JR貨物の近況界隈

━ JR貨物の近況界隈 ━
画像 JR貨物(日本貨物鉄道株式会社:本社東京都渋谷区千駄ヶ谷)は、日本における鉄道貨物輸送の大宗を担っている貨物鉄道会社である。その主体である輸送事業の特質を挙げると、JRグループ7社の中で唯一の貨物鉄道事業者であること、営業キロ約8200kmに及ぶ路線のほとんどの部分でJR旅客会社や第三セクター鉄道会社の線路を有償借用して貨物輸送を行う第二種鉄道事業者であること、2社以上に跨がるJR旅客会社の線区を走行する中長距離の貨物輸送が主であること、 一部(東京~大阪間のM250系電車による貨物列車)を除き機関車牽引の貨物列車が主体で、コンテナ貨車最大26両編成・1300㌧の輸送を行っていることなどである。また、輸送事業以外として、倉庫事業や鉄道用地跡地における分譲マンション・宅地造成事業および貨物駅構内未利用地等を活用した商業施設新規開発事業、損害保険代理事業なども行っている。
 このところの物流業界では、昨年度(2015(平成27))は生産・建設関連物資の動きが低迷した影響から国内の貨物総輸送量がやや減少を示したが、本年度(2016(平成28))もまた物資業界全体の先行き見通しは依然厳しい状況が続くものと思われることから、国内の貨物総輸送量は引き続き微減傾向となることが予想されている。しかし、そうした厳しい国内の輸送環境の中でも、トラックドライバー不足やトラック輸送における労働時間規制強化等に伴うモーダルシフトへの流れが顕在化している貨物輸送の中で、JR貨物は全社を挙げた営業努力の推進で鉄道へのモーダルシフトの流れを確実に取り込んで伸びを示しており、重要な社会インフラとして鉄道貨物輸送に寄せる物流業界の期待はさらに高まるものと思われる。
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                       函館へ向け青函トンネルを抜ける貨物列車JR貨物) 〉
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 先般(2016(平成28).3.26)、北海道初の新幹線(北海道新幹線)が開業したことは衆知の如くである。その北海道と本州の間を結ぶ唯一の鉄道路線となった北海道新幹線においては、今回の開業区間である新青森~新函館北斗間148.8kmの半分以上にわたる青函トンネル(全長53.85kmの海底トンネル)を含むその前後約82kmの区間(新中小国信号場~湯の里知内信号場間)にわたって、新幹線(軌間1435㎜)と在来線(貨物列車・軌間1067㎜)の列車が線路を共用して走行する特殊な運行形態(「三線軌条方式」)が導入されている。ちなみに、新中小国信号場はJR東日本の津軽線(在来線)とJR北海道の北海道新幹線との分岐点(共用走行区間始点)である。湯の里知内信号場はJR北海道の北海道新幹線と在来線(道南いさりび鉄道へ)との分岐点(共用走行区間終点)である。
 青函トンネル開業(1988(昭和63).3)以前のJR貨物においては、本州~北海道間の鉄道貨物輸送は津軽海峡に隔てられて青函連絡船による貨車航送(青森港~函館港間)に拠って行われていたため、気象状況による影響や航送に要する時間的拘束(連絡船への貨車の搬入・搬出や付随する作業および長い航走時間)など青函間で発生する制約から輸送量の確保はままならなかった。その輸送の局面が、1988(昭和63)年3月13日に開業した青函トンネルおよびJR海峡線(中小国~木古内)の開業を機に一変したのである。
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                    かつての青函連絡船による青函間の貨車航送 函館駅 1988.1 〉 
 すなわち、青森~函館間(160.4km)の鉄道貨物輸送が海峡線の開業により“津軽海峡線”と愛称された一本の鉄路(津軽線~海峡線~江差線(現・第三セクター「道南いさりび鉄道」)~函館本線)で結ばれることになり、青函間の輸送は船舶から鉄道に替わって本州~北海道間の貨物輸送は高速かつ全天候型となって安定した大量輸送が可能となったのである。ちなみに海峡線開業前後の鉄道貨物輸送量を比較してみると、青函トンネル開業前の旧国鉄時代における輸送実績が367万㌧/年(1985(昭和60)~86(昭和61)年2カ年平均)であったのに対し、同トンネル開業(海峡線開業)後のJR貨物における輸送実績は50%近くも伸びて533万㌧/年(1989(平成元年)~90(平成2)年2カ年平均)と大幅な輸送増の実績を示している。現在、JR貨物の青函間の貨物列車(コンテナ列車)は上下含め51本(臨時を含む)が設定されており、昼夜を分かずに青函間の貨物輸送に就いている。

