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観光振興へ復活する蒸機…58654号機
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作成日時 : 2008/12/21 16:41
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九
州新幹線鹿児島ルート(博多〜鹿児島中央間約257q)の全線開業を2011(平成23)年春に控えるJR九州では、広く各方面へ向け九州の魅力を情報発信する取組を活発化させている。
その取組の一環として現在、約4年ぶりともなる蒸気機関車の2009(平成21)年4月の復活運転開始に向け、JR九州の小倉工場(北九州市小倉北区)で改修作業が進む。2005(平成17)年8月に引退した、「SLあそBOY」号を牽引していた8620形蒸気機関車の58654号機である。
九州地方における鉄道の幕開けは、1872(明治5)年の新橋〜横浜間に日本初の鉄道が開業してから17年後の、博多〜千歳川(仮停車場)間が開通した1889(明治22)年で、2009年には開通120周年を迎える。この長い歴史を経て、九州の各地には多くの鉄道文化遺産が残され、それらの一部は九州鉄道記念館(北九州市門司区)に保存・展示されている。
J
R九州でこのたび、4年ぶりに本線復活することとなった蒸気機関車の58654号機は、大正時代の標準型旅客用テンダー機関車として数社の車両工場で計672両が製造(1914
(大正3)
年〜1929
(昭和4)
年)された中で、1922(大正11)年に日立製作所で落成した機関車である。新製後、最初に長崎の浦上機関区に配置され、その後は若松機関区(1926
(大正15)
年〜)〜人吉機関区(1968
(昭和43)
年〜)へと配転し、一度も九州の地を離れることはなかった。そして、1975(昭和50)年3月に現役を引退した後は、肥薩線の矢岳駅に隣接する「SL展示館」に静態保存され、展示されていた。
その後、国鉄の分割・民営化(1987
(昭和62)
年4月)により誕生した新会社・JR九州では、熊本・阿蘇方面への観光客誘致施策の一環として蒸気機関車の復活運転計画が持ち上がり、その際候補に挙がったのがSL展示館に静態保存されていた58654号機であった。そして、復活運転に向け1988(昭和63)8月に小倉工場で復元化工事が行われ、豊肥本線(阿蘇高原線)で「SLあそBOY」号(“古き良きアメリカ”をイメージした客車3両によるウエスタン調の列車・熊本〜宮地間53.4q)の牽引機関車として活躍した。
しかし、現役への復活を果たしたものの、製造後70年近くを経た老朽機にとってその運行区間であった熊本〜宮地間は、最大33‰の急勾配を含むきつい勾配が連続する山岳線区であった。そして、3両の客車を牽き、17年という長年にわたって大きな負担に耐えてきた結果、肝心の台枠に歪みや車軸の支軸受金に損傷が頻発することとなって定期的な安定運行の遂行が困難となり、2005(平成7)年8月に引退を余儀なくされ、再び本線上から姿を消したのであった。
ちなみに2005年に本線から引退するまでに、「SLあそBOY」号を利用した観光客などの人たちは延べ2443日間の運行(1日1往復)で約52万人に上った。
現
在、58654号蒸気機関車は2009年4月からの再度の復活運転に向け、小倉工場で改修作業が大詰めを迎えており、すでに乗務員に対しては投炭などの地上訓練が始まっている。その復活運転は、鹿児島本線・肥薩線の熊本〜人吉間(約87q)を「SL人吉」号として走るもので、2009年の春から1日1往復の季節運行(年間120〜150日)として再開が予定されている。
今回JR九州が、再び蒸気機関車の復活運行による観光客誘致を図った理由は、一つには蒸気機関車に対する幅広い層の人たちの全国的な根強い人気の下で、観光の振興・活性化を図り、沿線地域社会の発展に向けた期待感にあった。JR九州では、2011年春の九州新幹線鹿児島ルートの全線開業と山陽新幹線(JR西日本)への乗り入れ(博多〜新大阪間)を控えているが、これを機に九州地域内はもとより、九州外や海外からの観光客等の増加が期待されていることもあって、SLを活用(復活運転)した新幹線のスピードとは対称的なスローな旅の演出を図って、沿線地域の活性化を促す構えである。
もう一つは、観光振興等から重要な目玉の一つとしている蒸気機関車の運転を今後も長く続けていくためには、運転技倆や保守技術の維持・確保および継承等が欠かせない要件であることから、蒸気機関車の運転を存続させていく必要があった。
折
しも2008(平成20)年10月1日に日本政府は、地域経済の活性化や経済の発展、国際相互理解の増進に欠かせない観光の推進を図るため、
観光を21世紀の国づくりの柱とし、国の観光振興の気運を高めることを目的に、国土交通省内に観光庁を設置した。すなわち、観光を国の21世紀の重要政策に位置づけることを、法律上で明確にしたのである。これに鑑み、鉄道文化の復興・進展に向け、より積極的に拍車がかかることを期待したいものである。
今年(2008年)で136年目を迎え、日本の経済発展や産業復興を支えてきた鉄道の歴史的・文化的遺産は、その価値の高まりとともに、保存・保護が必要視されている。ただ、その遺産をどのようなかたちで保存・保護し後世へ引き継いでいくべきか、費用や経費、人材等の面から課題が多いのも現実である。
2009年春にJR九州で甦る、「SL人吉」号を牽引する蒸気機関車・8620形(58654号機)は、これからも鉄道文化の高揚に寄与していくであろうとともに、歴史的・文化的遺産を次世代へ伝えていく復活蒸気機関車の一つのケースとして、今後に大きな意義を示していくものと思われる。
(終)
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