瀬戸際の深刻な経営難 ・ JR北海道

          瀬戸際の深刻な経営難 JR北海道
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              … JR北海道経営苦境への発端ともなったJR石勝線列車脱線火災事故  ・ 2011..6.27  …

画像 画像JR北海道は、1987(昭62)年の国鉄改革(分割・民営化)で経営基盤の脆弱な北海道の鉄路を引き継いだが、その地域特性(広大な面積と希薄な人口密度)により新会社として発足当初から多くの赤字ローカル線を抱え、現在に到るもJR旅客会社6社の中でその経営は最も厳しい状況(新幹線を含む全14路線が赤字)にある。近年は、年400億円を超える営業赤字を出し続けており、2017(平29)年度の決算概要においてもグループ全体(親会社の鉄道事業を含め24社)の営業収益は前年同期を上回った(連結決算・1737億円)ものの、営業費用が鉄道の安全を確保するための修繕費や除雪費など経費の増加で2154億円となり、営業損益が過去最大の416億円となる赤字を更新した。
 もともとJR北海道は、民営化による新会社発足に際し国鉄から経年の古い線路や車両、施設を引き継いだことで自助努力のみでは今後の黒字経営の維持は困難であるとして国の判断から経営安定基金(JR北海道6822億円・鉄道事業営業損失の見込みを基金の運用益で埋め合わせる目的で設立)の投入(支援)を受けてきたが、それが充分に機能(運用益の確保)せずに必要な施設・設備の修繕や更新を先送りしてきたことから2011年頃から事故が頻発するようになった。その反省に立って、重点を置いた安全投資への方針転換から必要経費が増幅して年400億円を超す 営業赤字を生み出す状況に到っていた。また、鉄道自体の経営成績(2017年度単体決算)においても、営業収益は前年同期に対し僅かながら増加(インバウンドの利用増や空港アクセス輸送、札幌圏輸送の堅調など)を見たものの、営業経費の増加(安全基盤の強化(車両・施設の更新や修繕)、冬期除雪費、北海道新幹線に係わる経費)などで559億円の営業赤字を計上した。このような経営難の状況がこの先続くとなれば、継続されている今の国からの財政支援が途切れる2020年以降には事業費運営資金がショートを来たし、列車運行の確保が出来なくなる危惧感をJR北海道は高めている。

