鉄道の事業評価に見る

通常、公的費用(国費)によって整備される「社会資本」(道路・港湾・空港・整備新幹線など)は、その整備が行われるに際して貴重な財政が有効に使われるように“事業評価”を実施することが定められている。
画像                                    〈 運行休止が続くJR常磐線 南相馬市付近 〉
 2012年6月29日に国土交通省から工事実施計画の認可が出され、同年8月にかけ起工式が行われて新たに着工した整備新幹線の3区間(北海道新幹線・新函館~札幌間、北陸新幹線・白山総合車両基地~敦賀間、九州新幹線・諫早~長崎間)についても、所用の手続きとともに事業評価が行われ、収支採算性と投資効果の妥当性が確認されて建設着工へと至っている。
 その事業評価について簡単に述べれば、事業(社会資本)の整備にあたり必要とされる費用と、事業(同)の整備に対して期待されるさまざまな効果との関連を精査し、投入される費用が整備に見合う効果を発揮できるか否かの判断を示すのが事業評価である。

近年、その社会資本の整備における事業評価は、成熟化した日本の社会の下で従来から行われてきた新規社会資本に対する量的充足度の整備から、近年は既存の社会資本に対する質的充足度の整備を求める方向へとシフトしている。
 鉄道整備に対する事業評価に関しても、最近では、交通機関が有する速達性や利便性等の量的充足だけに止まらず、先の未曾有の東日本大震災(2011.3.11)により社会資本の果たすべき役割が再認識されたことによって、傾向として安心感や快適性、代替性等といった質的充足度を評価する必要性が強まりつつある。その事業評価における大きな流れとしては、多くの事業分野において、既存施設の質的向上による効果が如何に発揮されるかを事業評価に採り込む評価方法の傾向が高くなっている。
 その一つ、ある部分が被害を受けても他の部分でその被害をカバーする「代替性」に対しては、社会資本の整備に際して従前から認識され議論もされてきたものである。しかし、大震災のような滅多に起きない災害被災に対する効果(対代替性)のほどを正確に評価するのは経験的過程から推しても難しい面があって、事業評価にあたって積極的に取り扱われてはこなかった。そうした中で、この度の東日本大震災以降、代替性確保の効果の如何が改めて事業評価に採り入れられることとなったのだ。
 東日本大震災による東北新幹線の不通時に、航空による羽田便が山形空港や花巻空港間に臨時に運航されて災害で失われた移動の足を確保したり、被災によるタンクローリー不足やJR東北本線およびJR常磐線の不通により麻痺した被災地への燃料輸送を確保するために、JR羽越線やJR磐越西線などを経由した貨物列車による迂回輸送が行われたのは周知の通りである。

画像

国は、事業評価を適切に行うための評価手法を作成し、それをマニュアル化して公表している。勿論、鉄道においても、整備新幹線のように国費を投じて整備されるものもあることから、事業評価手法についてマニュアルが作られている。その事業評価のマニュアルがこのほど改訂され、2012年7月に「鉄道プロジェクトの評価手法マニュアル」として公表された。主な改訂事項を以下に概記します。
〇 バリアフリー施設整備…エレベーターやスロープ、ホームドア、車いす対応型トイレといったバリアフリー施設整備の際の評価の視点・指標の表示。
〇 鉄道防災事業…落石や雪崩等の対策または海岸等保全のための施設整備に対しての評価の視点・指標の表示。
〇 地域鉄道の利便性向上…地域鉄道を活性化するために、地域が主導となって行う意欲的な取り組みに対し国が積極的に支援することを受け、それに係わる事業の評価手法を記載。
〇 列車遅延・輸送障害対策…列車遅延の解消および輸送障害時の早期のダイヤ回復に資する対策に係わる事業の評価手法を記載~等々である。
 以上のように、事業評価にあたっては、鉄道の分野においても防災面の観点や質的向上の観点が評価上の要素として重視されていることが伺われ、社会資本の整備に対する事業評価の最近の潮流が見て取れる。 (終)~JRガゼットを参照

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック