JRの需要拡大に応えるか ~ インバウンド

 インバウンド ~
画像 日本の総人口について総務省は、2015(平成27)年の国勢調査による確定結果を発表(2016(平成28).10)した中で前回2010(平成22)年の調査から96万2607人減少(0.8%)したとして1920(大正9)年の調査開始以来初めて総人口が減少に転じたことを公表し、前回(2010年調査)に続いて2回連続の人口減少となったことで日本が本格的な人口減少時代に入ったことを鮮明にした。また、国立社会保障・人口問題研究所が公表(2017(平成29).4.10)した将来推計人口によると、50年後の日本の総人口は合計特殊出生率(現時点・1.45)の改善(向上)を織り込んでも8808万人に減り、総人口に占める65歳以上の割合も26.6%から38.4%に上昇するとしており、日本が深刻な人口減少・超高齢化社会に直面していく現実は今後も変わることはないとしている。
画像 〈 “インバウンドの今とその先へをテーマに開催されたインバウンド市場開拓を目指した総合展 東京オリンピックサイト 〉 
 この総人口が減少しつつある中で、将来の公共交通ネットワークを維持していく上からも需要拡大の施策は避けては通れない課題となっている。そうした中で近年、さらなる増加が見込まれて今後相対的に訪日外国人(インバウンド)の公共交通機関利用割合は確実に高まるとして、人口の減少で縮小しつつある鉄道等の利用者需要を埋め合わせる施策として、インバウンドの公共交通における需要拡大化策は将来的にも益々必要な存在になってくるであろう。

 インバウンド ~
 日本を訪れる外国人旅行者は年々増加しており、政府も地方創生・地域活性化に向け官民一体となって訪日外国人旅行者の誘致に取り組み、昨年(2016)には2403万人と過去最高を記録しており、政府は2020(平成32)年のインバウンド4000万人誘致を目標に掲げている。その後もインバウンドの増加は順調に推移し、2017年5月には最速のスピードで1000万人に達しており、昨年(2016)を超えるインバウンドの増加が見込まれている。今後も、ラグビーワールドカップ(2019(平成)31)年)や東京オリンピック・パラリンピック(2020(平成32)年)およびワールドマスターズゲーム(2021(平成33)年)などビッグイベントの開催を控え訪日外国人数はさらに増加に向かうものと期待がかかる。
 このインバウンドに対する増幅への今後の取り組みは、日本の人口が減少を続けていく途上でさまざまな消費分野の縮小が余儀なくされていくであろう中で、公共交通機関にとっては近年にない数少ない成長分野であり、市場の拡大が望める分野でもある。ここで、毎年の如く増え続けている訪日外国人旅行者の需要拡大への取り組みを、経営立て直しの最中にあるJR北海道に見てみる。
 JR北海道の2017年度の事業計画においては、2013(平成25)年に発生させた一連の事故・事象に対し国土交通大臣から受けた輸送の安全に関する「改善・監督命令」(2014(平成26).1.24)における「措置を講ずるための計画」及び「5年間の計画」を推進中であり、また、昨年発表(2016.11)したJR北海道単独では路線維持が困難な線区について、地域の交通体系を如何に持続的に維持していくかなどについて地域との協議に向けた取り組みを推進している最中にもある。併せて、開業2年目を迎えた道内初の北海道新幹線の開業効果を道の四周に波及させる経営強化の基盤づくりにも取り組んでいる。
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 インバウンド ~