画像 そのJR北海道は現在、2011(平23)年6月27日に起きたJR石勝線の列車脱線火災事故(6両編成の「特急スーパーおおぞら14号」が占冠~新夕張間の清風山信号場内で脱線し、同信号場内にある第1ニニウトンネル(685㍍)内に停止後に全車両が炎上・全焼して負傷者79人を出した)をはじめとして、その後に続き特急列車の相次ぐ火災事故や貨物列車の脱線事故、保守・検査データの改竄、ずさんな線路保守管理、社員の不祥事などの事象を連続して発生させたことにより、2014(平26)年1月に国土交通大臣から「輸送の安全に関する事業改善命令及び事業の適切かつ健全な運営に関する監督命令」を受け た。そして現在は、日毎の輸送の安全を確保しつつ前記の改善・監督命令を踏まえて策定された「事業改善命令・監督命令による措置を講ずるための計画」と「安全投資と修繕に関する5年間の計画」に基づいて事業の安全・安定基盤の再構築および安全風土の構築に取り組んでいる最中である。
 そうした現状下で、差し迫った深刻な鉄道事業の経営難に陥っているJR北海道はこのほど、廃止か否かで揺れ続けていた赤字5路線・5区間(311.5㎞)の鉄路を廃止する方針を固めた。現総営業距離(2552.0㎞)の1割強に相当し、沿線自治体などとの協議・同意を経た上でバス転換へ移行する方針という。対象路線は、JR留萌本線・深川~留萌間全線50.1㎞、JR石勝線夕張支線・新夕張~夕張間16.1㎞、JR札沼線・北海道医療大学~新十津川間47.6㎞、JR根室本線・富良野~新得間81.7㎞、JR日高本線・鵡川~様似間 116.0㎞である。国と道も、これら路線の廃止容認に傾いておりJR北海道は年内(2018)にも廃止を決めたい考えだが、一部自治体との協議に対する同意の如何が焦点となっている。同社の島田 修社長は1列車当たりの平均乗車人数が10人前後と少ない中で国や沿線地域に経費負担を求めて敢えて鉄道を残すよりも、バス運行に転換した方が利便性(運行頻度や速達性)が高まるとしている。
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画像 人口減少が本州より急テンポで進む北海道は、その人口減少やこの30年余りの間に7倍近くにも延びた高速道路網の進展(自動車利用への転換)などで鉄道の利用者が漸減している。そのために、道内鉄道路線の運営が苦境に陥っているJR北海道では、2016(平28)年11月18日に全路線営業距離の約半分に相当する10路線13区間(1237.2㎞)について、利用者の激減で最早自社単独では維持できないことを正式に発表(公表)した。 そして、バス転換や駅の廃止、路線の維持に向けた上下分離方式など今後の路線維持の在り方を関連沿線自治体(道内56市町村)と協議を続け、2020年春までの合意を目指すとしている。
 単独では維持できないとした10路線13区間に対し、このほどJR北海道が路線廃止の意向(方針)を固めた5路線・5 区間のうち、すでに沿線自治体が容認して廃止が決まってい路線はJR石勝線の夕張支線(新夕張~夕張間16.1㎞・バス交通システムの導入が検討されている)とJR札沼線の廃止対象区間(北海道医療大学~新十津川間47.6㎞・バス転換)で、 他の3路線・3区間(計247.8㎞)の廃止は今後の協議に持ち越される。また、単独で維持できない残る路線・区間についてもJR北海道は、自治体との協議をさらに推し進めて国や北海道、沿線自治体等からの財政などの支援を含み、鉄道路線を存続させていく考えであることを示している。
画像                                 廃止が決まったJR石勝線夕張支線
 ちなみに、参考までにJR北海道が2016年11月18日に公表した単独では維持困難とした線区を、次に掲げます。①札沼線北海道医療大学~新十津川間47.6㎞ ②根室本線富良野~新得間81.7㎞ ③留萌本線深川~留萌間50.1㎞ ④宗谷本線名寄~稚内間183.2㎞ ⑤根室本線釧路~根室間135.4㎞ ⑥根室本線滝川~富良野間54.6㎞ ⑦室蘭本線沼ノ端~岩見沢間57.0㎞ ⑧釧網本線東釧路~網走間166.2㎞ ⑨日高本線苫小牧~鵡川間30.5㎞ ⑩石北本線新旭川~網走間234.0㎞ ⑪富良野線富良野~旭川間54.8㎞ ⑫日高本線鵡川~様似間116.0㎞ ⑬石勝線新夕張~夕張間16.1㎞の以上10路線13区間であった。なお路線見直し公表の時点において、石勝線の夕張支線(新夕張~夕張間)は利用者が1割以下のため同路線が廃止となるのは確実と見た自治体の夕張市が、鉄道に替わるバス交通システムなどの導入・整備にJR北海道の支援を優位に受けることを目指し、夕張市が事前(逆提案のかたち)に同路線の廃止をJR北海道に申し入れて双方が合意していた。
 その石勝線夕張支線については、鉄道を廃止して効率的な持続可能な交通体系の実現に向けた方向性(バス交通システムの導入)が夕張市との間で確認されたことを受け、JR北海道は2018年3月26日に鉄道事業(夕張支線)の廃止日を2019年4月1日とする「鉄道事業廃止届出書」を国土交通大臣へ提出している。また、JR北海道が鉄路の復旧を断念した日高本線鵡川~様似間(116.0㎞)については、他の交通システム等による代替を含め関係自治体との協議を鋭意進めていく方向にあるという。

画像 厳しい経営難に直面しているJR北海道は、開業2年を迎えている北海道新幹線が札幌まで延伸開業する2030年度までを経営再生の期間と位置づけ、それまでの間に老朽化した施設・設備などの修繕や青函トンネルの維持・管理のため、負担軽減など長期の支援を国に求めている。これに対し国(国土交通省)は、人口減少(利用者減)が続く中で旅客全6社で経営が最も厳しいJR北海道へ新たに2020年度までの2年間(2019~20年度)に400億円ほどの援助資金(支援)を投じると表明した。同時に、JR北海道に対してJR会社法に基づき自助努力を求める監督命令を出し、四半期毎に経営改善の取り組みを監視して経営再建を促していく考えを示した。その後の支援については、経営改善・再生の進み具合を検証の上で検討するとしている。ちなみに国鉄改革(1987)に併せて設けられたJR会社法は、分割・民営化により経営基盤の弱い地域を受け継いだ北海道、四国、貨物のJR3社に対し、国土交通大臣が経営改善の取り組みに監督命令を出せる 法律である。今回のこのJR北海道への監督命令は、たび重なる事故などの事象に対し2014年に出されて以来、2度目である。
画像 JR北海道への財政支援と監督命令を通達する石井啓一国土交通相 2018.7.27
 2016(平28)年10月に総務省は、2015年の国勢調査の確定結果を発表した際に、日本が本格的な人口減少時代に入ったことが鮮明になったと明言した。日本全体の人口が減り続ける中で、高速道路を含む道路網の整備も年々進み、地方での鉄道離れは一向に止まらない。その鉄道をどこまで支援すべきかという議論は、取りも直さず経営難のJR北海道やJR四国だけに限らず、本州や九州に多く存在する赤字ローカル線にも直結するものである。こうした人口が減っていく中で、地域の足となる鉄道をどう継続・維持していくのか、経営難のJR北海道ならずとも日本の全地域にとって人ごとではいられない大きな課題だ。

