鉄道・運輸機構の業務を探る

 鉄道運輸機構の業務を探る 
画像 国土交通省所管の鉄道・運輸機構(独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構)が行う鉄道建設およびそれに係わる事業には、整備新幹線鉄道の建設や民鉄線の新線建設・大規模改良工事および都市鉄道利便増進工事等の建設を主体とする事業並びに新線等調査事業や貸付鉄道施設改修事業および受託事業(地方公共団体や鉄道事業者からの要請に基づく鉄道に関する工事および調査)等の付帯する事業がある。ちなみに国の機関としての鉄道・運輸機構(JRTT:Japan Railway Construction Transport and Technology Agency、本社・横浜市)は、2003(平成15)年10月の特殊法人改革に伴い従来の日本鉄道建設公団と運輸施設整備事業団を統合して設立された、国内の鉄道建設に関する業務を担う新たな法人機構である。
 国が進める鉄道網整備政策に沿って建設を行う実務機関としての鉄道・運輸機構は、鉄道建設ルートの選定、建設計画・設計、資金の調達、建設工事の施工、完成後の環境対策工事等に至るまでの建設対象諸業務を一貫して担っており、2016(平成28)年3月26日に開業(部分開業)した北海道新幹線(新青森~新函館北斗間148.8km)は道内初の新幹線鉄道として2005(平成17)年4月の工事実施計画認可に基づいて鉄道・運輸機構がその技術力を結集して完成させたものである。この“鉄道建設に係わる総合技術者集団”とも称される鉄道・運輸機構の2016(平成28)年現在における鉄道建設に係わる業務概要は、次の如くである。
画像              鉄道運輸機構本社が入居する横浜アイランドタワー横浜市) 〉
 鉄道運輸機構の業務を探る 
 鉄道・運輸機構の鉄道建設事業に関しては、新幹線建設や民鉄線建設および都市鉄道利便増進の事業、新線等の調査事業、貸付鉄道施設改修事業、受託事業等が行われている。これらの内、同機構による整備新幹線建設事業については現在、延伸新函館北斗~札幌間約211kmの北海道新幹線、延伸金沢~敦賀間約125kmの北陸新幹線および武雄温泉~長崎間約66kmの九州新幹線の3線3区間約402kmにおいて国土交通大臣認可の下で建設工事が進められている。北海道新幹線(新函館北斗~札幌間延伸工事)では渡島・立岩・昆布・二ツ森・後志等のトンネル掘削工事および用地取得や調査・設計等が行われている。北陸新幹線(金沢~敦賀間延伸工事)では武生・脇本・新北陸等のトンネル掘削工事並びに手取川橋梁と九頭竜川橋梁の工事および用地取得、調査・設計等が行われている。また九州新幹線(武雄温泉~長崎間66km)では武雄・木場・久山・新長崎等のトンネル工事および嬉野温泉駅高架橋と大村車両基地の路盤工事がそれぞれ進行中である。また時を同じくして、北陸新幹線(2015(平成27)3.14開業)および北海道新幹線(2016(平成28)3.26開業)について開業後の環境対策向上に関する工事が継続して行われている。
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                       青函トンネルを抜け東京を目指す北海道新幹線
 整備新幹線建設推進・高度化等に関する事業としては、建設コスト縮減等を図るための経済的施行法の調査や、北海道新幹線列車(最高速度260km/h)と在来線貨物列車との共用走行区間(JR津軽海峡線の青函トンネルを含むその前後82kmの三線軌条区間)における同新幹線の速度向上化(現時点の同区間内は140km/h制限)への技術的検討を行うほか、フリーゲージトレイン(新幹線~在来線間直通運転)の技術開発などが進められている。
画像 民鉄線建設事業に関しては、首都圏の大都市部における通勤・通学輸送需要に対処(混雑緩和、所要時間短縮)するするため、小田急電鉄小田原線東北沢~和泉多摩川間(10.2km)の復々線連続立体交差化(高架化および地下化)工事が委託施行として行われている。この内、現在は最後の工事区間である東北沢~世田谷代田間(1.4km)で2017(平成29)年度内完成に向け工事が進行中である。完成後は、ラッシュ時の1時間当たりピーク運転本数が現行27本から36本へ増強され、平均混雑率(世田谷代田~下北沢間)も現行の混雑度189%から160%程度に改善される。また、所要時間も町田~新宿間(30.8km)で6~10分程度の短縮が見込まれる。
