地球温暖化に挑む ・ ・ ・

          地 球 温 暖 化 に 挑 む  ◌  ◌  ◌


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                        時間との闘い地球温暖化は待ってくれない


・・・ 今も進みつつある地球の温暖化が現状のままで推移すれば、地球環境に多大な影響を及ぼすとされている世界の平均気温「1.5℃」への上昇には、早ければ2030年にも達するとした温暖化に係わる予測を国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が特別報告書(2018.10)で示している。地球温暖化対策の国際ルールとして設定されている「パリ協定」では、産業革命以降の地球の平均気温上昇を1.5℃未満に抑えることを目標に据えているが、すでに世界の平均気温は約1℃上昇しているのが現状で、目標値の1.5℃未満に限りなく近づきつつある。
 ちなみに「パリ協定」は、2020年で失効する「京都議定書」以降の新たな気候変動問題に関する国際的枠組みである。同協定は、2015年11月30日~同年12月12日にかけてフランス・パリ近郊のル・ブルジュ特設会場で開かれた温室効果ガス削減に関する国際的取り決めを話し合う「国連の気候変動枠組み条約締約国会議」(COP21)において、196ヵ国の参画で合意・採択され、2016年11月4日に発効した地球温暖化対策の国際ルールである
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             COP21でパリ協定合意フランス・パリ郊外のル・ブルジェ特設会場 2015.11.30~12.12 ) 〉
画像 自然現象の地球温暖化を抑制する対策として国際ルールの「パリ協定」では、地球の平均気温の上昇を2.℃未満に、可能なら1.5℃未満に抑えることを目標に捉えてはいるが、すでに約1℃も上昇している現状にある下で早ければ2030年にも1.5℃に達するとIPCCの「特別報告書」は見ている。ちなみに「特別報告書」とは、2018年10月にIPCCが公表した温暖化対策に最新の科学的知見を提示してCO2排出を実質ゼロにすることや平均気温を1.5℃に抑えて安定化させる等の道筋を立て、今後の温暖化対策を議論する上での共通の認識として捉えて一層の地球温暖化対策に取り組むよう促すとした内容(政策提言はしない)を表示した報告書である。
 地球の温暖化は、人間の営む産業などに伴って排出される温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、オゾンなどで、大気圏にあって地表から放射された赤外線の一部を吸収することで発生する温室効果をもたらす気体の総称)が要因となって引き起こされている現象で、人為的な温室効果ガスの排出が温暖化への原因である確率は90%を超えると、IPCCの2007年第4次の評価報告書(数年おきに発行、地球温暖化に関し多くの専門家の科学的知見を集約した国際的に広く認められた報告書)は示している。単に、地球の温暖化は地球全体の気温が温暖になる自然現象を言うが、将来的に百年単位で続くと予想されている気象変化の周期である。その地球の温暖化(地球表面の大気や海洋の平均気温の上昇)は、気温や水温の変化で海面上昇や降水量(積雪量)の変化を引き起こし、豪雨(洪水)や干ばつ、酷暑、ハリケーンなどの異常気象を頻発させる。また、大規模な生物種の絶滅を招く等の環境変動をも引き起こす。ちなみに地球表面の平均気温は、19世紀から始まった科学的な気温の観測データに基づいて統計されているものである。
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画像 地球温暖化対策に対し「パリ協定」では、先にも触れた如く世界の平均気温の上昇を可能な限り1.5℃未満に抑えることを目標に据えているが、IPCCではこの平均気温が1.5℃上昇した場合の地球へ及ぼす影響などを「特別報告書」でまとめている。この同報告書では、世界の平均気温は産業革命前よりすでに約1℃上昇しており、今後の10年間で0.2℃ほどのペース(現在は0.17℃のペース)で上昇するとした場合には、2030~52年の間には1.5℃に達すると予測している。さらに同報告書はまた、平均気温が1.5℃上昇した場合と2.0℃上昇した場合の地球環境へ及ぼす影響の変動も予測している。
 「特別報告書」がまとめている地球環境へ及ぼす影響を例示すれば、海水面で見ると平均気温が1.5℃上昇では2100年までに26~77㌢上昇(1986~2005の水準比)すると予測する。2℃の上昇では、さらに海水面は10㌢ほど高くなるとしている。生態系については、1.5℃の上昇で昆虫の6%が、脊椎動物の4%が、植物の8%の種がその生息域の半分以上を失うことにつながる。2℃への上昇ともなれば、脊椎動物や植物ではその2倍に、昆虫ではその3倍に影響は拡大するという。また、海洋ではサンゴの生息域も1.5℃上昇で70~90%が消失、2℃上昇ではその99%以上を失うことになると、影響の厳しさを示している。

