15歳未満人口と鉄道

総務省は2014年5月4日、同年4月1日現在における日本の15歳未満の子どもの数が昨年より16万人減少した1633万人と、33年間連続で減少を示したことを発表した。その上、この1633万人の子ども人口が総人口に占める割合が12.8%と、40年連続の下落(1974(昭和49)年の24.4%を境に)を続け、世界の人口4千万人以上の30カ国の中でも最低水準にあることを示した。この15歳未満の子どもの数は低年齢層になるほど少ない(後述)ことから、今後も日本の少子化傾向は続くものと見られており、このままのペースで子どもの減少化が続くとすればおよそ半世紀後の2060年には15歳未満の子ども人口が現在の半数以下の791万人になると、政府の「高齢社会白書」では予測する。
 現在(2014.4)の15歳未満の子ども人口は、1950(昭和25)年に国が統計を取り始めて以降、過去最低を更新している。そして、1981(昭和56)年の2760万人を境に減少へと転じていった15歳未満の子ども人口は、65歳以上の人口を1997(平成9)年から下回り始め、このときすでに日本は後に社会問題化することにもなる少子・高齢化社会到来への途を歩み始めていたのである。ちなみに15歳未満子ども人口の内訳(2014.4.1)を示すと、男女別では男子が836万人、女子が797万人である。年齢別では12~14歳・351万人、9~11歳・333万人、6~8歳・319万人、3~5歳・316万人、0~2歳・314万人と、その人口は低年齢層になるほど少なくなる状況を示す。また、海外(人口4千万人以上の30カ国)での子ども人口の割合で見ても、米国19.5%、中国16.4%、韓国15.1%などと、日本の12.8%は世界的にも最低部類の水準となっている。
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21世紀に入っても歩みを止めない、日本の人口減少化や少子・高齢化の社会環境は、現在の鉄道事業者にとって経営の上から喫緊・最大の課題となっている。
 今から60年以上も前の日本は、敗戦から立ち直って戦後復興が成り、国が胸を張って社会に発した「経済白書」で“もはや戦後ではない”と戦後の終了を宣言したように、日本は技術革新とともにGNPの伸びが年平均9%を上回るという飛び抜けて高い経済成長を続けていた。同時にこの現象は、全国的な大量の人口流動を誘発させ、地域の過疎・過密化を招来・促進させた。この高度成長のうねりによって、大都市圏に集中する人口増大の波は鉄道輸送に直接大きな影響を与えていった。土地の高騰から住宅の郊外拡散化が進んだ首都圏では、中央線や常磐線などの通勤区間で毎朝のラッシュ時混雑率が客室空間における物理的限界ともいわれた300%を超える通勤地獄の様相を呈し、まさに“殺人ラッシュ”とまでいわれた過密な輸送が展開されていた。こんな生々しい言葉は、近年ではとんと聞かなくなって久しいが、今の鉄道輸送量からおしなべて何とも羨ましさを通り越した遠い昔の話ではある。
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 しかし、この経済成長も1990年代に入ると、湾岸戦争やソ連邦解体などといった新たな局面の渦中に全世界が巻き込まれ、日本国内でも高度成長をベースに成り立っていたバブル経済の崩壊が一気に起こって日本の経済は下り坂を滑るが如くに下降して行き、“平成不況”ともいわれる長期の経済低迷時代へと入ってしまった。

