先細る地方鉄路 ・ JR北海道

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先細る地方鉄路 ・ JR北海道 ~


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画像2016年暮れに、北海道で老舗の地方路線がまた一つ消えて行った。日本海に沿って走り、土砂崩れや雪崩などの自然災害多発路線で、将来にわたる抜本的防災対策に巨費が必要とされ、しかも2、3年先には並行して高規格道路の開通が控える中で、39人と道内で最も少ない輸送密度や営業係数が4554とずば抜けて高く、営業赤字を年間約1億6000万円も抱えて鉄道としての特性を活かせずに、1世紀に迫る95年の歴史を走り続けたJR北海道の留萌本線末端部の留萌~増毛間(16.7km)が地方・地域の衰退化に身を委ねたまま2016年12月5日に廃止された。JR北海道にとってこの廃止は、2014年5月に廃止された江差線木古内~江差間(42.1km・路線バス化)以来のことである。さらには、夕張市から鉄道路線廃止の申し出があった石勝線新夕張~夕張間(16.1kmの支線)の廃止が、時期は未定ながらもすでに決定している。
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                           廃止前日の留萌線を行く 2016.12.4
 政府は経済対策に“地方創生”を掲げ、その切り札として地方・地域の活性化に向け整備新幹線(北海道、北陸、九州(西ルート)の各新幹線)の建設加速を推進している。しかし、その整備新幹線建設加速の意向を受け地域の活性化に期待を膨らませる地方の末端部で、日常生活に欠かせない住民の足である地方路線(ローカル鉄道線)の存続が沿線人口の減少や道路整備に伴うクルマ社会への移行、沿線の過疎化、巨額な災害復旧費負担などで廃線をも余儀なくされているケースが目立つ昨今ではある。
 今、国鉄分割・民営化から30年が経とうとしているとき、全国6つの地方に振り分けられ委ねられた旧国鉄の鉄道路線網は、人口の減少とクルマ社会への依存が大きく影を落としてそのローカル部分で多くが経営存廃の岐路に立たされている。旧国鉄から鉄路を承継した6つの旅客鉄道会社のうち、“3島会社”と呼ばれる北海道、九州、四国のJR会社の中でもJR北海道は、現在、危機的な経営状況の下に置かれている。1987年の国鉄分割・民営化でJR北海道は、広大な面積(九州のほぼ2倍)の自然環境が過酷な大地および人口減少が全国ペースを10年も上回る、人口密度(2016.9現在64.5人/㎢)も低い北海道の鉄路を引き継いだが、特に近年は札幌都市圏周辺への人口集中(全道人口4割相当の約235万人)が著しく、これが北海道の各方面に空疎化をもたらしている。ちなみに、北海道で2番目の人口規模を持つ旭川市でさえも、札幌市人口(190万人超)の2割にも及ばない。
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                              北海道札幌市俯瞰
 もともとJR3島会社は、本業の鉄道の経営が赤字であることは分割・民営化の当初から国には分かっていた。そのため国は、赤字経営の穴埋めに充てるため経営安定基金を設け、その運用益を活用するスキームを採った。JR北海道には、3社のうちで最多の6822億円の基金が設けられたが、その後に続く金利の大幅な低迷で現在の運用益はピーク時の半分を大きく割り込んで赤字穴埋めの機能は減退しており、鉄道運営は赤字続きの状況にある。一方で、JR北海道と同じく経営安定基金の活用が収益基盤となっていたJR九州は、大都市が比較的多く、産業や人口密度も高い九州の鉄路を承継し、不動産、駅ビル、オフィスビル、ホテル、マンションなどの多角事業化を積極的に進め、それを足掛かりに昨年(2016)10月に株式上場(完全民営化)にこぎ着けている。それとは対照的に、現在のJR北海道は赤字経営の中で抜本的な収支改善に迫られており、その対処に向け同社は赤字路線廃止など道内の大幅な鉄道路線網の見直しに踏み切る構えを見せている会社情勢にある。