画像 IPCCは、地球環境を脅かす大きな要因である地球の平均気温の上昇を1.5℃に抑えて安定させるためには、世界全体の年間二酸化炭素(CO2)の排出量を2030年までに約45%削減(2010年比)し、2050年前後には実質ゼロにする必要があると指摘している。 地球の温暖化対策として各国は、「パリ協定」に基づいて温暖化への主要因となっている温室効果ガス(特にCO2)の2030年までの排出削減目標を定めてはいるものの、現実にはたとえ各国の排出削減目標が全て達成されたにしても目標の2℃未満の抑制には難しい状況の至近距離に今の地球環境はある。この12月(2018)には、ポーランドで「COP24」(国連の気候変動枠組み条約締約国会議)が開かれるが、各国の温室効果ガス排出削減目標の引き上げなど更なる地球温暖化対策が、IPCCの「特別報告書」の提示を受けつつ議論されるであろう。
 IPCCは、平均気温の上昇幅が1.5℃と2℃の場合の地球環境へ及ぼす影響を比較した結果、僅か0.5℃の違いで地球環境へ及ぼす影響に大きな差があることを「特別報告書」で浮かび上がらせた。また、ストックホルム大学などの国際研究チームは、世界の平均気温が産業革命前より2℃前後上昇すると温暖化に歯止めが利かなくなり、平均気温の上昇幅も4~5℃に達する可能性があるとの予測さえ示唆した。こうした地球の平均気温の上昇で、先の国際研究チームは地球の“温室化”を意味する「ホットハウス・アース」に移行することも示唆している。この地球の平均気温の上昇は、氷床・氷河の融解を加速させたり、海水の膨張で海面上昇が引き起こされたりもする。
 IPCCの報告書によれば現在、温暖化の影響を受け3㎜/年以上の速度で海水面の上昇(海面上昇)が観測されているという。地球の平均気温が連鎖的に上昇を続け、2℃前後になるとグリーンランドなどの氷床や北極海の海氷が融解することで、温室効果をもたらす水蒸気量の増加につながってさらに気温の上昇が進む。この上昇幅が4℃前後になると、南米などの熱帯雨林が枯れて含まれていたCO2が大量に放出され、これによる温暖化の加速で平均気温の上昇が5℃以上ともなると東南極の氷床が大量に解け出し、米国の科学アカデミー紀要はその論文の中で世界の海面上昇が10㍍から最大60㍍にもなる可能性を暗示している。
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                      激しい減少を続ける北極の海水面積 グリーンランド
画像  進みつつある地球温暖化の影響で今、IPCCの報告書が示した3㎜/年を上回る速度での海面上昇の進行状況が観測されているという。このため、今世紀中にメートル単位での海面上昇が起きる可能性は充分にあるとの指摘もされている。この地球温暖化に起因する海面上昇は、その主原因が海水の熱膨張であり、次いで南極の氷床とグリーンランドの氷床融解(海氷の融解では海面上昇は起きない)であるとされている。仮に、今後海面が1㍍上昇すると、常夏の太平洋上に連なって浮かび“真珠の首飾り”と称されているマーシャル諸島(共和国)の島々は、海水の浸食に晒される。その領土とする全域の海抜が極度に低いマーシャル諸島共和国は、温暖化による海面の上昇で国土の80%が水没すると予測されている。
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                               マーシャル諸島
 日本沿岸の海面上昇は3.3㎜/年と観測されているが、東京やオランダ、バングラデシュの一部などのように海岸沿いに海抜以下の地域(ゼロメートル地帯)を擁する諸国や都市にとっても海面の上昇は、生活環境の維持・保有にとって重要な問題であり課題でもある。特に、バングラデシュでは1㍍の海面上昇で国土の18%に相当する面積(岩手県+青森県)の低地が沈むとされている。また、IPCCが現状のままでは早ければ2030年にも世界の平均気温は1.5℃上昇するとして様々な地球への影響を示唆しているが、先にも触れたように海面の上昇が2100年までに最大77㌢上昇すると予測されている中で、海抜が最高地点でも2.4㍍という、平坦な地形のモルディブ。アジアのインドとスリランカ南西のインド洋に浮かぶ共和国(高温多湿の熱帯気候の島国)で、26の環礁や約1200の島々(約200の島に人が住む)から成る南北800㎞にわたって散在する同共和国には、東京23区の半分程度の地域に約40万人が暮らす。近年のモルディブは、海面上昇(約1㍍)で国土の80%が失われかねない差し迫った状況にあり、加えてサンゴ礁の死滅海域も拡がりを見せ、地球温暖化で国土が消滅する危機に晒されている。観光の島国でもあるモルディブは現在、国土を盛り土して迫り来るであろう水没を防ぐ方策が検討されている。また、国際空港があるフルレ島の北東部に人工島の造成も行われている。
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                               モルディブ共和国
画像 地球の温暖化で氷床融解が進む南極の海で、南太平洋上に浮かぶ島々(共和国)が海面上昇による環境の破壊に直面している。温暖化の状況や、温暖化対策のための国際的な動静は如何に推移しているのか、これまで以上に地球温暖化の影響を心配する声が大きくなっている。その地球温暖化の進行を抑え安定化を図るためには、地球の平均気温の上昇を1.5℃未満に抑えること(パリ協定やIPCCなどの指摘)がキーポイントとなっており、温暖化対策を議論する上でも科学的な根拠となっている。いずれにせよ、地球の温暖化を止めない限り現状の地球環境を維持していくことは叶わない。
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                 人工衛星いぶき2号打ち上げ鹿児島県種子島宇宙センター 2018.10.29
 こうした地球温暖化の抑止に関して国は、気象の観測が人工衛星を使って衛星軌道上から広域かつ短時間でその状況を把握しているように、温暖化対策に関してもさらなる貢献度合いを高めるために温室効果ガスの観測に人工衛星を役立てている。2018年10月29日午後1時08分、地球温暖化につながる温室効果ガスを宇宙から観測する初の人工衛星「いぶき2号」(日本)が鹿児島県の種子島宇宙センターからH2Aロケット40号に搭載されて打ち上げられた。「いぶき2号」(9年前に打ち上げられた「いぶき」の後継機として環境省とJAXAが開発)は、赤外線を検知する高性能センサーでCO2やメタンなどを宇宙から観測し、観測したCO2が自然に発生したものか工場などの産業活動で発生したものかを見分けられるほか、粒子が極めて小さい大気汚染物質PM2.5の濃度の調査も可能である。国(環境省)は、地球温暖化対策についての「パリ協定」に基づいて、各国がどの程度のCO2排出量を削減できたかなど温室効果ガスの実態把握にも活用したいとしている。ちなみにJAXAとは、日本の航空宇宙開発政策を担う研究開発機構で、内閣府・総務省・文部科学省・経済産業省が共同所管する国立研究開発法人である。また、H2Aロケット40号機にはアラブ首長国連邦が初めて開発した地球観測衛星「ハリーファサット」も搭載された。同連邦は、この衛星を使って地上の自然環境変化の把握や都市計画の策定、災害対策などにも役立てるという。今後も人工衛星は、宇宙からの観測を通して地球環境やさまざまな分野に大きな貢献をもたらしてくれるであろう。

