観光立国実現へ交通系ICカードの存在

日外国人旅行者数が800万人台に止まっていた2012年であったが、翌2013年には日本政府の観光庁(国土交通省)が1964(昭和39)年に統計を採りはじめて以来半世紀を経て初めて1000万人台(1036万4千人:前年比24%増)に到達した。その増加の要因には、円高是正(円安)に伴う旅行費用割安感の浸透、東南アジア諸国に対する査証(観光ビザ)の緩和措置、LCC(Low Cost Carrier:効率的運営により低価格運賃で運航する航空会社)などの新規就航による航空座席供給量の増加などが挙げられている。

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                         第4回観光立国推進閣僚会議 2014.6.17
 しかしながら、観光立国を目指す日本の世界における観光順位は33位と“途上国”並みで、まだまだ観光立国として先進国への仲間入りをするにはほど遠い状態にある。そこで日本の政府は、観光立国を実現するための施策として関係行政機関の緊密な連携を確保し、その効果的かつ総合的な推進を図るために、内閣総理大臣主宰の下に全閣僚出席による「観光立国推進閣僚会議」(第1回会議・2013.3.26)を設けて観光立国実現に向けたアクションプログラムの設定・検討や改訂などを逐次進めている。2014年6月17日の第4回観光立国推進閣僚会議においては、6年後の2020年オリンピック・パラリンピック東京大会開催の好機を追い風に、2000万人の外国人旅行者の訪日実現を図ろうという「2020・2000万人」の大台を目指した観光立国実現に向けたアクションプログラムが諮られ、決定されている。主なものとして、2014年10月から消費税免税の対象範囲の拡大と、訪日外国人向け免税店を2020年までに全国1万店規模(倍増)にまで展開するとした、外国人旅行者受け入れ環境整備の推進が挙げられている。

日外国人旅行者数2000万人の実現に向けて最も強く求められている課題が、旅行途上における訪日外国人旅行者を対象にした二次交通(空港や鉄道駅から観光目的地までの移動交通手段)の利便性向上や現金に頼らない円滑な決済環境等に係わる外国人旅行者受け入れ態勢の整備である。この求められている課題への対応策として有望視されているのが、1枚のカードで全国の鉄道・バス等の公共交通機関を利用でき、電子マネーとしても使用できるという、高い利便性に富む役割を担い国民の新しい生活インフラに成長しつつある「交通系ICカード」である。
 全国的に導入が進む交通系ICカードにおいては、2013年3月末現在の全国における交通系ICカード導入の事業者数は78社、種類は25種、合計発行枚数はおよそ8700万枚、利用駅数は約5000駅に及び、うち11事業者・10種類のカードが2013年3月23日からの全国相互利用サービスの開始に伴い利便性がさらに大幅に向上されている。今後の訪日外国人旅行者数2000万人を目指すことを念頭に置けば、全国規模で二次交通の利用もしやすく、現金に頼らない各種決済の可能性が高い交通系ICカードの存在がクローズアップされるのは当然の成り行きである。
 ちなみに交通系ICカードを海外に見ると、都市部を中心に英国や中国では15種類ほど、米国や韓国では10種類程度、タイや台湾では5種類程度が利用されているようだ。韓国、台湾、中国の一部の交通系ICカードでは、コンビニエンスストアや小売店舗、コインロッカーなどでの利用も可能となってはいるものの、利用の地域的広がりや店舗の数・種類等においては日本の交通系ICカードの方が一歩先を行っているようだ。

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年、国土交通省観光庁が実施した訪日外国人旅行者を対象にしたアンケート調査によれば、日本を旅行しているときの困惑や不満として無料使用できる公衆無線LANの環境整備が不十分、コミュニケーションがとりにくい、両替やクレジットカードの利用が不便などの日常の行動に制約を受ける事項が挙げられている。このうち、両替やクレジットカードに関する決済環境の整備が欧州(駅売店、花屋、ファーストフード等に至るまで利用可能)などと比べて劣っていることが訪日外国人客の悩みの大きなポイントの一つになっていることから、交通政策審議会の観光分科会は海外発行のクレジットカード利用のATMや店舗の数が少ない日本の実態に着目し、クレジットカードに関する決済環境の促進を提言している。

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                           訪日外国人観光客 浅草寺東京) 〉
 海外旅行の際に誰もが思うのは、見知らぬ場所で現金を持ち歩くよりカードで決済できれば食事や商品等のサービスを得る際の無用の心配が不要となり、移動に際しても足の確保に対し利便性が高まるだけでなく、両替や為替(金銭)換算などに要する手間が省けるといった、気軽で安心した旅行を楽しみたいということではないだろうか。しかも、そうした金銭に係わる環境の整備が、何より旅先における安心・安全性の向上と確保につながるといえよう。
 それら事柄の対処実現へ向け、あまねく最も身近に存在しているのが「交通系ICカード」であろう。海外発行のクレジットカードとの連携やチャージ方法等々に工夫・改善を加えた上で、訪日外国人旅行者に日本観光をストレスなく楽しく過ごしてもらうためにも、その交通系ICカードの利用を促進させていくことがまさしく有効な方策になり得るのではないだろうか。それ故、これからの交通系ICカードの存在性には、海外市場に向けた情報提供の促進(交通系ICカードの利用アピール)や購買体制の強化(取得機会の喧伝)に加え、クレジットカードとの連携やスマートフォンとのアプリ対応などへの進化が望まれるところだ。
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本の国土には四季折々の気候風土に根ざした豊富な観光資源が全国に在り、観光立国実現へ向けては数多の観光スポットに恵まれた環境にある日本において、近年、外国人旅行者の訪日誘致に対する環境整備が政府主導の下で鋭意進められている。2020年に訪日外国人旅行者数2000万人の実現を目指す政府だが、現在の日本は昨年(2013)実績での訪日外国人数が1036万4千人と1000万人の大台に乗ったとはいえ、世界の観光国順位から見れば33番目と至って低い。ちなみに世界の観光国ランキング(2012年の国連世界観光機関のまとめ)を示すと、世界トップの観光大国は約8300万人のフランスが群を抜き、2位は約6690万人のアメリカ、3位は約5770万人の中国、4位は約5700万人のスペイン、5位は約4630万人のイタリアが続くが、日本は33位とトップのフランスの約1/10程度(2012)に止まる。ただ、1000万人を突破した2013年の日本の実績によっては、世界の30位以内に入る可能性もあるという。
 政府は、観光立国実現に向けたアクションプログラム(観光立国推進閣僚会議)の中で、外国人旅行者に対応した二次交通の利便性向上と現金に頼らない決済環境の整備を求めているが、その課題への有望対応策に交通系ICカードの利用が挙げられているのは前述の如くである。JR東日本の「Suica」を嚆矢にサービスを開始(2001.11~)した交通系ICカードは今年(2014)で13年目を迎え、今日では全国的な相互利用サービスに加え、地域版発行カードなどとの連携も各地で進み、電子マネーやクレジット機能等の搭載や携帯電話機能の活用による多機能化と相俟って1枚のカードによる利用範囲の拡大が図られ、その高い利便性は利用者人口の裾野を年々拡げている。
 訪日外国人旅行者数2000万人実現を目指す6年後の2020年には、果たして交通系ICカードの様相はどのような変革を遂げ、観光立国実現化へどのような役割と成果をもたらしてくれるだろうか。そのイノベーションの追求如何(役割と存在)が気にかかるところではある。 (終)…情報誌・JRガゼットを参照させていただいた.

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