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画像北海道最大の200万都市・札幌周辺を含みJR北海道の鉄道(新幹線を含む全14路線・2568.7km)は全路線が赤字で、2015年度の鉄道運輸収支は447億円の損失を計上して6年連続の悪化を示している。JR北海道がそうした経営状況にある中で北海道は、去年の8月下旬から9月上旬にかけ台風の直撃に連続して見舞われ、JR北海道は橋梁や路盤の流失など会社発足以来最大の自然災害を被り、複数の幹線路線の長期寸断(3カ月以上)や運休に伴う減収および災害復旧費などで被害総額が100億円に及び、同社は2016年度も約440億円超の赤字が見込まれている。
 JRの前身・国鉄は、“交通革命の年”ともいわれた東海道新幹線が開業した1964年から図らずも経営が赤字に転落し、以来再三再四の再建計画実施にもかかわらず一層の厳しさが募る過程で国鉄が実施した赤字路線見直しの中で路線廃止の目安としたのが、“1日1km当たりの平均利用者数が4000人未満の路線”であった。その同じ利用規模の路線が現在のJR北海道には、全14路線(新幹線を含む)2568.7kmのうちに約7割も存在する。公表されたJR北海道の2015年度営業収支は352億円の赤字で、前年度(308億円の赤字)に続き2期連続で過去最悪の赤字額を示している。大都市圏・札幌近郊を含め道内全14路線が赤字の中で、その約半分が路線維持可否の危機に直面しているのがJR北海道の鉄路の現状ではある。そうした経営の危機的状況に鑑みJR北海道は、抜本的な収支改善に向け赤字路線の廃止などを含めた大幅な道内鉄道路線網の見直しに踏み切る構えを明示していた。

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JR北海道は2016年11月18日、道内の全鉄道路線営業距離の約半分に相当する10路線・13区間(1237.2km)について、最早自社単独では将来にわたり路線を維持していくのは困難であるとして、大幅に見直しを行うことを正式発表した。この背後には、沿線人口の減少や道路整備に伴う自動車利用への転移で鉄道利用者の減少がある。これはJR北海道に限ったことではなく、全国の地方路線等も同様な利用環境の苦境に喘ぐ。
 民間企業の事業として担えるレベルを超えているとして、JR北海道が将来にわたり路線維持が困難として見直しの対象とした区間は、2015年度の1日1km当たりの平均利用者数が2000人未満のJR北海道が単独では維持困難とする次に示す13区間である。
… ①札沼線・北海道医療大学~新十津川間47.6km ②根室本線・富良野~新得間81.7km ③留萌本線・深川~留萌間50.1km ④宗谷本線・名寄~稚内間183.2km ⑤根室本線・釧路~根室間135.4km ⑥根室本線・滝川~富良野間54.6km ⑦室蘭本線・沼ノ端~岩見沢間67.0km ⑧釧網本線・東釧路~網走間166.2km ⑨日高本線・苫小牧~鵡川間30.5km ⑩石北本線・新旭川~網走間234.0km ⑪富良野線・富良野~旭川間54.8km ⑫日高本線・鵡川~様似間116.0km ⑬石勝線・新夕張~夕張間16.1km(夕張市と廃止合意) …の10路線・13区間1237.2kmである。
画像 これらの区間のうち、輸送密度が200人未満で、1列車の平均利用者が10人前後と特に少なく、営業係数も1000を大きく超え、施設・設備(土木構造物等)の老朽化対策(更新)を必要とする札沼線の北海道医療大学~新十津川間、根室本線富良野~新得間、留萌本線深川~留萌間の3区間は、鉄道よりバス等の輸送交通手段が適しているとして、鉄道路線としては廃止を前提とするバス等への転換が地元沿線自治体と協議される。また、輸送密度200人以上2000人未満線区の残り10区間も、営業係数が300~1000のレベルにあり、老朽構造物(橋梁やトンネル等)の更新等も含め持続的に鉄道の安全を維持していく費用の捻出・確保が出来ない線区である。これら10区間については、利用が少ない駅の廃止、列車運行見直しによる経費節減、設備のスリム化、運賃値上げ、路線運営の上下分離方式への移行などを軸に、地元との協議が行われる。JR北海道は、これら協議や話し合いについては2020年春までの合意(結論)を目指すとしている。
 ただ、協議相手の自治体は道内の約3割に相当する56市町村にも及び、しかも大半の自治体は厳しい財政難にあり、合意には難航が予想画像されている。それを見越しJR北海道では、大幅な見直し線区に関して複数の地域に跨がる沿線自治体との話し合いを円滑に進めるため、協議会等の立ち上げを考慮している。現段階の中で、見直しに関してすでに協議が始められている線区には、地元の夕張市側から鉄道路線廃止の容認が打ち出され、バス等他の交通手段への方向性が検討されている石勝線新夕張~夕張間(16.1km)と、2015年1月以来線路災害からバス代行輸送が実施され、同年12月から線区の持続的維持について沿線自治体協議会で検討が続けられている日高本線鵡川~様似間(116.0km)の2線区がある。