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画像                    三線走行区間を行く貨物列車と北海道新幹線北海道知内町
 現在も、北海道から関東や関西方面等へ発送されている貨物のうち農産品(乳製品、玉葱、馬鈴薯、カボチャ、米、大豆、砂糖、メロンなど)の多くが鉄道(シェア約4割)で運ばれていることから、北海道新幹線との共用走行区間(かつての海峡線)は唯一の鉄道輸送経路として貨物輸送にとっては重要な中枢路線であるとともに、大都市圏へ生鮮食料品を供給する“ライフライン”としても重要な位置を占めている。
 このように青森~函館間の鉄道貨物輸送は、北海道経済の活性化はもとより本州都市圏部への食料品等供給の面でも欠くことのできない存在である。そうした貨物輸送の環境の下で、前述のように北海道新幹線の開業により青函間の貨物輸送は新幹線列車との共用走行運転という形で行われており、共用走行区間における両者の間には必然的に安全性や技術的などの面でレベルが異なっていることから解決すべき課題が数多く存在した。JR貨物では、これら諸課題の解決に向け長期にわたり検討が重ねられてきたが、その中でも共用走行に関して大幅に対応を必要とされたのがき電方式が交流20kV/50Hzから交流25kV/50Hzへ変更された運転関連設備および運転保安設備(ATC-L形(アナログ式)からDS-ATC(デジタル式)へ)への対応であった。
 JR貨物においては、冒頭の特質のところで触れた如く機関車牽引による貨物列車が運行されており、共用走行開始前の津軽海峡線においてはEH500形式交直流電気機関車とED79形式交流電気機関車を使用した運行が行われてきたが、両形式の機関車とも共用走行に際し採用された新しい運転関連等の設備には対応していないことから、新たな牽引機関車の開発・導入が必要となった。そのためJR貨物では、青函間を結ぶ共用走行区間の25kV/50Hzおよびその前後の20kV/50Hzの在来線区間を直通走行できる専用の電気機関車としてEH800形式交流電気機関車の開発・新製・導入を行い、青函間の貨物輸送に供している。このEH800形式は2016(平成28)年度中に20両の導入が予定されており、その特殊性から青函間共用走行専用機関車として青森地区(交流電化区間)~五稜郭間における運行に限定して導入・運行される。北海道新幹線開業とともに新たな輸送局面を迎えたJR貨物には、これまで以上に青函間における貨物輸送へ新たな期待が強まる。

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 2018(平成30)年度の経営自立を目指して取り組んでいるJR貨物は、2014(平成26)年度から3年計画の下で推し進めている「中期経営計画2016」が今年度(2016(平成28))で最終年度を迎えることから、経営改革への取り組みを一層深度化させている。そうした中で、2015(平成27)年度JR貨物の決算概要が示された。それによると鉄道および関連事業においては、鉄道事業の営業損失が33億5700万円(前年度比約17億円改善:営業収益1363億6600万円・営業費1397億2300万円)であったのに対し、関連事業では営業利益が1188億8000万円(前年度比約15億円増)となったことで59億円(前年度比27億円増)の経常利益を生み出し、1990(平成2)年度のバブル期以来25年振りの高水準を示した。また連結決算(子会社27社とその他11社を含む)の概要においても、親会社(JR貨物関連)の増収等もあって1911億円の営業収益(前年度比37億円増)により98億円の営業利益(前年度比51%増)と72億円の経常利益(前年度比61%増)を出し、6期連続で経常黒字を確保している。この連結決算結果を通し、親会社株主に帰属する2015(平成27)年度の純利益が54億円となって、連結損益は4期連続の黒字を達成している。こうした経営背景の下で、「中期経営計画2016」の最終年度を迎えているJR貨物はさらに計画の深度化を進めるとともに、営業力の強化によりモーダルシフトのさらなる流れを加速させることに加え、長年懸案としてきたORS(off rail station:貨物列車の運行があった以前の貨物駅跡地等を利用してトラック代行輸送により最寄JR貨物駅へコンテナ貨物の集配を行うJR貨物駅の一つ)や臨海鉄道(全10社・JR貨物が筆頭株主の沿線自治体や周辺企業の共同出資により設立されたJR貨物と連携して貨物輸送を主に臨海部で行う第三セクター路線)に関する構造的要因による収支悪化の改善策(運賃改定やコスト削減)への取り組みのほか、全社挙げた諸施策の確実な遂行によりJR貨物にとって経営上の最大の目標である鉄道事業黒字化達成(営業損益0億円)を2016(平成28)年度中に目指すとしている。
