JR北海道の今を見る

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 JR北海道の今は、石勝線列車脱線火災事故(2011(平成23).5.27)を端緒にして、2013(平成25)年に列車出火事故等のトラブルや社員の不祥事、さらには線路補修作業の放棄、軌道検測データの改竄判明など一連の事故・事象を連続して発生させたことから2014(平成26)年1月24日に国土交通大臣から事業の改善命令・監督命令(輸送の安全に関する事業改善命令及び事業の適切かつ健全な運営に関する監督命令)を受け、これらに対する措置を講ずるための計画および安全投資と修繕に関する5年間の計画に基づき安全性向上、安全基盤の再構築、安全企業風土の構築による鉄道事業の改革・再生に向けた取り組み推進の最中にある。
画像                                       〈 JR北海道本社ビル 札幌市 
 そうした状況の下で2016(平成28)年3月26日、1973(昭和48)年の路線整備計画決定から43年を経て道内初の北海道新幹線(新青森~新函館北斗間148.8km)が開業した。1964(昭和39)年の東海道新幹線開業から半世紀余り、九州から北海道まで日本の列島南北が新幹線で移動できるようになった。JR北海道の島田修社長は、新函館北斗駅(北海道北斗市)で行われた北海道新幹線の出発式で「北海道民の夢と期待を乗せた北海道新幹線。安全運行を最大限心掛けていきます」と所信を述べている。ただ、今回開業した北海道新幹線の奥津軽いまべつ駅(青森県今別町)と木古内駅(北海道木古内町)の2駅を含む新青森~新函館北斗間は沿線に企業や工場が少なく安定した需要(利用)への期待が薄い、日本の人口減少化社会の中にあっても最も沿線人口の減少が進んでいる過疎の地域であることから、JR北海道では開業効果の拡大化に向けた諸施策の展開が軌道に乗り新幹線収入の拡大・安定が図られるまで、当初の3年は年平均約48億円の赤字を見込んだ運営体制を敷いて臨むとしている。
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 鉄道事業全体で年間約400億円もの営業赤字(黒字路線は皆無)を抱える今のJR北海道だが、新幹線の開業で並行在来線のJR江差線(五稜郭~木古内間37.8km)が第三セクター化(道南いさりび鉄道)されて経営分離により経費負担の軽減効果が得られはするものの、青函トンネル(53.85km)の維持管理や貨物列車(JR貨物)との共用に係わる経費をはじめとする北海道新幹線固有の経費(在来線との共用走行や寒冷積雪地走行の冬季対策など)を必要とすることなどから、非常に厳しい経営状況にあるのが現状だ。
 そのため、新幹線開業効果の最大化を目指す展開が強く求められており、このほど発表された2016(平成28)年度計画の概要の中でその対策が示された。それによれば、新幹線開業効果を最大化するための施策として開業後の新幹線利用促進プロモーション(開業効果の全道波及に向けた沿線自治体との地域連携強化、新幹線を中心とした列車の運行や輸送体系の整備、修学旅行誘致活動等)の実施や青森県・函館デスティネーションキャンペーン(2016.7~9)等による観光客誘致、JR東日本とタイアップ(連携)した営業活動(本州から北海道エリアへの送客)の充実、道内外の主要旅行会社と連携した北海道新幹線とホテルを組み合わせた東北・関東方面への旅行商品の設定・充実などを図り、北海道新幹線の輸送需要創出に全力で取り組む姿勢をJR北海道は打ち出している。また、現在の道内においては、人口の減少や高速道路網の整備・拡大などの影響により鉄道の都市間輸送量は全般的には減少状況にあるものの、好調な需要が見られる札幌圏域の輸送展開や新幹線の開業で輸送需要の拡大が予測される札幌~函館間を中心とする路線の輸送力や利便性・快適性の向上(特急気動車(261系)の新製投入、臨時列車の設定等)にも連動して取り組むとしている。 …(参照公開ブログ・「JR北海道の再生に見る」2016.3.4)…
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 北海道道民の“長年の悲願”が叶って開業した北海道新幹線、「札幌まで延伸されて初めて本当の開業効果が発揮される…」と地元経済界の声も挙がる下でJR北海道は、2030年度(予定)の札幌までの延伸開業を目指す。ちなみに、延伸開業される新函館北斗~札幌間(約211km)には、新八雲(仮称)、長万部、倶知安、新小樽(仮称)の4駅の設置が計画されている。
 この札幌までの延伸が成れば、現時点での具体的な経済効果の見通しは立ってはいないものの、190万都市の札幌市を中心として道央圏、青函圏、仙台圏および首都圏が一本の線(高速路線)で結ばれることになり、北海道はもとより東北圏域の広い範囲にも更なる活性化へ弾みがつくものと見られている。ただ、鉄道事業の営業赤字年間約400億円を抱えて収支改善の途上にあるJR北海道にとっては、札幌延伸に要すると見られている整備費(建設費用)の1兆6700億円の巨費調達には苦慮が予想されるところだ。
 さらにJR北海道は今、国の事業改善命令・監督命令の下で企業の安全風土の再生・構築に向け努力を傾注している最中にあり、それらに対する措置を講ずるための計画として策定した安全投資および修繕に関する5年間の計画に基づく取り組みに2600億円に及ぶ資金を投じており、その上にすでに見込まれている今後の新幹線に係わる赤字の派生などを考えるとコスト削減へ向けた安全を脅かすような過度な対応姿勢が高まらないとも限らず、安全をないがしろにするような方向へのコスト指向だけは絶対に忌避しなければならない。

