北陸新幹線の延伸案に因む ・ ・ ・

 北陸新幹線の延伸案に因む ・ ・ ・
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現在、工事実施計画認可の下で、整備新幹線の建設工事が北海道新幹線の新函館北斗~札幌間、北陸新幹線の金沢~敦賀間、九州新幹線の武雄温泉~長崎間の延長約393kmの区間で進められている。整備新幹線の営業区間の延長は約929kmであり、既設新幹線と合わせた新幹線の総営業区間は約2765kmに及んでいる。

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2015(平成27)年3月14日に金沢まで開業した北陸新幹線(全国新幹線鉄道整備法(1970年成立)に基づき1973(昭和48)年の整備計画で定められた東京都~大阪市を結ぶ整備新幹線)においては現在、延伸工事中の金沢~敦賀間(約114km)の2022年度末開業予定を控えている中で、敦賀から先の大阪への延伸建設ルートの選定を巡り経済効果享受への期待などから沿線自治体間での綱引きが激しさを増している。
 その敦賀~大阪間(終着は新大阪駅)の延伸については、2016(平成28)年4月27日に敦賀~新大阪間の延伸に関して議論を展開している与党の検討委員会(与党整備新幹線建設推進プロジェクトチーム北陸新幹線敦賀・大阪間整備検討委員会)は、敦賀~京都間延伸に対する検討対象の最終ルートとして3つのルート案を明らかにした。
 それは、敦賀から米原を経て東海道新幹線につながる「米原ルート」と敦賀から小浜へ延伸して京都に向かう「小浜・京都ルート」および敦賀~小浜~舞鶴へ延伸して京都に向かう「舞鶴ルート」の3つである。なお、京都~新大阪間については、東海道新幹線の北側を回るルートか南側を回るルートかが調査対象として検討される。
画像 国土交通省は2016年11月11日、北陸新幹線の敦賀~京都間延伸ルート3案の建設費用などの試算について与党の検討委員会で示した。その試算によるルート3案の建設事業費等は、「米原ルート」が約5900億円(工期10年)で所要時間金沢~新大阪間約1時間41分、「小浜・京都ルート」が約2兆700億円(同15年)で同約1時間19分、「舞鶴ルート」が約2兆5000億円(同15年)で同約1時間31分である。また、ルート3案の費用対効果を示す指数(1.0を超えると経済効果は投資を上回る)においては、「米原ルート」(滋賀県)が2.2、「小浜・京都ルート」(福井県・京都府)が1.1、「舞鶴ルート」(福井県・京都府)が0.7で、舞鶴ルートだけが経済効果と投資(事業費用)が均衡する“1.0”を下回り、投資に見合わないことが明らかになっている。これにより、整備新幹線を着工するにあたり政府・与党が決めた基本的5条件(後述)の一つである“投資効果”に照らせば、「舞鶴ルート」はルート3案から外れることになる。しかしながら、与党の検討委員会は、舞鶴ルートをルート3案からは外さずに引き続きルートの候補として検討していくことを明言している。この背景には、安倍首相が推し進める地域活性化策の一つに掲げる「地方創生回廊」に整備新幹線の整備促進が挙げられている思惑が見え隠れする。
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                      長野新幹線北陸新幹線出発式長野駅 1997.10.1
 ちなみに政府・与党の整備新幹線を建設・着工するにあたっての基本的5条件を示せば、次の如くである。①安定的な財源見通しの確保…整備新幹線を確実に完成させ供用するため、整備期間を通じた安定的な財源見通しを確保するものとする。②収支採算性…整備後の新幹線の経営が安定的かつ継続的に行われるよう、営業主体の収支採算性を確保するものとする。③投資効果…公的な資金による社会資本の整備であることから、時間短縮効果等の投資効果を有するものであること。④営業主体としてのJRの同意…整備後の新幹線を経営するか否かは、営業主体の経営判断によるものであることから、あらかじめ営業主体としてのJRの同意を得るものとする。⑤並行在来線の経営分離についての沿線自治体の同意…整備後の新幹線と並行在来線をともに経営することは、営業主体であるJRにとって過重な負担となる場合がある。この場合には、並行在来線をJRの経営から分離せざるを得ないが、その経営分離について沿線自治体の同意を得るものとする。(於・2009(平成21)年12月24日開催の整備新幹線問題検討会議)
 すなわち、整備新幹線の建設着工にあたっては、前記の基本的5条件が確実に満たされていることが確認された上で、工事着手となる。