 都市鉄道利便増進事業としては、都市鉄道等利便増進法に基づき同機構主体の下で相模鉄道~JR東日本~東京急行電鉄東横線間の直通線(短絡線)建設による神奈川県東部方面の利便性増進整備(線路延長13km・建設費408億円・2019年完成予定)を行っている。その一つの相鉄・JR直通線の整備では、相模鉄道西谷駅(横浜駅起点6.9km)から東海道貨物線(JR東日本)横浜羽沢駅付近間の約3kmにわたる連絡線の建設工事が行われている。一方の相鉄・東急直通線においては、東海道貨物線横浜羽沢駅付近(JR東日本)から東急電鉄東横線日吉駅(渋谷駅起点13.6km)間約10kmの連絡線建設工事が行われている。
画像 新線等調査事業においては、都心と郊外鉄道とを直結する“都心直結線”や3本目の“空港鉄道線”について、ルートの精査や主要施設等の調査・検討等が行われている。都心直結線については、都心と首都圏空港(羽田・成田)とを直結して短時間かつ乗換なしでの移動を可能とするため、都営地下鉄浅草線押上~泉岳寺間に別線で新線を建設して京成電鉄や京浜急行電鉄に乗り入れてアクセス上の改善を図るとともに、新駅(新東京駅)を東京駅付近に建設して新幹線からの乗り継ぎにも利便を図る。羽田空港アクセス線の3本目の空港鉄道線としては、ルートは未確定ながら東京モノルールおよび京浜急行電鉄に次ぐもので、東京テレポートから東京臨海高速鉄道経由でJR京葉線へ、田町付近からJR東海道線(上野東京ライン)へ、大井町付近からJR山手線(湘南新宿ライン)へ乗り入れる3案が提示されている。
 貸付鉄道施設改修事業については、鉄道・運輸機構が財産を保有する青函トンネル(北海道新幹線とJR貨物が共用使用する総延長53.85kmの海底トンネル)は同機構がJR北海道に貸し付けている鉄道施設であり、将来にわたって同トンネルの機能保全に万全を図っていく必要から、保全に係わる防災関連設備や通信施設等の改修事業を行っている。
 受託事業は、地方公共団体や鉄道事業者等からの要請に基づき鉄道に関する建設工事や調査を実施するものである。2016(平成28)年度は、つくばエクスプレス線の車両基地への入出庫線複線化における軌道および電気工事が行われる。また、えちぜん鉄道福井駅付近のJR北陸線連続立体交差化に伴う高架化土木工事が行われる。
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                            〈 高架複々線を行く小田急電鉄
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 鉄道建設に必要とされるあらゆる部門の専門知識や技能を保有する鉄道・運輸機構は、鉄道の建設業務のほかに多様な業務分野のノウハウをバックボーンに鉄道に係わる助成業務も行っている。その助成業務には、国から受ける補助金等や既設の新幹線譲渡収入を活用した鉄道施設整備等に対する助成および旧国鉄が残した長期債務に対する償還・利払い並びに残務清算に関する業務がある。ちなみに同機構の2016(平成28)年度の助成予算は、収入が4881億円(国の補助金985億円、新幹線譲渡収入3584億円、その他312億円)で、助成の支出内訳は整備新幹線建設をはじめとする鉄道施設整備の助成に1709億円、長期債務の償還・利払い等に3166億円、その他に6億円となっている。
 それらの助成業務のうち鉄道施設整備等に関しては、整備新幹線建設助成業務、主要幹線鉄道等整備助成業務、都市鉄道整備助成業務、鉄道技術開発推進助成業務、安全・防災対策助成業務があり、2016(平成28)年度の助成(予算1709億円)では整備新幹線建設(北海道新幹線・新青森~新函館北斗間と新函館北斗~札幌間、北陸新幹線・長野~金沢間と金沢~敦賀間、九州新幹線・武雄温泉~長崎間)に対して1503億円、主要幹線鉄道の整備(地域公共交通活性化・再生法に基づく利便性向上等)に7億円、都市鉄道整備(地下鉄の建設・改良、貨物専用線の旅客線化、大規模駅のバリアフリー化)に184億円、鉄道技術開発推進(安全対策や環境対策等)に3億円、安全・防災対策(落石対策、踏切保安設備、青函トンネル機能保全)に12億円と各々の分野に助成が行われている。
