝刊の「天声人語」欄から紹介する。
・・・ 『高校生ラガーと地球温暖化。二つの距離は随分遠そうだが、決して別の世界ではない。ポーランドで開かれた気候変動対策に取り組む国際会議COP24に栃木県立佐野高校のラグビー部が参加した▼「日常生活の一つ一つが異常気象までつながっている。それが理解できたのが新鮮でした」と、オブザーバーで出席した主将の渡来遊夢君(17)。参加のきっかけは、9月に学校で受けたスポーツと環境を考える講演だった。ラグビー部ができることはないか、と▼帰国するとアイデアがわいてきた。「試合でのペット飲料をやめ、地元企業と水筒を開発する」「用具や練習着を再利用する仕組みがあれば」。19年は日本でW杯が開催される。「フィジーの選手に海面上昇など太平洋島嶼国の問題を聞いてみたい」など。実現すればどれも面白い▼学校は1901年に創立。ラグビー部は過去全国大会6回出場の古豪である。けれど、この10年で中高一貫、男女共学と変わり、部員はいま男女各5人でマネジャーを入れても12人にとどまる▼顧問の石井勝尉教諭(54)も卒業生だ。花園に出場し、大学では日本代表に選ばれた経験もある。現状は歯がゆいが、未来も感じている。「会議参加の希望は生徒からでした。視野が広がるのはラグビーにも勉強にもプラスになる」▼教育をとりまく環境が変われば、部活動の形も変わっていく。勝ちを目指さない「ゆる部活」も始まっている。豊かで多様な姿を考える取り組みが、もっと広がっていい。』 ・・・
画像       COP24に参加した佐野高校ラグビ゙ー部主将渡来遊夢さん) ・ ポーランド2018.12.14
 地球温暖化防止へ関心を寄せ、「1.5℃未満の世界を求める」取り組みをアピールする若い世代。その若者たちが、多様性に富んだ考えを行動に移してCOP24の会場では「1.5℃」に関する数々のイベントを展開した。石炭大国のポーランド南部のCOP24開催地カトウィツェ市は、かつて炭鉱の町として栄えた。そのパビリオンには、場違いとも思える温暖化防止対策に最大の障壁ともなる石炭が何の躊躇いを見せずに展示されている。今では環境対策も進み、生まれ変わったかつての炭鉱の町。これも、 豊かで多様な姿を考える取り組みへの啓蒙を顕した展示の一つではある。
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         海面上昇で2050年頃には消滅が懸念されているモルディブ共和国
 COP24で地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」の運用ルールが採択された今、如何に実効性に沿ってパリ協定を動かして行くのか、IPCCが地球温暖化の進行を示唆した特別報告書を各国は重く受け止めて温室効果ガス排出削減交渉を加速させて行かなければならない。地球平均気温の上昇幅を1.5℃未満に抑えるには、2℃に抑えることさえ難しい状況にあるいとされている現在、各国はより一層の積極的かつ大胆な温室効果ガス排出削減目標を立て、その実現へ努力を惜しんではなるまい。 (終)

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