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 今、年間約400億円の経営赤字を抱えて収支改善途上にあるJR北海道は、5年間の計画(2015~2019)を推進していく上での資金(2600億円)の捻出に当たっては限りある経営資源を最大限有効活用して自助努力を傾注していくため、事業全般の見直しを推進する方針を示している。その内の一つが、2016年3月26日のダイヤ改正を機に実施されたJR北海道内で極端に利用が少ない列車の運行削減(8路線・79本の普通列車減便)と駅(無人駅)の廃止(4路線・8駅)であった。また、需要が少なくしかも輸送機関としての鉄道の特性が十分に発揮できない線区に関しては、道内でも最悪の赤字区間(営業係数が4500超に上る)であるJR留萌本線(深川~増毛間66.8km)の末端部に当たる留萌~増毛間(16.7km)に対して鉄道路線としての事業の維持が困難であるとした上で、2015年8月に沿線の留萌市と増毛町の両市町に同区間路線廃止の意向を伝えていた。その後、代替え交通の確保や地域振興などについて地元自治体との協議が重ねられた結果、沿線両市町の廃止に対する同意が得られたことから2016年4月28日に同区間の廃止がJR北海道によって北海道運輸局に届け出され、今年(2016)12月4日の運行を最後に100年近い歴史に幕を閉じることとなった。ちなみに同区間の廃止は、JR北海道の判断による廃止では2014(平成26)年5月に廃止となったJR江差線末端部の木古内~江差間(42.1km)に次いで4番目である。
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                     2016年12月4日を以て廃止されるJR留萌本線の留萌~増毛間
 先に触れた、この春のダイヤ改正(2016.3)で経営難のJR北海道からひっそりと姿を消していった北の地の駅は8駅(函館本線の鷲ノ巣駅(八雲町)、石北本線の上白滝・旧白滝・下白滝の各駅(遠軽町)および金華駅(北見市)、根室本線の花咲駅(根室市)、石勝線の十三里駅(夕張市)および東追分駅(安平町))に及ぶ。いずれの駅も、1日年間平均乗車人員が1人に満たない無人駅である。ただ、実際にこのダイヤ改正を機にJR北海道が廃止の意向を示していた駅は、前記8駅の他にJR室蘭本線の小幌駅(長万部起点17.5kmの無人駅)を含む全9駅であった。
画像 JR北海道は昨年(2015)の夏、小幌駅(北海道豊浦町)は利用が極端に少ない(1日の平均乗車0人)として前記の8駅とともに2016年3月に廃止する意向を地元の豊浦町に伝えていた。これに対して豊浦町は、小幌駅を同町の観光資源(山菜採取、内浦湾の釣り、小幌海岸海水浴場など)と捉えていることから同駅の維持管理の費用負担を申し出て、駅の存続を図った。これを受けJR北海道は、地元の豊浦町による費用負担で小幌駅を維持管理することで同町と協定書(1年更新)を交わし、2016年3月23日に小幌駅の存続を決めていたのである。両者の協定により、駅の巡回・点検・除雪・警備や人件費などの費用負担は豊浦町が予算計上(470万円)して担い、線路の補修など運行に関する安全面は継続してJR北海道が担当することとして、2016年4月1日を以て小幌駅は豊浦町による管理運営に移行した。この件に関してJR北海道は、今回のように関連自治体の負担で駅が存続することに対して、今後の“一つのモデルケースになる”との歓迎の意を示している。ちなみに小幌駅は、当初は旧国鉄当時に列車交換の信号場として開設(1943(昭和18).9)されたが、1987(昭和62)年4月1日の国鉄分割民営化でJR北海道の誕生とともに駅へ昇格した。1日に上下合わせて普通列車6本が停車する複線区間にある2面2線の山間の駅で、前後を長大なトンネルに挟まれた内浦湾の崖の上に開かれた狭隘な箇所に位置し、周囲に人家や道路はなく四方が急傾斜地に囲まれて獣道ほどの細い道が内浦湾へ下っている、いわゆる“秘境駅”と呼ばれる駅である。駅の利用は、山菜採りや内浦湾で釣りをする人、夏場の海水浴客などに限られ、他は鉄道ファンとおぼしき人の利用が時折見られる程度で、一般の利用は皆無に等しい。ただ、幹線の室蘭本線上に在るため、1日を通して特急列車や貨物列車が足繁く通過しており、一般に言われている秘境駅とは違った異色感の漂う小幌駅ではある。
