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まもなく夏本番を迎えようとしている梅雨の晴れ間、この夏はいつもより暑くなるとの長期予報を伝えるテレビを横目にビールを煽りながら、ふと遠い夏の日に想いを巡らせていた。 …線路に熱風を残して彼方へ去って行った貨物列車の、真夏の白い陽炎にぼやけて揺れる黒い塊を不思議に、学校帰りの踏切にたたずんでいつまでも見つめていた田舎での小学校時代を…。 そういえば、近頃はとんと陽炎に目を向けた記憶がない、いや、目に映らない。たしかに、奥まった地方にでも出向かなければ、線路の周辺に住宅地などが密集して開けた場所もないような状況では、陽炎が立つような環境も日常の周りからは少なくなっているようだ。 夏の鉄路には、陽炎の立つ風情が最も似合っているように思う。かつては、都会にあっても駅のホームには手作りの花壇がひとつやふたつはあって、季節の花が旅人を和ませていた。今では、よほどの地方にでも行かなければ、ホームに彩りを添えた花壇のある風景にはお目にかかることはできまい。 地方の私鉄沿線に住んでいた遠い昔、陽炎に揺らぐ柵も何もないぼやけていたホームの終端の方向を、盛りと真っ赤な花を空へ向けて咲く葉鶏頭越しに、けだるさとともにぼんやり眺めていた遠い夏の昼下がりを今も夏の到来が近づくと想い起こす。 連日30度を超えていた炎天の夏、自然の風に涼を求めていた夕暮れ時の駅には、ホームや改札口には打ち水がしてあって、つかの間の涼しさを感じ取っていた。 そんなつかの間をぬって、夕日に灼かれた貨物列車が熱い風をホームに起こして通過していった後に、やがて、わずかに涼風を誘い出して遠ざかっていった。その灼と涼のコントラストの妙が物憂げな夏の風情を浮き上がらせ、駅舎の壁に残照を前にして立つ陽炎の影を揺らしていた…1杯のビールとともに味わった、遠い日の夏の思い出である。 |
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