 そうした事業運営に取り組む中にあってJR北海道の鉄道事業では、営業全14路線(新幹線を含む約2500km余り)が赤字という厳しい経営実態にあり、しかも人口の減少が他の地域よりも早く進んでいる環境に鑑みれば、何としても輸送需要の拡大・確保は喫緊の課題である。そのような状況において、先にも触れた日本の人口が減少する中で近年急速に増え続けている訪日外国人旅行者の需要は公共交通にとって減少する日本人需要を埋め合わせるという点で必要かつ重要な要素であり、外国人の受け入れ体制(駅施設等の案内表示・放送等の多言語化、無料Wi‐Fiなど通信環境整備、鉄道・観光情報アプリの配信、駅ナンバリングの導入、外国語に関する駅係員などの接客教育)の積極的な整備が欠かせない。
 2016年の日本への訪日外国人旅行者数は、政府が2020年の訪日外国人4000万人を目標値に掲げて展開しているインバウンド戦略(東南アジア諸国に対する訪日査証発給緩和、ロシア・中国等からの航空機発着制限緩和、LCCを含め国際直行便の新規就航・増便など)の追い風もあって、過去最高の2403万人を記録している。北海道においても、2013(平成25)年度以降から訪日外国人旅行者は急激な伸び率を示して2015(平成27)年度には過去最高の208万人を記録し、こうしたインバウンドの大幅な増加は季節的な波動を伴いやすい北海道の観光や経済に好影響をもたらしている。2016年度も、北海道新幹線開業に伴う新たな需要の掘り起こしや新千歳空港国際線発着枠が拡大されるなどの後ろ楯もあって、年間インバウンド250万人突破も視野に捉える時期が見えてきているという。同時に、政府が掲げる訪日外国人旅行者数4000万人(2020年)の目標値を踏まえ北海道も、2020年のインバウンド500万人誘致を目標として位置付けた。


 インバウンド ~
 道内のインバウンド需要の輸送を直接担うJR北海道は例年、東南アジア方面でインバウンド誘致商品のセールス宣伝活動を積極的に実施しており、北海道を人気の高い旅行先としての拠点づくりに取り組んでいる。海外現地の旅行会社などからは、北海道は知床世界遺産をはじめ自然環境や雄大な景観、冬季の良質な積雪や神秘的なダイヤモンドダストの自然現象、雪まつりに代表される多彩な冬のイベントのほか、食や花、温泉等四季折々の変化に富む観光資源の提供に優れていることから、観光客誘致への商品セールスポイントが明確で提供しやすいとの高い評価が得られている。また、近年のLCCの新規就航が続く下で、北海道もまた東京や関西方面同様手軽に行ける旅行先となりつつあり、北海道関連の旅行商品販売に追い風ともなっていると言う。
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                     インバウンドの増大に貢献するLCCピーチアビエーション) 〉
 こうした中で訪日外国人旅行者にとって北海道は、日本の人気観光地アンケートでも東京や京都、富士山などに並び上位に位置し、アジア諸国にとって人気の的ともなっている。しかしながらその北海道では、先に触れたごとく2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催などを目途に現時点の約2.5倍となる来道外国人旅行者500万人を目標値に見据えているが、2017年4月時点で鉄道利用をはじめとする移動で東北を訪れる外国人旅行者は全体の0.6%に過ぎず、関東から入国し東北へ移動するのは1%、北海道へは0.4%という低調な結果をインバウンドは示している。2016年の東北6県の外国人宿泊数が日本全体の1%に過ぎない中で、日本人宿泊数の同シェアは9%であることからあながち東北以北が観光地としてのポテンシャルが低いという訳ではなく、外国人に人気が薄いというのが実情のようである。もっとも、東日本大震災(2011.3)による風評(後遺症)がないでもはないが、一方で海外の旅行会社などからは東北や北海道に関し、“情報が少ない”“点在する観光地が多く効率的な旅行が望めない”“観光地が駅などから遠く二次交通も貧弱”などといった二の足を踏ませるような声も出ているという。
