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zoom RSS 青函共用走行区間速度向上に因む ・ 北海道新幹線

<<   作成日時 : 2017/07/16 17:32  

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 2011 (平成23)年のJR石勝線列車脱線火災事故を皮切りに、2013(平成25)年に端を発した一連の事故・事象(出火等の車両トラブル、線路補修作業の怠慢、軌道関連データの改竄、社員の不祥事など)を発生させたJR北海道は現在、2014(平成26)年1月に国土交通大臣から「輸送の安全に関する事業改善命令及び事業の適切かつ健全な運営に関する監督命令」受けて企業の安全風土の構築・再生に向け各種取り組み(事業改善・監督命令による措置を講ずるための計画及び安全投資と修繕に関する5年間の計画)を推進中である。また、同時に、国鉄改革(分割民営化)30年の環境の変化を背景に今も年々道内の人口減少が続く中で利用者を大幅に減らしている地方路線(線区)に対しJR北海道は、自社単独では維持することが困難な線区(10路線13区間・1237.2km)についても公表し、今後も利用者が減少し続ければ地域の公共交通は守れないとして持続可能な交通体系の構築に向け鉄道からバス等への転換について地域との協議が進められている最中にある。勿論、赤字路線に関する問題の処理だけではJR北海道の再生は成し得ず、自助努力による経営基盤の強化(北海道新幹線札幌開業に向けた事業展開、空港アクセス輸送の強化、観光・インバウンド施策の構築など)が必要である。
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                          北海道新幹線北斗市内を行く 2017.3
 そうした経営の逆風の中でJR北海道は、昨年(2016.3.26)待望の道内初の北海道新幹線(新青森〜新函館北斗間148.8km)を開業させ、2年目を迎えた今年その真価が問われようとしている。同新幹線は今、社員の知識・技能の保有・向上、継続的日常業務の検証と見直し、定期的な異常時訓練の実施、冬期安定輸送対策の構築などを通してJR北海道の経営基盤強化を図るべく安全・安定輸送の確保に向け開業2年目を疾走中である。

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 今年、 開業2年目を迎えた北海道新幹線は、他の新幹線路線に比べ特殊性を有していることから、その運行管理面と営業面において独自に取り組むべき大きな課題を抱えている。その課題の克服は、新生北海道新幹線に求められる挑戦であり、成長への礎ともなる。
 北海道への鉄道輸送においては、青函トンネル(総延長53.85km)を介した経路が唯一の輸送ルートであるため北海道新幹線では特異な輸送形態が採られており、その運行管理面の第一の課題が本州と北海道を結ぶ青函トンネルを挟む前後の新中小国信号場〜木古内間約82kmの区間における新幹線列車と在来線貨物列車との共用走行に伴う問題である。一つには、新幹線の安全運行に不可避な線路の保守作業間合いの確保が十分ではない点で、他の新幹線においては6時間程度確保される保守作業間合いが在来線と共用走行する北海道新幹線では半分以下(2時間半)と至極不足しているのである。また、共用走行区間は三線軌条式であることから、青函トンネル自体の保守も含め3線式分岐器など特殊設備の保守負担が極めて大きい点である。さらには、現行の貨物列車に対する線路使用料の算定基準が共用走行(新幹線・在来線)を前提としていないため不適合で、共用走行区間に適合した策定が必要とされている、等々の点である。勿論、これらはJR北海道だけで解決できる問題ではなく、関連機関との協議を必要とする課題である。
画像                3線式分岐器を覆うスノーシェルター 北海道新幹線
 運行管理面の第二の課題は、日本最北地域の輸送を担う北海道新幹線は厳冬期の走行を強いられるため冬期間の安定輸送確保に特別な対応・対策を必要としていることである。すなわち、積雪・寒冷地という厳しい環境の中での走行に関して厳冬期の対策として他の新幹線にはない特異な設備を備えている。線路上の降積雪対策として、凍結の恐れのあるスプリンクラーに替え排雪を線路脇に貯める貯雪式高架橋や積雪を下に落とすことのできる開床式高架橋の消雪設備が採用されている。また、雪等の介在による分岐器不転換対策として電気融雪器設置を基本としながらも、分岐器融雪ピット(マクラギ下部に設けた空間に雪を落として融雪電気マットで消雪する)やエアジェット式急速除雪装置(新幹線では初採用)が採用されている。さらには、共用走行区間の3線式分岐器の設置箇所には融雪ピットに代えスノーシェルターを設けて万全が期されている。こうした除雪に対する方法や対策にはまだまだ改善の余地があるとしてJR北海道では、冬期安定輸送の確保に向け今後もさらなる降積雪期体制の強化に取り組むとしている。
 運行管理面の第三の課題は、本州〜北海道間の鉄道輸送は青函トンネル1本に依存しており、しかも同トンネルを新幹線と在来線(貨物列車)が共用して走行していることから新幹線(高速)と貨物列車のすれ違い時の安全確保(風圧による貨物列車の荷崩れなど)のため共用走行区間では新幹線全列車の営業最高速度が制限され、新幹線の高速性能(速達化)が十分に発揮できない状況にあることだ。ちなみに北海道新幹線の営業最高速度は260km/hだが、青函トンネルを挟んだ両端の新幹線と貨物列車が共用走行する約82kmの区間(共用走行区間)においては当面140km/hに抑えた運転が行われている。2030年度末の札幌開業に向けて現在延伸建設工事(新函館北斗〜札幌間約212km)を進めているJR北海道では、札幌開業の前までには階段的に営業最高速度の向上を図るべく国土交通省をはじめ関係機関等との協力および解決に取り組んでいくとしている。
 一方、営業面の課題としては、JR北海道が経営基盤を置く北海道の特性から在来線同様に輸送面において季節波動の大きい点がある。すなわち、ビジネス利用より観光目当ての利用が多く、観光路線としての性格が強いということである。この課題については、営業面で近接するJR東日本との連携強化などを通し効果的な需要喚起策を展開していくとともに、北海道新幹線のさらなる需要喚起を図るため東北エリアをはじめとする首都圏への流動を高める取り組みを実施していくとしている。