 また、同機構で長期にわたり行われている助成業務の一つである旧国鉄の長期債務に関する償還・利払い業務等については、JR本州3社(東日本・東海・西日本)から収受の既設4新幹線譲渡収入を財源(2016年度3584億円)として国への債務支払いが毎年継続して行われている。1987(昭和62)の国鉄改革で7つの新生会社が誕生したが、その裏側には今も旧国鉄の長期債務が約18兆円近くも澱のように残されている。旧国鉄が改革時に置き土産として残していった37兆1100億円に及ぶ処理すべき膨大な長期債務は、30年近くもの償還・利払い期間を経て2014(平成26)年時点で17兆9784億3300万円(うち有利子債務12兆5928億円)までに削減された。ちなみに当初の37兆1100億円の長期債務の処理に関しては、日本国有鉄道清算事業団(国鉄清算事業団・国鉄改革時(1987.4.1)に日本国有鉄道から名称を変更して発足した旧国鉄の清算業務(財産処分、余剰人員再就職推進、長期債務償還など)を行うことを目的とした特殊法人)、新幹線保有機構、新生JR旅客会社に振り分けられて引き継がれた。その際、国鉄清算事業団には25兆5200億円の債務処理が引き継がれたが、旧国鉄資産等の処分停滞から償還・利払いに必要な資金に支障を来たし損失過多で解散(1998.10)を余儀なくされ、同事業団が抱えていた長期債務の処理業務は2003(平成15)年10月の特殊法人の改革で新発足した鉄道・運輸機構に引き継がれた。その時の引き継ぎ債務残高は24兆9800億円(有利子債務を含む)で、その後の処理は新幹線譲渡収入に替え国の年度予算の一般会計(国民負担)に組み込まれて承継された。 *(参照公開ブログ~「旧国鉄長期債務の今」2016.5.4)
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                       旧国鉄所有資産土地処分途上の梅田駅跡地
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 国鉄改革による分割・民営化(1987(昭和62).4.1)から来年(2017)3月31日で30年になるが、未だに残留する旧国鉄時代に帰する清算関連事項の処理を国鉄清算事業として鉄道・運輸機構は行っている。その国鉄清算事業に関する業務としては、旧国鉄職員の年金給付に要する費用の支払い業務、旧国鉄所有土地等の資産処分業務、JR旅客会社等の経営自立や株式(国の所有)処分等の支援措置を行っている。すなわち、旧国鉄職員に対する恩給や年金および業務災害に係わる災害補償費等における適切な資金管理および円滑かつ確実な支払い業務の実施、関係機関との協議・調整の進行による残存旧国鉄所有土地処分の推進、JR九州株式の適切な売却、北海道・四国・貨物各JR会社の株式処分に対する適切な処分方法の検討等が行われている。また、JR旅客会社等(北海道・四国・貨物)に対する支援措置として、老朽化した鉄道施設等の更新や経営基盤強化・整備に充てる必要な資金の無利子貸付または助成金交付の支援措置を実施している。そして、2016(平成28)年3月26日に開業したばかりの道内初の北海道新幹線(新青森~新函館北斗間)の建設を11年にわたって担ってきた鉄道・運輸機構には、新幹線開業後においても引き続き環境対策等に係わる工事が待ち受ける。現在もすでに、北海道新幹線の札幌延伸開業(2030(平成42)年度予定)に向け新函館北斗~札幌間(211km)で建設工事が進められている。
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                          北海道新幹線延伸工事昆布トンネル
 日本は現在、人口急減および超高齢化社会の下で地方の創生・活性化や2020年オリンピック・バラリンビック東京大会への対応、成長戦略である観光立国への推進、国際競争力強化、減災等国民の安全・安心の確保などさまざまな課題に直面している…と、2013(平成25)年度の国土交通白書は述べており、これらの課題に対し鉄道の分野では地域鉄道の安全性向上・活性化、整備新幹線の着実な整備、都市鉄道ネットワークの整備、鉄道施設の耐震対策等に引き続き取り組んでいく、と同白書は結んでいる。今後も、国土交通省所管の下で、鉄道行政に主体的に係わる鉄道・運輸機構が果たしていく役割はますます大きいといえよう。 (終)…JRガゼットを参照させていただいた.

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