北海道新幹線開業への課題

いよいよ4年後の2015年度末(平成27年度末)を予定に、北海道初の新幹線が開業する。1973(昭和48)年に全国新幹線鉄道整備法に基づいて定められた整備計画路線の一つである北海道新幹線が、計画から42年の時を経て新青森駅~新函館駅(仮称・以下同じ)間約149kmの区間でようやく日の出を迎えるに至るのである。

画像現在、順調に建設工事が進む北海道新幹線には、起点の新青森駅側から奥津軽駅(仮称)、木古内駅、新函館駅(仮称)の3駅が設けられる。その路線の特徴として挙げられているのが、青函トンネルを含む一部区間の線路上を在来線の列車と共用して走ることである。今回開業する新函館までの路線延長約149kmのうち、新幹線路線として新設されるのは青森県側の約29kmの区間と北海道側の約38kmの区間で、その両新設区間を結ぶ青函トンネルを含む約82kmの中間の区間が新幹線列車と在来線列車(旅客・貨物)が共同で使用する共用区間となる。すなわち、現在、JR津軽海峡線として在来線の旅客列車と貨物列車の運行が行われている区間を共用使用区間(新中小国(仮称)信号場・新青森起点29.4km~湯の里(仮称)信号場・新青森起点111.4km間)として北海道新幹線は走ることになる。
 この共用区間は、新幹線列車と在来線列車が同一線路上を利用するという計画の下に建設当初から新幹線用規格によって路線の構造物等が整備されてきた。すなわち、車両の軌間が相互に異なる新幹線(標準軌1435㎜)と在来線(狭軌1067㎜)の列車が同じ線路上を走行できるように、この共用区間は3本のレール(共用レール・在来線専用レール・新幹線専用レール)の敷設を可能とした3線軌条方式を採用できる規格で整備されているのである。そして現在、共用区間では3本目の新幹線専用レールの敷設工事や架線設置位置の変更(補正)、電気設備等の改修工事が在来線列車の運行間合いをぬいながら施行されている。ちなみにこれらの建設工事は、鉄道・運輸機構(独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構)を主体に、多くの分野・部分でJR北海道が鉄道・運輸機構から受託して行っている。
 一方で、JR北海道としては初めて新幹線の運行を担うことになるため、JR北海道には運営体制の新構築や新幹線関連技術の習得・練磨といった新生面に対する対処・整備が求められている。そこでJR北海道においては、新函館開業まで4年を切った今、必要な要員の養成や保守技術の習得などの準備を加速させるため、東北新幹線等を運行しているJR東日本および鉄道・運輸機構などから協力を仰いで必要な資格の取得や技術の習得を目的に自社社員の出向が行われている。そして、出向から戻った社員を中心に社内教育の展開が図られ、新幹線開業に備えた事前準備等が現在、鋭意進められている。

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                          〈 トレイン・オン・トレインのモックアップ 〉
2015年度末開業予定の北海道新幹線の最大の特徴は、先に述べたごとくに青函トンネルを含む約82kmの区間を新幹線列車と在来線の旅客・貨物列車とが共用して運行するところにある。しかしながら、この共用区間に在る長大な青函トンネル内を新幹線と在来線の貨物列車が走ることで新幹線の運行に対し、可及的速やかに解決が図られなければならない諸問題が発生して立ちはだかり、開業を控えた北海道新幹線にとっての最大の課題となっているのである。
 3線軌条方式により新幹線と在来線の共用運行が行われている例は、衆知のごとく秋田新幹線や山形新幹線において実績はあるものの、最高速度260km/hの高速で運転する新幹線(秋田・山形新幹線の新在共用区間内は130km/h)と最高速度110km/hの在来線貨物列車が同じ線路上を走行する今回の北海道新幹線のようなケースは世界の鉄道を見ても例がないのだ。53km余りという長大な青函トンネル区間にあっては、在来線貨物列車と新幹線との交換待避設備なくしては新幹線列車の必要運行本数の確保に大きな制約が生じ、新幹線の利用需要や速達性の確保に障害を来してしまう。さりとて、待避設備を設けたくても、青函トンネル内は勿論のこと、その前後にも設置に必要な広大なスペースが得られないことから、青函トンネルの共用が新幹線のダイヤ作成上のボトルネック(1往復/1時間が限度)となっているのだ。
 こうした状況から、国土交通省を中心に多方面で、共用運行区間における列車運行の確保と安全対策について検討が行われてきた。しかし、現時点においては、2004(平成16)年10月に起きた新潟県中越地震(震度6強)で上越新幹線が脱線した事故に鑑み、関係者が取り組んできた新幹線の脱線・逸脱防止対策に比する対策を在来線貨物列車に施すことが難しい等々の理由もあって、当面は共用区間においては新幹線の最高速度を140km/hに抑えて在来線の特急列車と同様の運転を行うことで安全性を維持しながら、現状と同等の列車運行を行おうという施策に止まっている。ただ、暫定的ではあるものの、新幹線が共用区間を最高速度140km/hで走行した場合には、最高速度260km/hで走行した場合に比較すると所要時分が約18分延伸することになり、新幹線が果たすべき役割や機能が低減する。そのため、新幹線の効用を最大限に引き出し、新幹線本来の存在効果を高めるためにも、なるべく早い時期に新幹線の速度抑制を解消する何らかの施策が必要となろう。
 そのための方策として、貨物列車を新幹線並みの規格車両とする方法(新幹線貨物列車の新製)や、新幹線と貨物列車の走行する時間帯を分離することなどが考えられるが、さまざまな付帯問題(列車運用効率の低下や中継ヤードの整備、金銭的・時間的コストの負担など)が発生して現実的ではない。そこで、あまり間を置かずに、将来的には新幹線が最高速度260km/hで共用区間を走行できる方向へ検討が進められているという。

