細る地域の足をどう守る

      細 る 地 域 の 足 を ど う 守 る  ・  ・  ・

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      もう走らない中国山地を縫うように江の川に沿って島根県江津市と広島県三次市を結んでいたJR三江線2018.4.1廃止
・・・ 世論調査(内閣府)によれば、地方では日常生活において鉄道やバスといった公共交通機関を利用する人は少なく、7割近くが日常の交通手段として自家用車を利用している。この10年間で、車依存の傾向が弱まっているのは三大都市圏を構成する都府県の一部のみであり、その他の道県においては車依存の傾向が強まっている。中でも、特に人口の少ない市町村を多く抱える地方の県ほど車依存の傾向は強く、地方(地域)の足でもある公共交通の利用が先細りを見せているとされている ・・・

画像 鉄道に関しても著作が多い、日本政治思想史が専門の放送大学教授の原 武史さんは曰く。道路は周囲も含めてその環境がどんどん変化していくが、鉄道の場合には線路が敷かれた場所が100年前と同じことも珍しくない。特にJR夕張支線のような単線非電化の路線は、乗るだけでタイムスリップした気分が味わえる。それが“楽しい”と…。
画像 その地方(地域)の鉄道路線で、“廃線”への流れが止まらない。先のJR石勝線の夕張支線(新夕張~夕張間16.1㎞)も、1892(明治25)年に北海道炭礦鉄道室蘭線の支線を母体として建設された歴史の古い路線だが、ここ10年余りの間の急速な沿線人口の減少(炭鉱の閉山など)で利用者の希薄化(輸送密度10人前後)が進み、今年(2018)に入ってJR北海道は来年(2019)4月1日の同路線の廃止をすでに決定している。また、今年(2018)3月には、島根県の江津駅と広島県の三次駅間108.1㎞を結んでいたJR三江線(JR西日本の地方交通線・全線単線非電化)が廃止(2018.4.1)された。沿線人口の減少、少子高齢化、マイカー利用の拡大などが続く中で、利用者の減少(2017年度平均通過人員163人/日)が加速して廃止へつながった。鉄道路線廃止後の現在は、並行する道路で18系統に細分化されたバス輸送が行われている。
 その三江線に関しては、年約2千万円の収入を稼ぐのに約10億円を超える経費がかかる“超赤字路線”であったが、2018年3月期のJR西日本の営業利益が過去最高の1913億円を示し、沿線自治体は三江線の赤字はその中で穴埋めできると同路線の存続を求めた。しかし、JR西日本は88年の歴史を刻んできた老舗路線・JR三江線の廃止を見届けた。
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                     路線廃止まで1年未満となったJR夕張支線 終着夕張駅                   
画像 2552.0㎞(2018年現在)の全14路線が赤字で深刻な経営の苦境に陥っているJR北海道においては、2016(平28)年11月に道内全路線営業距離の約半分に当たる1237.2㎞(10路線13区間)を“単独では維持困難”であると公表して沿線自治体に対し路線のバス転換や維持に向けた支援などについて協議申し入れを行ってから1年8ヵ月が過ぎた2018年7月に、“単独では維持できない”とした10路線13区間のうち5路線5区間(JR北海道全路線営業距離の1割強に当たる311.5 ㎞)をJR北海道は廃止にする方針を固めた。新会社として発足以来の最大規模の路線廃止で、国と北海道(道庁)も廃止を容認しており、JR北海道ではバス路線への転換を沿線自治体の同意を得た上で年内にも廃止を決めたい考えだ。ただ、廃止方針を固めた5路線5区間のうち沿線自治体が容認しているのはJR石勝線の夕張支線とJR札沼線の北海道医療大学~新十津川間に止まっており、他の3路線3区間は廃止に向けた協議の途上にある。ちなみに廃止方針の対象路線は、JR石勝線夕張支線の全線(16.1㎞)、JR留萌線の全線(50.1㎞)、JR札沼線の北海道医療大学~新十津川間(47.6㎞)、JR根室線の富良野~新得間(81.7㎞)、JR日高線の鵡川~様似間(116.0㎞)の路線と区間である。