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 北海道新幹線 は、開業以前から青函トンネル通過に関連して営業最高速度に対する取り扱いが課題視されてきた。全国の新幹線で唯一、在来線の貨物列車と同じ線路(共用走行区間)を走る北海道新幹線は、先に触れたように最高速度の許容に制約を伴う津軽海峡を越える青函トンネルを含む延長82kmの共用走行区間を通過しなければならず、開業にあたって当初目標とされた鉄道が航空機より優位になるとされる東京〜新函館北斗間“4時間切り”の所要時間が共用走行区間の最高速度の抑制から見送られて、同区間の所要時間が最速で4時間02分の開業となったのは周知の如くである。当然に、道と首都圏を結ぶ所要時間の短さだけを競えば、航空機に対し北海道新幹線に勝ち目がないのは明白である。しかし、点と点を結ぶ航空機に対し、都市を“線”でつなぐのが鉄道の長所である。新幹線鉄道の本質は高速・速達化にあるが、先の鉄道の長所は北海道新幹線による東北や北関東などとの連携促進に強く結びつく。そのためにも、新幹線の本質(速達化)を発揮させるべく共用走行区間での新幹線の高速化は、JR北海道にとって避けては通れない大きな課題なのてある。
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                      新幹線と貨物列車のすれ違い 北海道知内町 2017.3
 JR発足30周年の今年、JR各社のトップ・インタビューの中でJR北海道の島田 修社長は、新幹線の高速化には課題が多いため直ちに具体的な計画実行という段階にはないとしながらも、札幌開業を視野に入れても本来の新幹線にふさわしいスピードで札幌〜東京間を短い時間で結ぶためには共用走行区間での高速化を段階的に進めていく必要があるとした上で、全ての列車で高速化を実施できるかは別にしてもある程度の列車本数での高速化実現へ向けたスケジュールをJR北海道としても今後考えていかなければならないと語っている。