 JR北海道の2020年インバウンド誘致500万人目標達成には、訪日外国人旅行者にとってゴールデンルートである東京や関西方面に次ぐルートとして“北”への誘致を勧める新ルートの創出・開発が強く求められる。その取り組みの方向性として、東北6県すべてに新幹線ネットワーク(東北・山形・秋田新幹線)を展開しているJR東日本との新幹線ネットワークを活用した東北地方や北海道方面への相互流動の動きを高めた新たな観光ルートの開発と啓蒙(定着化)が必要・不可欠であろう。そして、インバウンドの観光進路を人気最強の東京から“北”へ向けさせるには、新幹線やキャンペーンを通して北海道と東北エリアとの連携を促進し、北海道への旅行意欲の喚起と誘客促進図っているJR東日本との協力が欠かせない。
画像 青函トンネルを抜け本州に渡る開業2年目の北海道新幹線
 インバウンド ~
 あまねく訪日外国人旅行者にとっては、東京~富士山~京都・大阪は日本の観光ゴールデンルートとして人気絶大ではあるが、一方で関心度は高いものの東北~北海道方面への知名度は薄いのが現状といえよう。
 そうした中で、昨年(2016)3月に道内初の北海道新幹線の開業を見たことにより新幹線ネットワークが東京~東北~北海道へと拡大され、同時に仙台空港の民営化(2016.7)もあって国内航空路網の拡充が図られており、二次交通網の強化と相俟った鉄道と空路を組み合わせた“立体観光”の構築による“北”へのインバウンド誘致強化がこれからの課題でもある。
 その空路では、日本企業によるLCC事業(ロー・コスト・キャリア:格安航空)参入(2012(平成24)年)から今年(2017)の3月で5年が経過したが、今では4社(2017.3現…ジェットスターJ、ピーチ、バニラエアー、春秋航空日本)が就航しており、国内航空路線旅客数の1割(当初の約3.5倍相当の2016年度930万人)を輸送する規模にまで成長している。一方、国際路線においても豪州、マレーシア、シンガポール、フィリピン、韓国、中国、香港など多数の諸国からLCCが日本に就航しており、格安の効果(LCC効果)は遺憾なく発揮されてインバウンドの急増に大きく貢献している。
 とかく、大都市中心部の訪日外国人ツアー客を見るにつけ団体で来日している印象を強く受け勝ちだが、実態は団体ツアー参加で訪日している外国人は全体の約2割程度(2016年時点)で減少傾向にあると見られており、多くは個別手配によるいわゆる個人旅行客(FIT)層が全体の7割を超えるなど、旅行形態の多様化が伺える。その訪日外国人の個人旅行客が増えるに従い当然にそのニーズも多様化を示しており、団体ツアーでは叶わなかった地方・地域の訪問やテーマ等に沿った訪問といった旅行目的においても多様化が進んでいる。こうした訪日外国人の旅行形態の広がりにより、移動に際し大都市圏の交通機関のみならず、地方・地域を含めた公共交通機関の訪日外国人旅行者の利用機会が一層増すものと見られ、その対応・対策がますます求められていくことになるだろう。
画像 また、先に触れた「立体観光」の具体化に向け航空会社と連携した旅行商品の設定も拡大基調にあり、北海道~東北~東京という周遊ルートに例を採ればその全ての行程を鉄道での移動となれば時間がかかりすぎてコンパクトを旨とする海外旅行では敬遠の可能性が無きにしもあらず、国内航空や新幹線などを組み合わせた高い利便性の追求とともに、二次交通網の整備・充実などの受入体制とも連携した施策がこれからの「立体観光」には求められる。すなわち、広大な地域なるが故の北海道におけるこれからのインバウンド誘致には、航空と組み合わせた「立体観光」の創出がキーポイントとなるだろう。
 他の地域より人口減少の進みが早い北海道、その広大な地の鉄道輸送網を担うJR北海道にとってインバウンドは、数少ない需要拡大への大切な市場である。勿論、インバウンド戦略の積極展開は、道全体(JR北海道および沿線地域)にとってもさらなる観光振興に途を拓くことになり、北海道にとって訪日外国人の誘致は今後の伸展が期待される事業分野である。 (終)

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