 ともに、1列車当たりの平均乗車人数が10人前後と極端に少なく、国や沿線地域に負担を求め敢えてこれらの鉄道路線を残すよりもバス路線に転換した方が利便性は高まる…としているのは、JR北海道の島田 修社長である。
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画像 概して、鉄道路線の廃止(廃線)を判断する目安とされているのが1日1㎞当たりの平均利用者数が2千人未満の路線で、日本の全路線数の3分の1に及ぶとも弾かれている。鉄道路線は、その維持・持続に対し採算性が重要視され、ひとたび廃止(廃線)となればその再建は困難だ。目前の危機(JR北海道のケースなど…)で廃止にしてしまっていいのだろうか、地方の鉄道路線廃止の流れが止まらない近年にあって路線を残す“道”はまだあったのではないだろうか。人口減少や少子超高齢化の中で、「地域の足」として必要な地方・地域の公共交通をどう維持していくのかは全国共通の課題となっている。先に触れた、年2千万円を稼ぐのに約10億円もの費用(経費)がかかり、今年(2018)4月に廃止となったJR三江線(地方交通線)は超赤字路線ではあったか、一方で赤字路線であっても地域の足として学生や高齢者などの交通弱者に欠かせない公共交通もある。ここに、赤字を抑えて“地域の足”でもある公共交通を維持・継続させていくためにも、沿線地域の創意と工夫が必要とされる。
画像 両備グループ代表の小嶋光信氏
 昭和末期の1987(昭62)年に、旧態依然とした体質(親方日の丸)の下で経営破綻した国鉄が7つのJR新会社に分割・民営化され、上場を目指して利益の追求が図られることとなったのは旧知のことである。そして、公共交通は市場の動きに 委ねられ、鉄道やバスの路線廃止は認可制から届出制へ変わって、新規の参入も容易くして競争意欲をもり立てた。社会にもたらされた市場原理は、都市部において大きなサービスの向上をもたらし、JR東海は自費で総額9兆円に及ぶリニア中央新幹線を造る体力を身につけた。一方で、サービスの向上で潤った都市部に人口を吸い上げられ、そのしわ寄せを被ったのが地方であった。特に、市場制の中で採算性が重要視される鉄道は、その存廃が地方・地域の人口減少に裏打ちされる。採算性だけが行政の基準として残り、公共交通から“公共”の考え(社会性)が抜け落ちてしまったと話すのは、バスや路面電車を西日本で運行する両備グループ(岡山県岡山市)の小嶋光信代表である。同氏のイメージにあるのは、線路や車輌などは行政が設置・所有し、運行するコストだけを民間が分担する一般的な欧州諸国の交通政策である「公設民営」である。鉄道を必須の社会インフラとして考える欧州、地域の公共交通(地域の足)をどう維持・継続していくのか、日本ではそのはっきりしたビジョンが見えてこないという。人口減少の時代に即した法整備を真剣に考えないと、この先十数年で半分の鉄道路線は潰れる恐れがある、と先の小嶋代表は警告する。
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                         日常の通学に欠かせない地方交通路線
画像 本年(2018)6月に国土交通省が公表した平成29年度国土交通白書で国土の変化に触れて、日本の人口構成は戦後からほぼ一貫して三大都市圏を中心とした都市部に集中し続けており、この傾向を踏まえた2050年における人口の推計は2010年を基準とすると増加を見るのは全居住地域の2%に過ぎず、6割以上の地域において人口が半分以下になるとされている。そうした国土の変化の中で、人口が減少する地方・地域の公共交通網をどう持続していくのか、路線廃止の流れが止まる様子も見られない中ではもう自治体や国任せでは交通弱者らの地域の足は守れそうにない。求められるのは、自治体や住民も当事者意識を持って知恵を絞り、地域の足をどう守っていくのかその仕組みを根本から見直していく努力であろう。 (終)

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