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 開業2年目 に入った北海道新幹線は今も、共用走行区間における営業最高速度が140km/hに抑制されているため、東京〜新函館北斗間の所要時間(現在、最速4時間02分)は当初に目指した鉄道が航空機より優位とされる「4時間の壁」を打破できていない。
画像 JR北海道社長島田 修氏
 かねてよりJR北海道では、共用走行区間における新幹線の営業最高速度のアップ(160km/h)を国土交通省などと検討を重ねているが、これが実現されれば東京〜新函館北斗間の所要時間が3分短縮され、同区間は最速3時間59分で結ばれて“4時間の壁”は突破可能となる。国土交通省においても、同省内に青函トンネル等共用走行区間における新幹線速度向上(トンネル内での貨物列車と新幹線のすれ違い問題)の可能性について先年から「青函共用走行区間技術検討ワーキンググループ(WG)」(技術検討WG)を設立(2012(平成24) .7)して検討を重ねてきた。これまでに技術検証が進展することを前提に2018(平成30)年春のダイヤ改正から1日1往復の200km/h以上の高速運転を実施する計画ではあったが、さらなる安全性見極め(地上設備の対応や安全性の確認、他の列車ダイヤに与える影響等)の必要性などを理由に2〜3年程度遅れる見通しとなっていた。その後、国土交通省は北海道新幹線の速度向上を検討する「青函共用走行区間等高速化検討ワーキンググループ」(高速化検討WG)を新たに設立し、技術検討WGが新幹線の速度向上(共用走行区間)に向けた時速200km超の高速運転を運転時間帯や対象列車を複数のケースに分けた案に沿って実施する時期を2019年度以降とする方針を決定していたことに対し、新たに設立された高速化検討WGでは地上設備の改修やダイヤ設定に対してさらに検討を加えて関係機関との調整を図り、2020(平成32)年度内の当該高速化実現を目指すことにしている。
画像 この北海道新幹線の共用走行区間高速化への課題(運行の安全・安定確保)で大きなテーマの一つが、貨物列車の運行ダイヤに絡む夜間の線路保守作業間合い(貨物列車の運行頻度が夜間に集中する)の確保である。現在は、保守作業(軌道・架線整備、レール削正など)に関しては作業自体を効率化するほか、上下線同一の作業時間を区分するなど作業方法の工夫で対処が図られている。その保守作業の中でJR北海道はこのほど、世界初の三線軌条区間(標準軌・狭軌)に対応したレール削正車(レール頭頂面の凹凸を削正する)を導入した。青函トンネルを中心に前後82kmの区間(共用走行区間)が三線軌条式となっており、従来のレール削正車では対応できないことからJR北海道では、北海道新幹線開業を前にスイスの製造会社に特別に発注(19億円)していた。ちなみにレール削正車は、列車走行に伴う騒音や軌道へのダメージの素地となるレール頭頂面に生じる微細なキズ(凹凸)を解消(削正)する保線車両である。この三線軌条対応レール削正車の導入により、作業時間が限られている共用走行区間では三線(基本レール・狭軌レール・標準軌レール)の同時レール削正が可能(週3、4回、AM1時〜3時30分の作業時間に約0.1o削正)となり 、同区間の新幹線最高速度向上へ大きな成果が期待されている。
 ちなみに共用走行区間における北海道新幹線の高速化に関して、2015(平成27)年頃に東京の企業や業界団体で構成されている日本プロジェクト産業協議会でも鉄道路線強化検討会を発足させて、現在の青函トンネルは新幹線専用とし、別にその西側に在来線貨物列車専用の第二の青函トンネルを建設する構想(事業費約3900億円・工期約15年)をまとめ、北海道新幹線の高速化を図る構想を先頃打ち出している。

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 開業2年目 の北海道新幹線、その開業後1年の利用状況では1日平均約6500人の利用(新幹線開業前の在来線利用者数約3900人の1.7倍)を示し、平均乗車率は平均33%で当初予想の26%を上回った。されど、最も利用が多かった上半期夏期(8月)の乗車率平均が48%であった一方、下半期の冬期(1〜2月)は平均19%と予想されて迎えた冬期の季節波動輸送となり、冬期の観光需要の減退で当初年度から厳しい利用状況となった。この季節波動の段差を如何にして埋めていくかが、今後の北海道新幹線の輸送に課せられた大きな課題である。また、東京〜仙台間および盛岡間の利用状況は間断のない混雑度合いを示している一方で、仙台以北・盛岡以北の北海道方面で輸送段差が生じていることから、トータルでの新幹線の速達化が望まれているといえよう。ただ、JR北海道は季節波動や曜日波動および区間別の輸送段差がどのように生じるかということをこの1年間の輸送実績を通し把握できたであろし、2年目はこの実績をベースに需要環境を分析して今後の北海道新幹線における輸送施策の展開に活かしていけるのではないだろうか。また、北海道新幹線の在来線共用走行区間に対する速度向上を検討している国が主導する高速化検討WGでは、北海道への仙台以北の輸送段差解消に向け東北新幹線とリンクさせた新函館北斗(北海道新幹線)への所要時間短縮を視野に入れた盛岡〜新函館北斗間の高速化(320km/h引き上げの可能性)を検討していくとしている。
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                            200万都市 札幌市遠望
 いずれにしても、道内初の北海道新幹線が本格的にその営業実績と効果を創出し得るのは、北海道最大の200万都市・札幌へ延伸開業する2030年度末以降と見られており、新幹線を含む全14路線が赤字のJR北海道にとっては厳しい事業経営がまだまだ続く…。 (終)

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