再燃する新幹線整備への期待

          再燃する新幹線整備への期待
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・・・ 今、新たな新幹線整備を求める動きが、日本の各地で熱を帯びている。45年近くも計画の段階で足踏みを続けてきた新幹線基本計画路線の“整備”への格上げを目指し、2017年春の整備新幹線5路線全ルートの確定を機に沿線自治体などが国への働きかけを強めているからである ・・・

再燃する新幹線整備 ~
画像 現在、北陸新幹線(東京~新大阪間約690km)は終着の新大阪に向け金沢~敦賀間(約114km)で延伸工事が行われているが、懸案として最後まで残されていた敦賀以西の新大阪までの延伸ルートが2017年3月15日に“小浜~京都~新大阪ルート”とすることで正式決定し、これにより優先整備とされていた整備新幹線5路線の全ルート(東北新幹線および九州新幹線鹿児島ルートはすでに全線開業している)がようやくにして出揃い、次期整備新幹線建設への途が拓かれることとなった。ちなみに北陸新幹線の敦賀~新大阪間については、建設費約2兆1000億円、工事着工2031年度、開業は2046年度を目指すとされている。

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                            石川県内を行く北陸新幹線
 その北陸新幹線を含め整備新幹線は、1973年に全国新幹線鉄道整備法(1970年成立)に基づき5路線(後述)の優先整備計画が策定されたが、当時この5路線に次ぐ新幹線の追加整備として路線網を拡げるために11の路線が基本計画路線(総延長約3000km)として策定されていた。しかし、策定されたそれらの基本計画路線の整備に向けた目途は未だ今日に至っても立っておらず、計画段階(中央新幹線は2014年12月に工事着工されている。※なお以降の基本計画路線は“10”路線と表記する)に据え置かれたままである。ただ、2016年12月に出された北陸新幹線に関する政府・与党による検討委員会での中間報告の中で、北陸新幹線整備後(2046年度開業予定)の課題として基本計画路線の整備に向けた検討への着手が必要であるとの意見が付けら、基本計画路線の実現への可能性が示唆されている。この度の整備新幹線5路線の全ルートが出揃ったことを機に、基本計画10路線の関係沿線自治体などでは路線の“整備”への格上げを目指して国に対する働きかけ(売り込み)を強めており、早期実現に向け署名活動や国への陳情を活発化させている。
 現在、新幹線鉄道の建設は1970年に国会(同年5.13の第63国会)で成立した「全国新幹線鉄道整備法」に基づいて進められていることは前述したが、同整備法ができる以前に新幹線はすでに東海道新幹線が開業(1964)しており、山陽新幹線や東北新幹線(東京~盛岡間)および上越新幹線が建設工事の途上にあった。それらの新幹線に次ぐ整備計画路線として、同整備法に基づき1973年に策定されたのが東北新幹線(盛岡~青森間)、北海道新幹線(青森~札幌間)、北陸新幹線(東京~大阪間)、九州新幹線(福岡~鹿児島間)、同(福岡~長崎間)の5路線であった。この全国新幹線鉄道整備法に基づいて計画・整備される路線を「整備新幹線」と呼称するが、先の5路線の整備は直ちに実施に移された訳ではない。国の厳しい財政状況の中で、1982年に整備計画は凍結状態(閣議決定)に置かれたが、国の国鉄改革(分割・民営化)への方針とともにその整備スキームが検討されていた国鉄末期の1987年になって凍結は解除され、実際に5路線の整備計画が動き出したのは計画策定から15年余りを経た1989年の北陸新幹線(通称“長野新幹線”)高崎~軽井沢間(41.8km)の着工を待ってからであった。その後、5路線の残る整備区間も順次着工され、2016年3月には北海道新幹線の新青森~新函館北斗間(148.8km)が開業して整備新幹線の路線網を着実に拡げている。そして2017年度の現在、整備新幹線は3路線約373kmの区間で延伸建設工事が進捗中である。すなわち、北海道新幹線が2030年度の札幌開業に向け新函館北斗~札幌間約212kmの区間で、北陸新幹線が金沢~敦賀間約114kmの区間で2020年度開業予定に向け、また九州新幹線の長崎ルート(武雄温泉~長崎間約67.0km)においても2020年度の開業予定に向けそれぞれに建設工事が進行途上にある。ちなみに、2016年3月時点における日本の新幹線網の総延長営業キロはおよそ2765km(うち整備新幹線の営業キロは約929km)に及んでいる。