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輸送事業者として鉄道経営のベースとして欠かせないのが、沿線人口の存在であるのは自明の理である。1987年の国鉄分割・民営化で、面積が九州の約2倍もある北海道の鉄路を引き継いだJR北海道だが、広大さゆえに居住地域が散在して人口密度も疎らで、厳しい気候風土が車両や線路等諸設備の傷みを早める、厳しい経営環境にある。新生JRが誕生して30年、全国の10年先をいく人口減少と200万都市・札幌への一極集中が進む中でJR北海道では、道内にライバルの私鉄はないものの、高速道路網が約6.5倍も伸びて鉄道離れが加速し、鉄道利用者は大幅に減少している。
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                         北海道の厳寒の地を行く列車JR北海道
 当然に、膨らむ営業赤字に対し節減が求められ、本来真っ先に図られるべき安全への投資が疎んじられる状況を呈するに至った。その付けが、石勝線特急列車脱線火災事故を発生(2011.5)させ、2013年には連続して事故や不祥事などの事象を招来させてしまった。このためJR北海道は現在、2014年1月に国土交通大臣から事故改善命令・監督命令を受けて安全の再生計画を履行中で、将来にわたり持続可能な経営体質の実現に向け事業範囲の見直しなどの取り組みに邁進している。画像2017年の年頭所感の中で島田修JR北海道社長は、①「安全の再生」 ②「北海道新幹線開業効果の維持・拡大」 ③「持続可能な経営基盤の再構築」の3つを2017年の取り組みの柱に据えている。①については、「事業改善・監督命令による措置を講ずるための計画」および「安全投資と修繕に関する5年間の計画」を着実に推進するとしている。②については、JR東日本をはじめ道内各自治体や関係機関との連携強化により観光周遊ルートの構築、関連商品の造成、プロモーションの実施などを通して、開業を一過性のブームで終わらせることのないよう努めるとしている。③については、昨年(2016)11月18日に発表した「当社単独では維持することが困難な線区について」を踏まえ、沿線自治体や道、国などの参画を得て線区毎の現状を説明し、見直しへの理解に努めていくとしている。同時に、見直し線区地域の住民や沿線自治体の理解と参画により、将来にわたり鉄道輸送サービスを持続していく仕組み作りについて相談を開始していくとしている。

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国土交通省によると、全国の中小や三セクの“地域鉄道”96社のうち、2015年度決算で71社(約74%)が赤字で、輸送人員も四半世紀前の1992年度ピーク時に比べ約2割減少している。そして、2000年度以降には、全国でJR線も含め39路線・771.1kmの鉄路が廃止に至っている。こうした路線縮小には、人口の減少とクルマ社会への依存(クルマへの移行)が主体的な要因としい働いているのは論を待たない。総務省は昨年(2016)10月、2015年の国勢調査で日本の総人口(含・外国人)は前回調査(2010)より96万2607人(0.8%)減って1億2709万4745人(2015.10.1現)となり、1920(大正9年)年の調査開始以来初めて減少に転じて日本が本格的な“人口減少時代”に入ったことが鮮明になったと発表した。いよいよ人口減少時代に入った日本、先細る沿線人口が頼りの地方鉄路の行方は…。
画像 広島県と島根県を結ぶJR西日本の「三江線」(108.1km)が、人口減少と沿線の過疎化の中で2018年の春を目処に、当初目的の山陽・山陰縦貫路線としての役目を果たすことなく廃止になる。また、昨年(2016)12月に留萌本線の一部区間・留萌~増毛間が廃止されたが、残る同路線の深川~留萌間(50.1km)についても、札沼線の北海道医療大学~新十津川間および根室本線の富良野~新得間とともに維持が困難な路線として、JR北海道は廃止の意向を示している。
 最近、JR北海道において顕在化している維持困難な地方鉄道路線の見直しは、人口減少が進む前途における鉄道路線存続の危機感を物語っていると言えまいか。今後もJR北海道には、鉄道がその特性を遺憾なく発揮できる環境の創造に徹底したコスト削減など最大限の自助努力が求められよう。 (終)

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