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北陸新幹線は、全国新幹線鉄道整備法(1970(昭和45)年成立)の施行以前に開業した東海道新幹線およびすでに工事中であった山陽・東北・上越の各新幹線に続く路線として、1973(昭和48)年に同整備法に基づき整備計画された5路線の一つである。その北陸新幹線は、1997(平成9)年10月に鉄道公団(日本鉄道建設公団)により高崎~長野間(117.4km)が通称“長野新幹線”(東京~長野)として部分開業し、2015(平成27)年3月には鉄道・運輸機構(鉄道建設・運輸施設整備支援機構)の手により長野~金沢間(228.1km)が延伸開業した。現在は、同機構により金沢~敦賀間で延伸工事が実施されている。
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                      金沢駅を出発する北陸本線開業一番列車 2015.3.14                      
 北陸新幹線の営業主体であるJR西日本の2016年度事業計画概要によれば、金沢~敦賀間の延伸工事において武生トンネル(2470㍍)、脇本トンネル(1450㍍)、新北陸トンネル(19680㍍)等のトンネル掘削工事と手取川橋梁(555㍍)および九頭竜川橋梁(413㍍)等の建設工事が続行されるとともに、昨年度に引き続き用地取得および調査・設計と建設工事の発注が進められる。ちなみに2016(平成28)年4月現在、工事実施計画の認可に基づき建設中の整備新幹線は北海道新幹線・新函館北斗~札幌間約212km、北陸新幹線・金沢~敦賀間約114km、九州新幹線・武雄温泉~長崎間約67kmの3路線3区間計約393kmであり、すでに営業運転に供されている整備新幹線の4路線延長約929kmと既設新幹線(東海道・山陽・東北(東京~盛岡間)・上越の各新幹線)とを合わせた全国の新幹線営業区間は延べ約2765kmである。

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2022年度末までに金沢から福井県の敦賀まで延伸開業予定の北陸新幹線は、その後に敦賀から先へ延伸されて終着地の大阪市(新大阪)を目指すが、現在その延伸ルートとして先に述べた米原、小浜・京都、舞鶴の3つのルート案が最終候補として与党の検討委員会で検討の最中にある。
画像                             福井県小浜市
 それら延伸工事の着工には、営業主体のJRの同意(着工5条件)を必要とする。北陸新幹線の営業主体であるJR西日本は、延伸ルートとして建設費用が2兆円を超えるものの所要時間が約1時間19分と3ルートのうちで一番短い「小浜・京都ルート」を強く推している。ところが、3ルートの中で最も建設費用が少なくしかも費用対効果が一番高いとされる「米原ルート」をJR西日本は望まずに、拒否感さえ示している。その背後には、JR西日本の営業体制堅持への確執が窺える。すなわち、JR西日本にとって「米原ルート」は、建設費用は3ルートのうちで一番安い(約5900億円)ものの、米原から先は名だたる過密ダイヤの東海道新幹線を走行することになるため運行上で制約を受けるのは必至で、しかも東海道新幹線はJR東海の管轄下のうえに運行保安システムも異なるなど、同社の営業体制が複雑化しかねないとする。ただ、国からすれば「米原ルート」は、延伸距離が短く建設コストが他と比べ4分の1と低く、工期も短くて済むことから早期の開業が期待でき、しかも費用対効果が高く得られる経済効果も大きいことから、望むべきこの上ない延伸ルートであろう。