画像 私たちが住む地球の環境保全のためには回り道(躊躇)が許されない地球温暖化対策だが、その国際的なサミットなどの主役は「国家」であるのが通例だ。しかし、地球温暖化対策の対応に関しては万民に至る関心と関与が必須であることは論を待つまでもない。2018年9月12日~14日、国に替わって世界の企業のリーダーや自治体の代表、市民、NPOなどが主役を務める「非国家」(官民一体)による国際サミットが初めて米国のサンフランシスコで開かれた。この国際会議に先立つ過日、米国のトランプ大統領が「パリ協定」からの離脱を宣言していたにも係わらず温暖化対策に関する世界の動静に影響は見られることなくは、世界の企業家や自治体などが多数挙って開催された初の“非国家”による国際サミット「グローバル気候行動サミット」(「GCAS」・約4500人参画)である。この国際会議の様相は、“温室効果ガスの排出ゼロ”や“再生可能エネルギー100%”等を宣言するなどのリーダーの登壇が相次ぎ、さながら国際会議の主役が「国家」から「非国家」へ軸足を移しつつあることを強く感じさせるものであった。また、同サミット(GCAS)では、各国政府に対してCO2削減目標の引き上げを求める声も相次いだ。さらには、日本の「気象変動イニシアティブ」(JCI)と米国の「米国の約束」が温暖化対策を相互に協力・強化して行くことを同サミットの中で確認するなど、日米の企業や自治体の連合体による新たな連携の動向も生まれている。このサミットで基調講演を行った、地球規模の持続可能性に関する分野で国際的に知られるスウェーデンの環境学者ヨハン・ロックストローム氏(53)は、正しい政策とリーダーシップさえ確実に確保されれば2030年には世界の温室効果ガス排出量を半減させ、パリ協定が目指す平均気温の上昇を1.5~2.0℃の範囲に抑えることは可能だとして、温暖化抑制へ各国に奮起を促した。
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                   基調講演をするロックストローム氏 米国サンフランシスコ 2018.9.13
 世界では今、地球温暖化の対策・対応に向け間断のない努力が傾けられており、今年(2018)12月にポーランドで開かれる国連の気候変動枠組み条約締約国会議(COP24)には世界の各国が参集し、パリ協定に係わる温暖化対策実施のための新たなルールづくりの詳細や各国のCO2削減目標引き上げの枠組みなど、さらなる温暖化対策が議論される。こうした前向きの対策の下で、地球環境に多大な影響をもたらす温暖化の脅威を避け得られるかどうかは時間との闘いになっており、 温暖化は待ってはくれない。
 これからも世界は、努力をいとわずに地球温暖化対策を展開をしてくことになるが、各国が温暖化の現状やCO2削減への取り組みを共用した上で「国家」と「非国家」が両輪となって温暖化対策を加速させ、迫り来る地球温暖化に挑む諸方策を探りたい。 (終)

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