地域で守れるか・・・ 赤字の鉄路

━ ━ 2府16県に跨がる広い営業エリア(49路線)を持ち、利益率の低い多くのローカル線区(JR本州3社(東日本・東海・西日本)の中で格段に低い率)を抱えるJR西日本は、広島・島根の両県を結び陰陽連絡の一部を成す地方交通線のJR三江線(江津駅(島根県江津市)~三次駅(広島県三次市)間108.1km)を廃止する方向で検討をしている旨(2017年度の廃止が想定される)を2015年10月に広島・島根両県に伝えている。
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                          JR西日本三江線鹿賀駅島根県) 〉
 また、これに先立つ2015年8月には、JR北海道が留萌本線深川駅(深川市)~増毛駅(増毛町)間(66.8km)のうち留萌駅(留萌市)~増毛駅間(16.7km)を2016年度中に廃止する旨が路線沿線の留萌市長と増毛町長に伝えられている。廃止される留萌駅~増毛駅間は、近年における沿線過疎化の進行に加え、当路線に並行して高規格幹線道路(深川留萌自動車道)の建設が進むことで今後の利用者の減少は避けられず、将来的に利用者の確保が望めないことから同区間の廃止はやむを得ないとしたものだ。同時にまた、廃止される同区間は輸送密度(営業キロ1km当たりの1日平均旅客輸送人員)が40人(2014年度)に満たず、毎年のごとく大量の降雪を見る同区間は雪崩頻発地域(箸別~増毛)で長期にわたる列車の運休もしばしば発生する災害多発線区でもあり、収入も700万円台で年間1億6000万円もの赤字を計上している不採算区間である。
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━ ━ このところ、JR赤字ローカル線の廃止への動きが続いている。
 近いところでは、2014年4月に茂市駅(岩手県宮古市)~岩泉駅(同岩泉町)間(38.4km)を結んでいたJR東日本の岩泉線(地方交通線)が廃止されている。同路線は、2010年7月末に押角駅~岩手大川駅間で発生した土砂崩壊による列車脱線事故で長期の運休(代行バス運行)に追い込まれ、輸送密度が極度に低い赤字ローカル線なるが故に多額の復旧費が重荷となって路線の復旧には至らずして廃止となってしまった。現在、同路線は路線バス(東日本交通)に引き継がれて運行されている。2014年5月12日には、JR北海道の地方交通線・江差線の五稜郭駅~江差駅間(79.9km)のうち木古内駅(上磯郡木古内町)~江差駅(檜山郡江差町)間(42.1km)がバス運行に転換されて廃止された。JR江差線の木古内駅~江差駅間はもともと輸送密度が低く、JR北海道管内でも40人前後と発足当初の6分の1以下に減るなど乗降数が最も少ない閑散区間であった。ちなみに、木古内駅~江差駅間は2016年3月26日に開業の道内初の北海道新幹線に先立ち廃止されてしまったが、並行在来線となる残りの五稜郭駅~木古内駅間は新幹線の開業によりJRから経営分離され、第三セクター「道南いさりび鉄道」へ移管される。また、今、廃止が検討されているJR西日本の三江線の場合は、廃止された他JR路線同様に輸送密度が極端に低(100人以下)く、運転本数が1日上(江津方)下(三次方)合わせて17本(全線通し運転は上下3往復、他は区間運転)という、また、区間によっては5時間以上にわたって列車が1本も来ない駅もある全線単線非電化の全列車ワンマン運転による、超閑散線区である。
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                    JR岩泉線土砂崩壊列車脱線事故 押角~岩手大川間 2010.7
━ ━ 路線廃止が取り沙汰されている“江の川鉄道”と愛称される江の川に沿って走るJR三江線は、当初の開業こそ1930年代と昭和の始め頃だが、江津駅~三次駅間は直線距離にして60km足らずながら路線の敷設ルートが険しい山間部に挟まれた地形であったため江の川に沿うルートが採られ、何度も江の川を渡って平坦な場所を縫うように建設されたことから長期の工期を要した100kmを超える大回りのルートとなり、全通には40年以上も要して1975年と極めて遅かった。そのため、江津駅~三次駅間108.1kmのルートが全通したときには、日本はモーダルシフトの最中にあって地域間の移動は道路交通の利用に軸足が移っていた。