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画像延伸3ルートの経済効果を試算し、他のルートに比べ便益に富むとして「米原ルート」を推すのは滋賀県だ。すなわち、時間短縮効果や短い延伸ルート建設期間などの換算で便益性が建設費用を上回る(費用対効果が高い)として滋賀県は、“国民へ新幹線の効用が発揮できるのは米原ルート”であるとして直に国土交通相に訴えるほどに、同ルート選定に向け独自の陳情を展開している。
 一方、「舞鶴ルート」の拠点である舞鶴市を抱える京都府は、同府の北部に位置する舞鶴市は経済の中枢部である南部の京都市などに比べ経済格差が大きく、そのために京都府は北陸新幹線の舞鶴延伸を北部地域振興の起爆剤になると見ている。検討委員会においても、「舞鶴ルート」を推す議員らからは舞鶴が起点の“山陰新幹線”が実現すれば経済効果はもっと大きくなるとの主張も出ている。ただ、「小浜・京都ルート」に比べ、延伸ルートが遠回りになるぶん建設費用がネックにある。しかし、建設費用が嵩むとして「舞鶴ルート」がダメになると“山陰に新幹線は来ない”と、鳥取県を地盤とする石破茂前地方創生相は今年(2016)10月の舞鶴市内での講演で訴えている。また、「山陰新幹線を実現する国会議員の会」の会長でもある石破氏は、今年(2016)7月にも山陰新幹線の整備を目指す決起大会(鳥取市内)の場で、周囲に新幹線がまだないのは山陰と四国のみで地方の公平性の視点が必要と語っている。しかし、現実的に「舞鶴ルート」は金沢から新大阪まで所要時間がかかり、費用対効果も低く、舞鶴へつなぐことのメリットが見えていないという。また国土交通省は、調査中の3ルートに対する建設費用などに関する試算(2016.11.11)を示しはしたものの、高額な建設費用の確保に目処は立っておらず、着工へのハードルは依然として高いままでルート選定の決着は見通せていないという。そうした中で、これらルート3案を選定候補に絞り込んでいた与党の検討委員会では、年内(2016.12.20)の同委員会の会合で1ルートに絞り込む計画としてはいるが、同委員会関係者間の意向や思惑などの絡みもあって難航が予想され、年明け以降にずれ込む公算が大きいと国土交通省では見ているという。

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整備新幹線は、国や沿線自治体が負担する税金に加え、JRから収受する既設新幹線の譲渡収入や整備新幹線の貸付料収入、民間からの借入金や政府の財政投融資などを使って国土交通省所管の鉄道・運輸機構が建設する、政府主導の公共事業である。その北陸新幹線は今、金沢~敦賀間が延伸建設工事の最中にあるが、その事業費が1兆円を超える中で新駅の追加が検討されている。金沢~敦賀間には、すでに5駅(小松・加賀温泉・芦原温泉・福井・南越)が予定されているが、かねてから金沢~小松間で要望の出ていた“白山駅”(石川県白山市)を設置する提案が石川県知事から出され、安倍首相の地域活性化策に整備新幹線の構築が挙げられている中で与党の検討委員会も建設(建設費100億円前後)に向け議論を始めることになった。この新駅建設も含め、国や自治体の税金を投じて作る整備新幹線、その建設加速を進めて地方活性化に必要な地方創生回廊の創出を目論む政府の経済対策には批判も出そうだ。

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画像新幹線の沿線自治体などを通じ地域のPRが熱を帯びるのは、開業の経済効果に期待するからに他ならない。北陸新幹線の延伸でつながった富山県は、新幹線開業(2015.3)による県内の1年間の経済効果を421億円と弾いた。石川県でも、兼六園(金沢市)の開業年度(2015)における入場者は、前年度比1.5倍に膨らんだ。しかし、これまでに新幹線が開業した沿線地域では、開業した年の観光客数などは跳ね上がるものの、2年目以降は鈍る傾向にある。
 先の石川県においても、今年(2016)の1~6月には開業の昨年ほどの勢いは見られない。すでに新幹線の開業を見ている地域では、いずれも最初の年は前年比で観光客などの来訪は伸びたが、2年目からはマイナス傾向になるのが通例だ。
 国によって、全国に新幹線網を張り巡らす整備計画が定められたのは1970年代。当時と異なり半世紀近くを経た今、人口の減少が進む。総務省は、2016年10月26日に2015年国勢調査の結果を発表し、前回の2010年調査よりこの5年間に96万2607人減少(0.8%)して同調査開始(1920(大正9))以来初めて減少に転じ、日本が本格的な人口減少時代に入ったことを明らかにした。整備新幹線の整備には、地方自治体から建設費用の負担を仰がなければならない。これから先の日本は人口の減少が続いていくであろう中で、新幹線建設費用の負担は将来の地方財政の重荷にもなりかねず、経済活性化対策における“地方創生”の切り札ともなっている整備新幹線の整備へ向け果たしてその公算は得られるであろうか…。 (終)

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