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               建設工事が進む全長10410㍍の北海道新幹線昆布トンネル」(長万部~倶知安間) 〉   
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 、新たに新幹線の整備(建設)を希求する動きが、このほどの北陸新幹線敦賀~新大阪間のルート確定の下で“我が町にも新幹線を”と、各地で熱を帯びている。その対象にある基本計画10路線の概要を、次に示します。①北海道新幹線(南回り…長万部~室蘭~札幌) ②羽越新幹線(富山県富山市~青森県青森市) ③奥羽新幹線(福島県福島市~秋田県秋田市) ④北陸・中京新幹線(福井県敦賀市~愛知県名古屋市) ⑤山陰新幹線(大阪府大阪市~鳥取県鳥取市~島根県松江市~山口県下関市) ⑥中国横断新幹線(岡山県岡山市~島根県松江市) ⑦四国新幹線(大阪府大阪市~徳島県徳島市~香川県高松市~愛媛県松山市~大分県大分市) ⑧四国横断新幹線(岡山県岡山市~高知県高知市) ⑨東九州新幹線(福岡県福岡市~大分県大分市~宮崎県宮崎市~鹿児島県鹿児島市) ⑩九州横断新幹線(大分県大分市~熊本県熊本市)の10路線である。ただし、当初基本計画11路線の一つであった中央新幹線(東京~大阪間)は、すでに2011年5月に整備計画が決定され、JR東海を運営主体として2014年12月に先行開業区間の品川~名古屋間において超電導磁気浮上式鉄道として着工しており、現在は最速2037年度の品川~新大阪間全線営業開始を予定に建設の途上にある。しかしながら、残る基本計画路線の10の路線は、これまでの整備新幹線(5路線)以上に整備に当たっての利用者見込みが弾き出せない地方や地域が大半を占めていると言われている。
 国土交通省では、2017年度から幹線鉄道ネットワーク等のあり方に関する調査のためとして事業費2億8000万円を計上し、新たに新幹線を整備する際の工法などを中心に、現在も高い伸びを示しているインバウンド需要が新幹線に与える影響などの調査を行うとしており、2018年度も同調査事業を継続して行うため事業費計上が図られるという。これを受け、基本計画路線の関連・関係者の間には整備新幹線5路線に次ぐ新たな新幹線整備へ向けた期待と動静が再燃している。
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                        本州児島と四国宇多津を結ぶ瀬戸大橋
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 整備新幹線5路線の全ルートが北陸新幹線を最後に2017年春に出揃ったことで、国土交通省鉄道局のもとには国会議員の敏感な反応も交え基本計画路線の沿線自治体等からの新幹線の建設を国に働きかける陳情団等の動きが、今年度(2017)に入ってから際立ちを見せているという。その中でも、最も活発かつ前向きの姿勢を示して新幹線建設誘致に盛り上がりを見せているのは、日本列島主要4島の中で唯一新幹線鉄道が走っていない島となっている四国である。
画像 その四国では、2017年7月に基本計画路線の「四国新幹線」の早期実現を目指して「四国新幹線整備促進期成会」を発足させており、先ずは基本計画路線の“整備計画への格上げ”を目指して政財界関係者をはじめ地元自治体の首長らを前にして、深刻な人口減少や少子高齢化が続く中で地方・地域を堅持していくために四国には是非新幹線が必要と気勢を挙げる。また、“四国新幹線”と“四国横断新幹線”の2つの基本計画路線がある四国では、この両基本計画路線を組み合わせて岡山から瀬戸大橋線(瀬戸大橋は新幹線規格で建設されている)を通って高松を経由し、徳島や高知、松山といった主要都市圏を結ぼうという新たな“四国新幹線構想”も提唱されている。ただ、この四国新幹線構想にしても、主要都市圏が直線状に連なるのではなく3方向に分散して存在する四国地方では、それらの複数拠点間を同時に結ぶ新幹線計画には無理があり、現実的ではないとする趣が強い。
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                        〈 「四国新幹線整備促進期成会東京大会
 基本計画路線の四国新幹線の建設事業費は1兆5700億円規模とされ、開業すれば大阪~四国4県間が約1時間半程度、東京の間も4時間程度で結ばれるという。ただ、四国新幹線に対してどれ程の需要が見込めるのかは未知数とされている。しかし、この需要見込みについて四国経団連では、新幹線が走らない全国16県県庁所在地の人口から見ても四国の松山市は51万人、同高松市は41万人、同高知市は34万人と島内トップクラスの人口が多いエリアを走ることになり、すでに開業の域にある沿線人口が薄いとされる北陸新幹線や北海道新幹線と比べても遜色はないとする。とにかく、新幹線建設誘致に盛り上がりを見せる四国は、経済界も新幹線を待望する声が大きく、他のエリアよりも行政主導の熱意が高いと言われている。
