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help リーダーに追加 RSS モーダルシフト加速の時機

<<   作成日時 : 2008/07/12 18:05   >>

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 輸送の担い手を、自動車や航空機から環境負荷の小さい鉄道へ移行させる「モーダルシフト」が、地球の環境破壊が叫ばれている中で世界的に加速を見せている。今年の7月に開催されたG8北海道洞爺湖サミットにおいても、地球温暖化対策が主要テーマの一つとされた。
 2005年の京都議定書発効の下で、二酸化炭素(CO2)排出量の削減は世界の責務とされ、企業においても社会的責務として最も重要視される課題となった。製造の分野は勿論のこと、物流の分野でもCO2排出量削減は大きな課題であって、特に輸送の分野でエネルギー効率に優れ、CO2排出量が少ない鉄道に輸送機関として高い社会的評価が集まり、世界的に活用が急加速している。

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 今、鉄道大国のスイスで、アルプスの真ん中を南北に貫く世界最長の鉄道トンネル(ゴッタルド基底トンネル・57q)の建設が進む。スイスのチューリッヒとイタリアのミラノを結ぶ南北欧州の主要幹線であるゴッタルド線では、現在、列車は海抜の高い所(1150b)にあるトンネルと連続したループ線を上り下りしながらアルプス越えをしているため、高速運行と輸送能力に限界を来している。
 新トンネルの完成は2017年(1993年着工)だが、急なカーブも少なく勾配も緩い比較的フラットな線形(最高でも海抜は550b)の新線が開通すれば、チューリッヒ〜ミラノ間の貨物列車の輸送能力は格段に向上する。そして、従来より高速化が図れることで運行時間は大幅に短縮(1〜2時間)され、運行本数は200本(現行150本)へ増発が可能となる。さらには、1列車当たりの連結両数の増加が可能となり、牽引重量も現在の重量制限となっている1列車当たり2000dが倍の4000dまで緩和され、ゴッタルド線を通る貨物輸送量は現在の年間約2000万dから4000万dへ増送できる見通しで、モーダルシフトへの促進が期待されている。
 一方で、アルプスを越えるトラックによる貨物輸送量は、8年ごとに2倍のペースで増加しているという。EU(ヨーロッパ連合)の試算によれば、2003年以降トラックの輸送距離に応じた課税からスイス国内のトラック交通量は微減傾向を示してはいるが、一方でフランスやオーストリアを迂回するトラックが急増し、アルプスの通過貨物量は2010年には現在より75%も増えると予測されている。ちなみにEUの貨物輸送シェアは、およそトラックが4割、船舶も4割で、鉄道はわずか1割という。
 スイス国内では、アルプスを越える貨物のうち鉄道による輸送量は66%という高い割合を占めてはいるが、現在のアルプス越え路線(ゴッタルド線)はほぼ飽和状態にあって、トラック輸送の増加が年々そのシェアを低下させているという。そこで、現状の鉄道輸送力を増強できればトラック輸送からの移行が望めると計画されたのが、ゴッタルド基底トンネル建設の背景である。
 この巨大トンネルの建設は、国家プロジェクトとして進められており、そこには輸送をトラックから鉄道へ、国民の鉄道利用促進へと、国を挙げてモーダルシフトへの挑戦がある。

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 日本も然り、物流分野においてもCO2排出量削減化への関心の高まりから、環境対策を進める企業を中心に鉄道の利用が広がっている。近年では、そうした環境問題を追い風に、専用コンテナ列車による輸送がJR貨物を主体に拡大しつつある。

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 その代表的なケースが、大手運送会社佐川急便のJR貨物を利用した「スーパーレールカーゴ」(世界初のコンテナ貨物電車・東京〜大阪間)や、複数の運送事業者による共同運行の「スーパーグリーンシャトル」(JR貨物を含む4事業者によるモーダルシフトの共同プロジェクト・東京〜大阪間)などで、鉄道が最も得意とする長距離輸送(600q以上)の列車である点が特徴である。
 そのような専用コンテナ列車を利用した輸送を、船舶やトラックから鉄道へとシフトを進めたのが、トヨタ自動車(トヨタ)の自動車部品輸送専用コンテナ列車「TOYOTA LONG PASS EXPRESS」(JR貨物)である。CO2排出量削減など環境対策を踏まえて、従来の内航船やトラックによる輸送の一部をシフトして2006年11月から運転を開始した、専用コンテナを利用した鉄道輸送だ。
 1列車(コンテナ貨車20両編成)に31フィートコンテナ40個(10dトラック40台相当)を積載し、名古屋南貨物(名古屋臨海鉄道)〜盛岡貨物ターミナル間約900qを、当初は、1日1往復(1便)が工場の稼働日に合わせて運転された。
 コンテナの中身は、往路はトヨタ系車体組立メーカーの関東自動車工業岩手工場(岩手県金ヶ崎町)に向けた自動車生産部品で、復路は空の容器やパレット類である。2007年10月には、さらに1便が増発されて、現在では1日2往復(2便)体制で運転されている。
 トヨタでは、お膝元の中部地区や九州地区に続いて、東北地区が同グループの一大生産拠点に変貌しつつあることから、遠距離化に対応してさらなる鉄道輸送への拡大も検討されているといわれている。ちなみに当初の1便は、関東自動車工業岩手工場の増産に合わせた増産分の鉄道輸送への移行であったが、2便目は内航船輸送からのシフトであっただけに、環境面に止まらないコスト面等を含む総合評価で鉄道輸送が選択された結果は大きく、鉄道輸送が長距離輸送に適うことの証左ともなった。