画像 経営難の厳しい中で、藤井直樹鉄道局長から監督命令の文書を受領(2018.7.27)したJR北海道の島田 修社長は、「不退転の決意で経営再建に取り組んで行く」と表明している。経営難のJR北海道に対し今回、監督官庁の国土交通省が経営の安定化に向け支援資金を出しつつ経営を厳しく指導するという構図(監督命令を出す)を展開して見せもしたが、ことはそう単純には運ばない。
 JR北海道の今の経営難は、先にも触れた2011年の列車脱線火災事故やその後に続いた事故連鎖の事象とも無縁ではないが、直接の引き金は経営安定基金の低金利化であった。1987年の国鉄分割・民営化に際し国は、発足させた6つのJR旅客会社のうち赤字ローカル線を多く抱えて単独では黒字経営が難しい半分の“3島会社”と呼ばれた旅客会社(北海道、四国、九州(後に上場))とJR貨物会社に対し「経営安定基金」を設けた。しかしながら、その経営安定基金の運用は超低金利(市中金利の低下)が続く厳しい環境を背景に、JR北海道の2017年度の運用益は225億円ほどで開設当初の半分に止まる。この厳しい運用環境の下でJR北海道は今後、基金の分散投資と運用手法の多角化を図り運用収益の確保・維持に努め、リスクの管理・強化を推し進めるとしている。今回の財政支援(約400億円)について記者会見で麻生太郎財務相も、「それ(財政支援)で黒字になる、といった簡単なこととは思えない」と、 JR北海道経営難の深刻の度を推し測る。
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                 高波の被災2015..1で不通となり復旧を断念したJR日高本線鵡川~様似間
画像 鉄道は利用者あっての存在であり、存続が命題でもある。人口減少の時代に入った日本、JR北海道の経営苦境の背景にあるのも一つには人口減少が大きく絡む。この人口減少の問題は当然に、都市部や地方・地域の鉄道を問わずに降りかかる共通の課題で、こうした人口減少の問題も含め国鉄改革の分割・民営化で背負わされた承継路線の資質や規模における問題は、改革に際し受け入れざるを得ない必然的に生じる構図(地勢、環境)であり、然るべくして承継する(起きる)構造的な問題なのである。何はともあれ、経営難の苦境に直面しているJR北海道に求められることは、経営基盤の整備・確立である。その中でも、鉄道事業における収益の確保は喫緊の大きな課題である。
 JR北海道は、2018(平30)年度事業計画の概要 の中で経営自立に向け経営基盤の強化が必要であるとして、 新幹線収入の維持・拡大に向けた取組の展開・強化を図り、札幌圏主要路線の輸送力増強に取り組むなど鉄道運輸収入の確保に努め、さらには安全の確保を大前提に事業全般にわたり効率化や経費の節減・削減を 図るとして、内側からの施策(乗降の少ない駅の見直し、使用頻度の低い設備等の使用停止、駅輸送業務の見直しなど)を推し進めるとともに、社員の創意工夫による経費の削減化を推進するとしている。そして、「安全の再生」「持続可能な交通体系の構築」「経営基盤の強化」「コンプライアンスの徹底」を特に重点項目に挙げて経営難に対処していく構えである。
画像  国のJR北海道への新たな支援決定を受け会見する同社島田 修社長
画像 JR北海道が路線全体のほぼ半分(10路線13区間)について、“単独で維持するのは困難”と表明してから間もなく2年が経とうとしている。これら路線の整備(存廃)を巡るJR北海道と沿線自治体との協議は、同社が2020年春までの協議合意を目指す中で、全般的には遅々として進んでいないのが現況ではある。維持困難な対象路線は、国土の2割に及ぶ北海道の全域に拡がりを見せ、全国への物流の大きな役割をも担う生活路線だ。故に協議は、国と北海道との主導の下で加速させていくべきときを迎えている。
 道内の高速道路網は、JR北海道発足後のこの30年で飛躍的に拡充され、道路網の整備が進んだ。沿線自治体や住民は手放しで歓迎もしたが、されど鉄道離れが進んだのは否めない事実だ。果たして、生活において地域や沿線の住民が最も必要とし望む“足”は…。沿線自治体には、鉄道の存続をただ訴えるだけでなく、JR北海道の赤字路線見直しの検討を好機と捉え、真に必要とする公共交通を住民と一体となって考える前向きな姿勢が必要である。地元の足を守るためには、鉄道会社任せにせず、地域全体で知恵を絞ること必要である。今回のJR北海道の路線見直しを通し、市民の足を守るには住民が知恵と汗を出して考えなければと訴えた夕張市の「逆提案」のケースにその経緯を観ることができる。瀬戸際に立つJR北海道の経営難・“北の鉄路”の危機は今、人口減少が急テンポで進むどの地方・地域においてひとごとではない。 (終)

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