画像 そして、この大迂回のルートは、島根県東部の主要都市である出雲や松江方面および西部の浜田方面や広島県などとの連絡には隘路となり、目指した陰陽連絡ルートとしての機能を果たすには至らなかった。そうしたルートの性格上からJR三江線は、もっぱら通学利用を中心とした地域住民の移動の足としての需要に推移してきた。しかも、江の川に沿うように山間部を走る同路線は、集中豪雨などによる江の川の水害によってもたらされる土砂崩壊などによる災害(気象災害)多発路線でもある。JR移行前の国鉄当時の1972年7月11日には、明塚駅~粕淵駅間(3.1km)が豪雨によって約2年以上にわたって不通となる災害に見舞われた。1983年7月23日においても、同区間(明塚~粕淵)は集中豪雨で2カ月近くも不通となっている。
画像2013年3月24日の豪雨で橋脚が流失した井原川橋梁島根県川本町) ・ JR三江線
 2006年7月19日には、豪雨により沿線38箇所で土砂崩壊が発生して全線の運行再開が約1年後となった、大きな豪雨災害が起きている。また、2年ほど前の2013年8月には1ヵ月に2度もの豪雨に見舞われ、橋梁の一部の橋脚が流出(井原川橋梁・島根県川本町因原)するなど沿線は計72箇所にも及ぶ被害を被り、全線が不通(浜原~三次間2013.9.1復旧、全線(江津~三次間)2014.7.19復旧)となった。ちなみに江の川は、広島県の阿佐山を水源として6つの主な支流から成る一級水系の本流で、広島県~島根県を流れる中国地方最大の一級河川(全長194km)である。これらの豪雨災害では、復旧費用だけでも毎回10~15億円もの経費を要している。
 こうした運営環境下に置かれているJR三江線であるが、同じ県内のJR木次線(地方交通線・宍道~備後落合間81.9km)と並ぶ超閑散線区であることからたびたび廃線話が持ち上がっていたが、沿線からの反対の声とともに、代替えとして必要な沿線の道路整備も不備などの理由から現在に留まっている。
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                           中国地方の山峡を行くJR三江線
━ ━ 2000~2013年度にかけ全国では35もの鉄道路線(約670km余り)が廃止されたが、都市部の鉄道では従来から一般的にローカル線の赤字は都市部での稼ぎにより埋め合わせをしてきたが、人口減少や超高齢化の時代を迎えてこうした経営手法が都市部の鉄道でも成り立ちにくくなってきており、あまつさえ地方・地域の鉄道では今も進む地域の過疎化・衰退化に歯止めがかからない限り赤字ローカル線廃止への流れは避けがたい方向を向いているといえる。また、山間部や海岸沿いを走るケースが多い地方・地域の路線は災害に見舞われる機会も少なくはなく、ときには膨大な復旧費用が重荷になって廃止への途を歩まざるを得ない状況に追い込まれかねず、前述の如く土砂崩壊で不通になったまま復旧の見通しも立たずに廃止されたJR岩泉線(2014.4.1廃止)はその典型であったともいえよう。とはいえ、公共性が頗る高い公共輸送機関としての鉄道事業の性格から、路線の廃止云々については地域沿線住民の充分な理解を得る必要がある上に、廃止はあくまでも万策尽きた末の最終的な手段と心得るべき事象である。
 今、日本の社会が直面している人口減少・超高齢化の問題とも併せ、同時にインフラ施設等の“高齢化”(老朽化)への対応は鉄道事業者に限らず沿線の地方自治体等にとっても財政上で大きな問題となっている。これは地域の公共交通にとって、特にローカル鉄道にとっては事は重大で、路線の存亡にも係わる。
 明治時代の鉄道創始以来、日本の移動手段の主役は変わることなくその鉄道が占め、“鉄路は地方・地域のシンボル”とも言われてきた。ただ、鉄道は需要に応じ路線等を簡単に変更するわけにもいかず、列車運行なども含め需要に関しフレキシブル性に欠け融通が利かない面があり、公共輸送機関としての鉄道は人口減少・超高齢化社会において進む地方・地域の過疎化の地には適した移動の足とは言い難い側面がある。しかしながら、例え過疎地であるといえども鉄道は地方・地域の主要なインフラとして、また再生・活性化にとって欠かせない存在であることは否定できない。
画像 国も、人口減少・高齢化の下における地方・地域の再生・活性化に必要な公共交通機関等の整備を目指し、「地方創生」を主要政策(第二次安倍内閣)の一つに掲げた。