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                             JR室蘭本線小幌駅
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 2020(平成32)年度の経営自立に向けJR北海道は、鉄道輸送によらなければ担いきれない大量の輸送需要が期待される札幌圏およびその周辺都市間輸送に経営資源を重点的に投入して一層の増収を目指すとともに、使用頻度の低い設備(車両の留置線や側線、副本線、駅設備など)の使用停止や撤去および輸送に関し利用が少なく鉄道特性を十分に発揮させることのできない線区の整備などについて、今後も地域の持続可能な輸送体系の確保を前提にした事業運営効率化の見直し(列車運行の削減や駅施設の整理・廃止など)を前向きに進めるとしている。
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            新函館北斗~札幌間の延伸開業に向け整備工事が進む北海道新幹線昆布トンネルの掘削現場
 そうした事業運営の中において、経営上の収支改善のために道内の在来線で8つの駅(無人駅)が廃止となって2016年3月に消えたが、入れ替わるかのように北海道新幹線開業を機に道内に木古内駅と新函館北斗駅の2つの新幹線新駅が生まれた。開業後、北海道新幹線が初めて迎えた今年(2016)のゴールデンウィークでは、新青森~新函館北斗間において10万7600人が利用し、新幹線開業前(2015)の在来線特急・急行の利用実績(新青森~函館間)に比べ193%とほぼ2倍を示した。整備計画決定から苦節43年を経た2016年3月26日、ついに開業成った道民待望の北海道新幹線は大きな喜びと期待感を伴って北海道の大地に迎え入れられた。まもなく迎えるスケールの大きな北海道の夏の観光シーズン、開業間もない北海道新幹線はどんな活躍を見せてくれるのだろうか…。
 北海道新幹線の今後には、東北地方をはじめとする関東エリアへのさらなる人口交流の拡大や地方に対する経済活動の活性化が期待されている。また同時に北海道新幹線に対しては、JR北海道の経営安定化のみならず北海道全体の活性化のために札幌への延伸工事が鋭意進められている中で、1日も早い新青森~札幌間の開業が心待ちされている。 (終)

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この記事へのコメント

風旅記
2016年09月01日 21:51
こんばんは。
記事、興味深く拝見しました。
道内の経済が札幌に一極集中し、加えても旭川、函館以外とは、都市間の長距離輸送でさえも利益の出る状況ではないのでしょう。そのような中、地域内輸送を担うローカル線は、営業利益を必要とする企業体単体での維持は、既に困難になっているのだろうと思います。
ただ一方で、北海道としての交通政策のポリシーのなさには残念になります。高齢化、過疎化の進む状況において、このまま無策に近い状況でいくのか、疑問も感じます。
中小都市からの公共交通は、都市間も含め皆バスになっていくのかもしれませんが、農産物の輸送など別の側面で持続可能性があるようには見えないのです。
人と共にモノの輸送も含めて、この先どのようになっていくのか、鉄道を活かした輸送・物流体型を作るならば、今が最後のチャンスのように思えます。
今後とも、宜しくお願い致します。
風旅記: http://kazetabiki.blog41.fc2.com/

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