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 従来、トヨタは遠隔地向けの物流については、船舶輸送を中心とした体系を構築していた。しかし、先に述べた如くCO2排出量のさらなる削減化が企業の責務として課せられ求められている状況の下で、トヨタも鉄道輸送の検討を始めたのである。ただ、鉄道輸送へのシフトがすんなり進んだわけでは勿論なかった。
 自動車部品は、輸送の季節波動(変動)が少なく、年間を通じて比較的平準化した出荷であるため、鉄道輸送に適した貨物といえる。しかし、自動車の生産は物流面において在庫レスという効率的な生産手法(ジャストインタイム)が確立されているため、一つの部品であっても供給が停止すれば即座に工場生産がストップに見舞われるリスクを伴っている。そのため、トヨタ・ロング・パス・エクスプレスの運転開始に向けては、事前に数多の課題を解決する必要があった。
 そもそも鉄道輸送は、平時には強いが、災害時には弱いとの評価から及び腰の企業も多いといわれ、現在も輸送シェアはトラック輸送に押され放しでわずかに4%(トンキロベース)に過ぎない。また、一旦事故でも起きれば復旧には時間もかかり遅延や運休につながりかねず、また専用軌道故の輸送経路の選択にも柔軟性を欠いて、在庫レスのジャストインタイムを追求する企業などにとっては高いリスクを負うことにもつながる。
 それ故JR貨物は、列車遅延が発生しても速やかにトラック輸送へ切り替えるなど部品供給を停止させないバックアップ体制を構築し、情報伝達ルートや指示系統などの整備を強力に進めた。また、コンテナ積載の電子部品やエンジン等の精密部品に対する荷役や輸送中の振動に伴うダメージからの品質確保や温度管理等について、1年半にわたって検証を実施(さまざまな部品を毎日一般の貨物列車で試験輸送した)してきた。画像 画像
 同時に、無駄なロスは全コストに跳ね返るとするトヨタに対して、積載効率を最大限にまで追求した特別仕様コンテナの開発・導入や、荷役時の振動を最小限に抑えるためにコンテナヤードでの留置個所を指定したり、トップリフター(荷役機械)の作業動線の最短化などを図った。
 ちなみに今回の自動車部品輸送に対してJR貨物では、通常の荷主であればトライアル輸送(試験輸送)は1〜2回が基本であるが、トヨタの場合は244日と年間の工場稼働日を通して輸送に対する検証が続けられ、不具合の改善に次ぐ改善の毎日だった、と驚きを隠せない。それほどまでの、船舶やトラック輸送の利点を落とさない(鉄道輸送)というトヨタ側の高いハードルをクリアした、JR貨物の意気込みの結果だったのである。

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 JR貨物によると、トヨタ・ロング・パス・エクスプレスは年間約20万d分の自動車部品輸送(小型自動車約20万台分)を担っており、この数字は関東自動車工業岩手工場が必要とする約6割の部品を鉄道輸送が占めていることになるという。
 運転開始から1年7ヶ月が経過した時点で、約4万5000個のコンテナを往復輸送し、この間自然災害による大幅な列車遅延が数回発生したが、バックアップ対策・体制の成果で自動車生産への影響はなく、現在のところ順調に輸送は続いているとのことである。また、増発(2便体制)の効果により、海上輸送時に比べ輸送時間が半日以上も短縮され、荷主側(トヨタ)の評価は高いという。そして、CO2排出量削減では、年間で約1万4000dの削減が見込まれており、トヨタの物流分野における環境対策に大きく貢献しているという。
 自動車産業は、従来部品工場から組立工場まで地域集中立地型により高い生産効率を実現してきたが、近年では危機管理問題(対不慮の事故や対自然災害等)や労働力確保等の面から地域分散立地型へ転換の傾向を示しており、遠隔地間の物流輸送システムの確立が重要性を増している。こうした中でJR貨物は、トヨタ・ロング・パス・エクスプレスの復路輸送の有効利用や完成車輸送等、新たな展開を視野に鉄道輸送へのさらなるシフト獲得を目指しているという。

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 前述したスーパーレールカーゴ(2004年3月運行開始)が、重厚長大が主流の鉄道貨物輸送市場にあって宅配便という新市場(軽薄短小)を開拓した意義は大きいが、また、鉄道輸送の強みである環境効果を踏まえ、基幹物流である自動車部品輸送に鉄道(トヨタ・ロング・パス・エクスプレス)が選択された意義も大きく、鉄道貨物輸送に新しい可能性を生み出した。
 昨年(2007年)4月に施行された改正省エネ法を追い風にして、そして、2008年からスタートした京都議定書の約束期間に向けた諸企業のCO2排出量削減への取組の本格化を機にJR貨物は、年間の輸送量が3000万dを超える荷主企業約800社を対象にCO2排出量の削減助成を前提にした、鉄道輸送へのシフトを提案している。
 加えて、昨今の長距離トラックのドライバー不足や原油高騰等に起因して鉄道貨物輸送に対する期待がますます高まることを想定してJR貨物は、モーダルシフトへ弾みを付ける時機と捉えて、その取組を加速させている。 (終・JRガゼットおよび東洋経済参照)

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