画像 JR四国社長半井真司氏 〉 
 それに加え、独自に四国内在来線の高速化を進めているJR四国(本社・香川県高松市、経営営業キロ9路線・855.2km)が、新幹線導入に前向きであることだ。JR四国の在来線は、もともと線形が悪い(急曲線・急勾配)ために高速化するにしても線形を新たに付け替える必要もあり、費用的には新幹線の建設と大差はないとする(JR四国半井真司社長)。
 また、高速化への新線付け替え費用はJR四国の負担とはなるものの、新幹線は当面は国が建設してくれ、しかも新幹線に並行する在来線を自社の経営から切り離すことが可能という、新幹線建設に前向きな体制を取り得るJR四国の環境(財政的措置)は整えられつつあると言えよう。

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 計画段階で足踏み状態を40年以上も強いられてきた基本計画路線の関係者が、整備新幹線5路線の全ルート確定を機に“整備”への格上げを目指して国への働きかけを強めている四国のケースついて先に触れてきた。一方、秋田・山形ミニ新幹線が走る山形県には、福島から山形・秋田へ向かう奥羽新幹線と富山・新潟・山形・秋田・青森へと日本海沿いを走る羽越新幹線の2つの基本計画路線があり、県や経済団体では「奥羽・羽越新幹線整備実現同盟」を2016年5月に発足させ、今こそ関係6県が力を合わせて山形創生への幹ともなるミニ新幹線のフル規格化に取り組もうとの機運を高めている。
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                       〈 「奥羽・羽越新幹線整備実現同盟シンポジウム
 山陰方面では、建設途上の北陸新幹線延伸ルートの一つに基本計画路線(山陰新幹線)のルートと重なる“舞鶴ルート”が一時期候補に挙げられたことから山陰新幹線建設への期待が高まり、政府が進める“地方創生”政策の中で当時の地方創生相だった石破茂氏を会長に「山陰新幹線を実現する国会議員の会」の発足が図られた。しかしながら、舞鶴ルートは結局採用には至らなかったが、鳥取市の交通政策課は意気消沈せずに県や京都府などと連携して「山陰新幹線」の誘致に強い意気込みを見せる。九州大分県では、2016年10月に「東九州新幹線整備推進期成会」を設立し、福岡、大分、宮崎、鹿児島の4県は基本計画路線「東九州新幹線」の“整備”格上げに国が目を向けてくれることに期待を強める。同4県がまとめた調査によれば、路線整備の費用は総額2兆6000億円と膨大だが、北九州~大分間は現行の1時間23分から31分へ、北九州~宮崎間は同4時間32分から1時間19分へと大幅に移動時間が改善され、九州全体に及ぼすとされる経済効果も大きい(およそ6兆円)とされている。
 こうした基本計画路線の整備を求める日本各地における動き(署名、陳情、決起集会など)は、45年近くも“整備”が足止め状態に置かれてきた基本計画路線の整備に向けさらに勢いをもたらすことであろう。

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 1973年に策定された新幹線の基本計画11路線に対しては、整備計画への格上げを目指して各地で活発な動きが展開(中央新幹線は除く)を見せてはいるが、この動きが直ちに格上げ実現へ結び付く訳ではない。すなわち、そこには“財源”という大きな障壁が立ちはだかるのである。
 このほど(2017.3)敦賀から新大阪までの延伸ルートが正式決定した北陸新幹線(東京~新大阪間)においては、2031年度の工事着工とされる同延伸区間の建設費は今のところ約2兆1000億円と見積もられており、その財源の確保には未だに目途が立っていないのが実情という。また、整備新幹線5ルートが出揃ったとはいえ、北海道、北陸、九州(長崎ルート)の新幹線3路線が工事中であり、国土交通省の見積もりによれば完成までには今後およそ3兆円を優に超える建設費がかかるとされている。一方で、整備新幹線の整備に国から毎年度計上される予算額は700億円台に止まるが、国土交通省鉄道局では2017年度に計上された2億8000万円の新幹線整備調査費を“次の整備新幹線実現に向けた第一歩”と捉えながらも、当面は建設工事が行われている線区(北陸新幹線金沢~敦賀間と九州新幹線長崎ルート武雄温泉~長崎間)の完成と未着工線区(北陸新幹線敦賀~新大阪間)の着工に対するための予算の創出に精一杯であるとして、今は基本計画10路線の“整備”に期待を寄せる関連・関係者の“熱意”に応える環境にはない状況にあるという。こうした情勢を顧みても、基本計画10路線の整備に対しては先ず“予算の創出・確保”が先決問題として存在することに異論はないであろう。
