再生へ進む ~JR北海道グループ

画像JR北海道グループは今、輸送の安全を至上命題とする鉄道事業者として、その経営の基本的資質が端緒から問われている状況にある。JR北海道は、2013年度において列車火災や車両出火等のトラブル、列車脱線、社員の不祥事などを連続して発生させ、さらには線路補修作業の怠慢や保線管理記録データの改竄といった安全輸送を最優先とする鉄道事業者にはあってはならない事態を発生させたことから、2014年1月24日に国土交通大臣から輸送の安全に関する事業改善命令(鉄道事業法に基づく)および事業の適切かつ健全な運営に関する監督命令(JR会社法に基づく)を受けた。
 こうした事業事態に鑑みJR北海道は、2014年度より新経営陣の下で本業の輸送業務の再生を図るため、安全で安心して利用できる鉄道輸送事業の構築に向け全社挙げて安全の確保や安全性の向上、コンプライアンスの徹底等の推進に取り組んでいる最中にある。具体的には、外部者構成の「JR北海道再生推進会議」の設置による第三者視点の取り入れによる意向を踏まえながら事業改善命令および監督命令に対処する措置を策定するとともに、安全輸送基盤の再構築に向け「安全投資と修繕に関する5年間の計画」を策定し、ともに2015年3月20日に国土交通大臣に提出している。また、過去の一連の事故等で失われた安全風土の再構築に向けても、2015年4月に従来の「JR北海道グループ経営理念」を改訂しており、同時に改定された経営理念を社員一人一人の日々の行動に結び付けていくために「私たちの誓い」を新たに制定して社員の行動指針を示している。
画像                          JR北海道本社ビル 札幌市
従来の「JR北海道グループ経営理念」は、グループの経営視点をより明確に重視したものとするために、同社における長期的観点に立った経営姿勢を2002(平成14)年に定めたものであった。しかし、これまで安全最優先の意識やコンプライアンスの徹底が社員の共通認識としての醸成に不十分さがあった反省から今回(2015.4)、会社発足(1987(昭和62))以来最大の危機的状況にある中でJR北海道は同経営理念の見直しを行った。以下に、改定された「JR北海道グループ経営理念」を示します。
 『JR北海道グループは、・お客様の安全を最優先に取り組みます。コンプライアンスの徹底をはじめ、企業に求められる社会的責任を果たします。安心してご利用いただけるサービスを提供し、お客様満足の向上をめざします。北海道に根ざす企業グループとして、地域の発展に貢献します。個人の創造力とチームワークを高める企業風土を醸成し、社員の充実感の向上とグループとしての成長をめざします。』
 また、新会社発足時に“官”から“民”への意識改革を図るためにJR北海道は、会社の基本的考え方を「社是」(私たちは 安全に徹します お客様を大切にします 知恵と活力を結集します(2015.3改定))に定めて掲げている。しかし今、会社の再生が迫られている最中にあって鉄道人として求められる行動を社員が遂行していくためには「社是」のみでは“意”を尽くすに不足な面を免れないとの思いから、新たに行動指針として安全最優先と法令遵守に主眼を置いた「私たちの誓い」(2006年制定の「JR北海道グループ企業行動指針」に代わるもの)を定めている。7項目からなる「私たちの誓い」を次に示します。
 『「私たちの誓い」… お客様の命を守ります。社員の命を守ります。「安全第一、安定第二」危ないと思ったらすぐに列車を止めます。JR北海道社員としての自覚を持って行動します。社会のルールを守ります。会社のルールを守ります。「お客様あっての私たち」感謝を忘れず仕事をします。「確かな技術力」身につけ、磨き、伝えます。「鉄道はチームワーク」お互い声をかけ合い、進んで協力します。「一人ひとりがJR北海道」誇りを持って仕事をします。』
 経営理念および私たちの誓いは、いずれも2015年4月1日から施行されている。この「私たちの誓い」は、JR北海道が真の再生を図るために社員自らが考え行動する“誓い”である。それゆえ、自らの行動について社員一人一人が日々を振り返る習慣の意識付けが求められよう。この地道な行動の積み重ねと努力の継続が、信頼されるJR北海道再生へ向け今後に欠かせない要件でもある。
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今年(2015)3月にJR北海道が策定した「安全投資と修繕に関する5年間の計画」(2014~2018年度…車両の老朽化対策・軌道強化・管理の見直し等の安全投資に1200億円、車両修繕・施設修繕・その他の修繕投資に1400億円の累計2600億円)による安全対策に対し同社は、自社による費用負担には限界があるとして国に支援要請を行っていた。さらには、第三者委員会である「JR北海道再生推進会議」においても、2015年6月26日に同計画への国の財政支援を求める提言書を提出し、国に財政支援を求めていた。こうした状況を踏まえた上で国土交通省は、安全対策に係わることでもあることから総合的に勘案し、JR北海道に事業改善命令・監督命令を出した同省としても費用が及ばない部分については補う必要性があると判断し、JR北海道の最大限の自助努力を前提とした上で2015年6月30日に国として追加的支援措置を行うと発表した。また、この支援措置の決定は、「安全投資と修繕に関する5年間の計画」に盛り込まれている安全投資や修繕計画がJR北海道の今後の経営自立(再生)にも繋がるとの国の狙いや管理上の思惑(安全促進につなげることで社会的批判の抑制)が決定の背景にあったのも確かであろう。
画像         PCマクラギ化による軌道強化工事JR函館本線砂原線
 このJR北海道に対する追加的な支援措置は、2016年度から2018年度までの3年間で総額1200億円が支援される。内訳は、設備投資と修繕計画にそれぞれ600億円が支援されるが、今後のJR北海道の再生への進捗状況如何によっては最長2020年度までの支援を可能としている。この追加的支援は、鉄道・運輸機構(鉄道建設・運輸施設整備支援機構)を通じて助成と無利子貸付の形で行われる。 こうした国による支援措置が、JR北海道が目指す再生にどのように効果をもたらしてくれるのかは、会社存亡に直面しているJR北海道自身の行動如何にかかっているのは必至であろう。
 ちなみにこの国にによる追加的支援は、JR四国が計画している安全対策に対しても2016~2019年度までの4年間に200億円が支援される。

2015年度の取り組み計画でJR北海道は、国から受けた事業改善命令・監督命令に対する措置を講ずるために策定した計画および安全投資と修繕に関する計画に基づき、日々の安全確保に努めつつ輸送の安全性向上への取り組みを全社員が一丸となって推進していくとを掲げている。
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                         試験運転に臨むJR北海道新幹線 H5系
  一方でJR北海道は、2015年度末の初の新幹線開業(新青森~新函館北斗間149km)に向け国の完成検査への対応準備や試験運転、訓練運転、冬期を含めた総合的な性能検証、規程・マニュアル・システム等の整備、運行計画、運賃・料金など諸々の準備・対応・対策の最中にもある。こうした立ち向かわなければならない数々の取り組みや課題を前にJR北海道においては、今こそ企業グループの総合力を活用しなければならないときであり、グループ間の連携および一体となった安全性向上とコンプライアンス体制の推進・強化が一層求められている。全社員において“一人一人がJR北海道”であることの認識が、会社存亡の危機にあるJR北海道を再生へ導く“鍵”となろう。 (終)

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