 日本国内のそれぞれの地方・地域がそれぞれの特徴を活かし、自律的で持続的な社会を形づくり、魅力ある地方を構築するという施策である。すなわち、地方・地域の復興・活性化(キーワード…“まち・ひと・しごと創生”)を促進して地方の人口減少に歯止めをかけるとともに首都圏への人口集中(一極集中)を是正することで、地方の自律化・活性化に取り組む施策である。また政府は、2015年8月14日に新たな「国土形成計画」(全国計画)を閣議決定した。その全国計画では、急激な人口減少、巨大災害の切迫等の国土に係わる状況の大きな変化に対応した、概ね向こう10年間の国土づくりの方向性が定められている。その基本コンセプトとしては、それぞれの地域が個性を磨き、異なる個性を持つ各地域が連携することでイノベーションの創出を促す「対流促進型国土」(人口減少に立ち向かう地域構造、国土構造、地域の個性との対流を促進して相互連携を強化)の形成を図り、その実現のために「コンパクト+ネットワーク」の形成を進めるものである。すなわち、人口減少社会において社会生活に必要なサービス機能(交通、衣食住、職業、医療・介護・福祉等)を維持するため、それぞれの地域内で各種サービス機能をコンパクトに集約して拠点化し、居住地域とをネットワークで結んで人口の定着化に繋げていこうというのが同計画の一端である。これらの推進のためには、地方から首都圏(東京圏)への一極集中(一極滞留)を解消し、人の流れを変えて雇用や暮らし等の生活サービスの面で魅力ある“地方の創生”が欠かせない。ここに今、地方・地域の鉄道ローカル路線を再生・活性化へ導く途が拓かれようとしている。

━ ━ 2017年度に想定される全長108.1kmに及ぶJR西日本三江線の廃止が若し行われるとなれば、100kmを超える長大路線の廃止としては今から10年ほど前の2006年4月に廃止された道内唯一の第三セクター鉄道であった「北海道ちほく高原鉄道」(ふるさと銀河線)の池田~北見間140.0km以来のこととなる。このふるさと銀河線は、かつて国鉄時代に網走本線と呼ばれ札幌と網走を直結する北海道内の主要幹線であったが、後のルート変更で幹線から外れて「地北線」と改称(1961)され、国鉄再建特別措置法により廃止対象の第二次特定地方交通線として33の廃止対象路線の一つに選定(1982)された路線である。その後、地北線の存廃を巡る葛藤を経て1989年に第三セクター「北海道ちほく高原鉄道(株)」が設立され、同年6月に“ふるさと銀河線”として再出発した路線である。しかし、もともと希薄な沿線人口の下で開業当初から450人前後で推移していた輸送密度も、クルマ保有者の増加等で廃止間際には開業当初の半分以下にまで減少し、さまざまな経営改善策が労されるも功なくして姿を消していった長大鉄路であった。
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                2014年7月の豪雨災害から復旧した井原川橋梁を行くJR三江線 島根県川本町
 とにかく、人口が少ない地方・地域においてはどのような交通機関にせよ黒字化は難しく、運行経費などをどこまで公費負担すべきかの議論もある中で、必要なのは生活で使う“足”は生活者自らで守るという意識であろう。すなわち、どのように地域の公共輸送機関を維持していくのか、地域の自治体が先導して沿線住民とともに知恵を出し合いながら考えていくべきであろう。近年では、地方公共団体と鉄道事業者との相互間で街づくりや地域の活性化に関して包括協定(沿線価値向上へ地域全体で情報・意識の共有)を結ぶケースが見受けられている。また、協定を結ばないまでも、各種イベントの開催や沿線における各種サービス提供に関し駅や車内における情報発信、連続立体交差化、駅周辺整備など、地域と鉄道が連携した活性化への取り組みも多く見られている。こうした協調的かつ先進的な取り組みを通して、地方公共団体と鉄道事業者との間で地域全体の活性化への方向性に関して情報や意識の共有が進めば、人口減少・超高齢化社会においても中長期的かつ持続的な鉄道のサービス提供を可能とさせることにつながり、地方の主たる公共交通機関としての鉄道の再生・活性化につなげることができるのではないだろうか。 (終) …JRガゼットを参照させていただいた.

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