 整備新幹線は、国や地方自治体からの税金、運営主体のJRが建設主体の鉄道・運輸機構に支払う線路・設備の使用料、借入金などの巨額な建設費が投入されて造られる、政府主導の公共事業である。そのため整備新幹線の取り扱いについては、総務・財務・国土交通の3省からなる「整備新幹線問題検討会議」や「整備新幹線問題調整会議」において検討が進められてきた。その会議の中で、整備新幹線を着工するにあたっての基本的5条件(後述)が示され、各路線の建設に係わる諸課題に対する検討を踏まえ5条件が確実に満たされていることが確認された上で、着工するものとされた。この方針を受け、国において2011年12月に「整備新幹線の取り扱いについて」(政府・与党確認事項)が決定されている。以下に、その整備新幹線を着工するにあたっての基本的5条件を示します。 ①安定的な財源見通しの確保…整備新幹線を確実に完成させ共用するため、整備期間を通じた安定的な財源見通しを確保するものとする。 ②収支採算性…整備後の新幹線の経営が安定的かつ継続的に行えるよう、営業主体の収支採算性を確保するものとする。 ③投資効果…公的な資金による社会資本の整備であることから、時間短縮効果等の投資効果を有するものであること。 ④営業主体てしてのJRの同意…整備後の新幹線を経営するか否かは、営業主体の経営判断によるものであることから、あらかじめ営業主体としてのJRの同意を得るものとする。 ⑤並行在来線の経営分離についての沿線自治体の同意…整備後の新幹線と並行在来線をともに経営することは、営業主体であるJRにとって過重な負担となる場合がある。この場合には、並行在来線をJRの経営から分離せざるを得ないが、その経営分離について沿線自治体の同意を得るものとする…以上の通りである。
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                          青函トンネル付近を行く北海道新幹線
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 整備新幹線の建設・運営は現在、国土交通大臣が運営主体(JR)を指命し、建設主体の鉄道・運輸機構が建設してJRへ譲渡(貸し付ける)する仕組みが採られている。今、整備新幹線5路線の後釜を追う基本計画10路線においては、次の整備路線としての計画に名乗りを挙げるべく地方都市の間で国への働きかけが急を告げている。
 されど一方で、九州地方に例を取れば、すでに福岡県から鹿児島県に至る南北にわたっては整備新幹線の九州新幹線鹿児島ルートが走っているが、基本計画路線の一つである「東九州新幹線」(福岡~大分~宮崎~鹿児島間)について大分県では、博多や小倉と大分の間には在来線特急が頻繁に運行されてはいるが、大分市は東九州新幹線と四国新幹線との両睨みで“整備”への働きかけに動いている。また宮崎県の場合には、本来なら福岡へは新幹線の建設を最も望むべき県のはすではあるが、すでに福岡との間の往来には既存航空路線が最短ルートとして存在しているほどに、既存九州新幹線の鹿児島中央からの在来線(JR日豊本線)を高速化すれば十分とする声さえもある。同東九州新幹線の整備には総額2兆6000億円もの巨費が必要視されてはいるが、今でさえ日本各地の県財政が逼迫している状況にある中で同新幹線の整備を目指すには、地元負担を緩和すべきスキームが求められよう。しかも、さらに新幹線が開業するとなれば、前述のように並行在来線(JR日豊本線)の経営がJRから切り離されることで地元自治体の運営引き受けが加わり、その負担までもが地方財政に重くのしかかる。
 新幹線基本計画路線のうち、次期整備計画への格上げを目指す各地の沿線自治体の動きは、迫り来る北海道や北陸、九州(長崎ルート)の整備新幹線3ルートの行方(開業)が大詰めを迎えつつあるある中で、さらに活発化が示されていくであろう。ただ、基本計画路線が整備(建設)されるにしても、それは恐らく30年以上先の話になるのではとも思われるが、その遠くもある将来を巡りこれからも各地で新幹線の“整備”へ向け熱い展開が繰り広げられていくであろうことを期待したい。 (終)

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