 もし、2016(平成28)年度に黒字転換が可能となれば、毎年度50億円超の経常利益を安定して上げることが可能視され、JR貨物が2018(平成30)年度を目指している“経営の自立”に向け大きな弾みともなる。
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                     大規模物流施設完成イメージ図東京貨物ターミナル駅
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 新会社として発足(1987(昭和62).4)して以来これまで、JR貨物の鉄道事業の赤字は関連事業が生み出す営業利益によって補完する構成が採られてきた。そうした収支環境からの脱却に向けJR貨物は、鉄道事業の赤字解消を付帯事業の取り組み強化に求める施策として2021年度中の完全稼働に向け東京貨物ターミナル駅(東京都品川区)内の広大な社用地を利用した国内最大規模の物流施設開発プロジェクトに2015(平成27)年10月から取り組んでいる。「東京レールゲートWEST」(自社運営)と「東京レールゲートEAST」(サブリース方式)の2棟から成る5階建ての延べ床面積22万㎡を超える大型物流施設の開発で、総事業費350億円をかける両棟はWEST棟が2019(平成31)年8月、EAST棟が2021(平成33)年10月の竣工を目指す。勿論、同物流施設の開設は、周辺に首都高速沿岸線のインターチェンジや東京港国際コンテナステーション、羽田空港国際貨物地区などの流通拠点が数km以内に立地していることを基盤に、最大級の東京貨物ターミナル駅に大型物流施設を直結して開設することで鉄道貨物輸送のさらなる利用促進・増大に繋げるのが狙いである。
画像 旧長崎駅貨物ホーム跡地所在の長崎オフレールステーション」 〉
 そのプロジェクトが進行する中で、2016(平成28)年度鉄道事業黒字化に向け「中期経営計画2016」の最終年度を迎えているJR貨物は、2016(平成28)年度に入り黒字化への新たな取り組みとして鉄道事業の赤字の大きな要因を成している構造赤字部門(臨海鉄道・ORS・車扱輸送など)に対する抜本的改革を具体化させている。すなわち、臨海鉄道の輸送は現在、設立当時の産業構造の変容から輸送量の減少が続く中で大幅に収支が悪化している状況にあり、従前から収支改善の検討が重ねられてきた。2016(平成28)年度は運賃改定、増送・積載率の向上、往復積載化による空車回送コスト削減を臨海鉄道と協同して取り組むほか、運賃ルールの見直しや運営存続の可否を含む将来的輸送体系の構築・展望への検討を行い、構造改革の具体化を進めている。ORSについては、構造的制約から収支改善が見込めない拠点間においては集配業務をを終了させるか、周辺最寄りのJR貨物取扱駅における集配システムに集約・移行させるとしている。また、収支改善により存続への対応が可能なORSにおいては、コスト削減、発着バランス(往復集配)の確保、運賃改定等を図って業務の継続に努めるとしている。
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                      共用走行区間を走るJR貨物在来線と北海道新幹線
 こうした諸施策の下で2016(平成28)年度の鉄道事業黒字化達成を目指すJR貨物にあっては、今春の北海道新幹線開業を機に迎えた新幹線との共用走行という新局面に対し、高い安全性に裏打ちされた新幹線との共用走行という前代未聞の青函間の鉄道貨物輸送にさらなる安全・安定運行を求めるJR貨物にとって2016(平成28)年度はまた、改めて輸送の安全性向上へ取り組む年度ともなった。 (終)…JRガゼットを参照させていただいた.

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