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 その解決策の一つの案としてJR北海道では、共用区間における安全かつ安定した運行とより高い運行効率の確保を目的に、新幹線規格タイプの機関車と貨車で構成する貨物列車を新製し、その貨物列車の貨車に在来線のコンテナ貨物列車(機関車を除く)をそのまま搭載して共用区間を200km/h以上の高速走行で輸送する、「トレイン・オン・トレインシステム」(列車搭載型貨物列車)の検討を進めている。基本的には、既存の新幹線や在来線貨物列車の技術と一般的汎用技術を組み合わせた開発とし、現在は、新幹線用貨車の高速台車や車体構造、在来線貨物列車の新幹線用貨物列車への積み卸しに必要なダブルトラバーサ(異軌間軌道台)などの構築に関する基本的な検討をJR貨物と共同で進めているところだという。このトレイン・オン・トレインシステムが実現すれば、共用区間における新幹線・在来線の安定した列車ダイヤの確保と、20~30分に1往復の新幹線列車の運行が可能となる。

4年後に予定されている北海道新幹線新函館開業に向けては、異軌間の新幹線列車と在来線貨物列車の共用走行可能性への検討のほかに、函館本線渡島大野駅に併設される新函館駅における在来線との乗継ぎ利便性の確保、新函館駅から約18km離れた函館駅までの在来線アクセス輸送の確保、札幌方面へ向けた輸送改善および札幌方面への乗継ぎ特急列車の輸送体系改善などなど、新幹線効果を最大限に発揮させるための施策に関してまだまだ乗り越えるべき課題が多く残る。
 これらの課題解決が成って北海道新幹線が開業を迎えられることになれば、新青森駅と新函館駅間が約1時間で結ばれることになる。その結果、新幹線開業の波及効果は函館周辺(道南地域)にとどまらず、本州と北海道間において大幅な時間短縮や乗継ぎ解消等で鉄道の利便性向上により道内全域への経済効果の波及が促されて、北海道全体の活性化への起爆剤になるのは間違いないであろう。

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           〈 青函トンネルを抜け新幹線規格のJR北海道・津軽海峡線を行くコンテナ貨物列車(吉岡海底~知内) 〉
 国土交通省は昨年(2011)末、整備新幹線未着工の3区間(北海道、北陸、九州)について、JRや沿線自治体の同意、収支採算性等の建設条件が整い次第に建設着工を決め、早ければ2012年度内の認可を予定する。この新たな着工認可が下りれば、北海道新幹線の新函館~札幌間211kmの建設(見通し開業時期2035年度)が始まる。
 北海道新幹線札幌延伸に関すれば、新函館開業効果とともに新幹線効果は190万都市の札幌を中心とする道央圏、仙台圏、および首都圏にまで及び、それらの地域が相互に高速の路線で結ばれるとなれば北海道のみならず東北地方へもさらなる活性化がもたらされるものと期待がかかる。それ故、新函館までの開業をほぼ4年後に控えた北海道新幹線に対しJR北海道は今、道内の期待に応えるべく今後に待つ乗り越えなければならない緒課題解決に果敢に挑んでいるところだという。 (終) JRガゼット参照

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