不況の長いトンネルに入り込んでしまった日本の経済は、かつて経験したことのないバブル崩壊の下で発生した設備過剰や消費後退といった影響を受けた経済活動の停滞は、企業のリストラや庶民の消費控えなどを招き、いわゆる“複合不況”の渦の中で鉄道も輸送量(利用者)の減少を余儀なくされていった。このバブル崩壊による長い不況に加え、1990年代後半に到来した少子・高齢化社会は、将来にわたる鉄道利用人口の絶対数減少化を暗示するものであった。まさにこの到来した少子・高齢化社会の推移は、前述の総務省発表(2014.5.4)の如くに17年を経た現在も年々その進行の度を速めており、鉄道経営上で大きな足かせ(課題)となっている。
画像 2年前(2012)の日本の合計特殊出生率(1人の女性(15歳~45歳)が一生のうちに産む子どもの数)は、2年ぶりの上昇を示して1.41(人)となったものの、当時の人口維持に必要とされる2.08には及ぶべくもなかった。戦後の日本の出生数は、1966(昭和41)年の“丙午”に最低を示したが、第二次ベビーブームといわれた1971~74年(昭和46~49)に一時的に盛り返した。が、その後は減少の域を脱することなく、現在(2014.4.1)の日本の総人口は1億2714万人(概算値…前年同期比22万人減)となっている。今から13年前(2001(平成13))の厚生労働省による推計では、日本の人口は50年後には1億人、100年後には大正時代の水準と同等の6700万人台に半減すると見ていた。ちなみに合計特殊出生率が2.0を上回れば、夫婦二人で子ども2人ということになり、世代の人口はほぼ維持できることになる。
 日本の合計特殊出生率を外国(WHO加盟国194カ国対称・2011(平成23)年時点)と比べても、最少に近い部分に位置する米国の2.1、フランスの2.0、英国の1.9、中国の1.6などに次いで日本は1.4と、イタリアや韓国とともにいたって低い。特に、出産率が高いと見られている25~29歳代におけ画像る出生数が減っており、一方で25~30歳代にかけての未婚率が男女ともに増えているという。少し古い調査ではあるが、1999(平成11)年に当時の総理府(現・内閣府)が行った少子化解消に関する世論調査によれば、「結婚や出産そのものを奨励し、少子化を解消すべきだ」とする意見が18.6%であったのに対し、「結婚や出産を阻む要因を取り除く環境整備を行い、結果として少子化の解消を期待する」とする意見が56.8%を示していた。この調査が示していたように、結婚や出産の奨励より、現実には日常生活上における社会的、経済的、心理的な環境の整備が先ず求められ、その上で結婚という「晩婚化」の傾向が少子化の主な要因の一つであった。それほどに、結婚適齢期の世代が安心して結婚生活に踏み込める状況に、社会的環境の整備が遅れを取っていたのだ。こうした少子化対策(解消)へ求められてきた社会環境整備を第一と考える方向性は、いわば少子化底上げへの大きな条件の一つとして採られなければならない。しかしながら、同時にまた、年を追うごとに進む高齢化社会の下で増え続ける“老齢者介護”の必需性が、晩婚化を助長しているのも否めないことだ。
画像                        JRセントラルタワーJR東海名古屋駅ビル) 〉
33年間も続いている、歩みを止めない15歳未満子ども人口の減少化は、鉄道の事業経営本来の輸送業務に対する将来の成り行きに暗雲を投げ掛けているようでもある。近年の少子・高齢化社会の下で営まれる鉄道事業経営は、最早鉄道事業中心の企業体としては立ち行かなくなっている状況にあるのが現状である。成熟度の高い沿線を囲う鉄道ほど、輸送人員の増加はおろかその維持さえ危うい懸念が増しており、今後に現状輸送量の確保を望めない鉄道事業者ほど経営の維持に多角化の方向性が欠かせなくなっている。こうした中で近年は、旧国鉄時代に法律の制約から罷り成らなかった経営の多角化をここ数年の間で急ピッチに進めているJRに見るまでもなく、鉄道本来の輸送事業以外に沿線および駅周辺の立地条件や不動産を活用した事業の多角化を展開し、鉄道以外の事業経営を伸展させることで企業自体の価値を高進させようとする動きが活発化している。
 こうした傾向は、少子化が進む現状にあっては当然の成り行きだが、これによって鉄道本来の輸送事業が従属化する主客転倒の事業経営に陥ってしまってはなるまい。このような多角化経営環境の下においては、経営基盤の弱さから鉄道経営の軸足を他事業へ傾け過ぎた末に安全管理体制に反故を来してしまった昨今のJR北海道にその例を見るまでもなく、とかく鉄道の最大の使命である“安全”が損ねられかねない危惧を多角化経営はその内に孕んでいる。いずれにせよ、あまねく大手の私鉄などでは、連結の売上から単体の売上を引いた単体以外の売上の方が大きい割合を占めているのが実態である。中には、関連事業を含めた連結決算において、鉄道事業の割合が10%にも届いていない大手私鉄さえある。
 このような実情を目の前にすると、近年の鉄道輸送事業の厳しい実態が、高まりを見せる少子化や高齢化の社会環境の向こうに透けてくる。されど、今、15歳未満子ども人口の“1633万人”が将来の鉄道輸送の支えにつながるであろうことに思いを寄せれば、その数字も映えて輝いてくる。 (終)

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