在りし日
鉄道車両色の今
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作成日時 : 2008/06/08 18:17
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戦
前から戦後にかけて鉄道の車両色(車体色)は、単一色が慣例だった。多くの車両を擁していた当時の国鉄にあっては、車両の清掃(車体洗浄)などが専ら手作業に拠っていたため、汚れの目立たない黒や茶の系列色が選ばれ、しかも塗装の容易な単一色が使われてきたと思われる。
ちなみに戦前からの車両には、一部を除き黒っぽいブドウ色(ぶどう色1号)一色が塗られ、後にやや赤みを帯びた濃い茶色に変わり、ぶどう色2号と称して電気機関車や客車、国電の標準色となった。
こうした色彩に乏しかった鉄道車両の車両色が多彩になっていったのは、当時の国鉄や私鉄を問わず、「湘南電車」(国鉄)に代表されるツートンカラーが登場した1950年代からであろう。もともと車両に対する塗色には、車体構体が鋼板製であったがために、車体保護(腐食防止)という本来の役目があった。
しかし、近年では塗装無用のステンレスやアルミニューム合金製の車両が増えており、一般的に車両色は所属鉄道会社を表す(コーポレートカラー)とともに、列車の性格(優等列車等の別)や目的(事業用等との別)をも表し、また、利用者に対する利用路線の識別(ラインカラー)を補完するといった意味合いが主となっている。
国
鉄の動力近代化が推し進められた昭和30年代、電化・ディーゼル化の促進につれてかつての煤煙にまみれた暗いイメージの鉄道は、次第にカラフルな車両が疾走する姿へと変わっていった。そして、車両を彩る塗色も多色化し、その塗装技術や塗料の研究開発が急速に進んだ年代でもあった。首都圏では、国電(当時)の線区別カラー化が図られ、単色ながら山手線はウグイス色、中央線のオレンジ色、総武線はカナリヤ色に塗られて、それぞれの路線の沿線に彩りを添え、都会らしさをふりまいて走った。
その後、高度成長を続けていた日本の経済は、オイルショック(1973
(昭和48)
年)を境に高度経済成長がもたらした歪み(物不足、物価高、自然破壊、公害病など)を突きつけられて、安定路線(省エネ化)へ方向転換を求められた。鉄道でも、合理化や省力化が叫ばれ、通勤車両なども軽量化・低コスト化が図られて、ステンレス鋼板(ステンレス車)やアルミニューム合金(アルミ車)化が促進し、鉄道車両は無塗装化へ進み始めた。
メンテナンスに手間がかからず、軽量化も図れるステンレス車体の車両が投入され始め、首都圏などではステンレス車両の導入とともに車両の無塗装化(車体保護が無用)により路線を表示していた塗色に代わって、車体に路線別を表す色の帯を巻いた(貼り付け)ラインカラー化が進んだ。ただ、このラインカーも最近では、毎日利用している通勤者さえラインカラー頼りに電車に乗る人も多いといわれている中にあって、線区や運転系統が多様化している昨今ではラインカラーで路線を識別するには、最早限界に来ていると見られている。ちなみにJR東日本管内では、東京近郊の14の主要路線で使われているラインカラーは9色に及ぶという。
塗
装不要のアルミ車でも、車両の意匠性を重視して塗装する車両もあるが、省エネを避けては通れぬ近頃の鉄道各社では、基本的にはステンレスやアルミの車体を採用するのを基本傾向としているのがほとんどだ。
もともと車両の塗装には、労働環境やメンテナンス上から諸問題を抱えてきた。塗装には当然の如く諸設備が必要であり、しかも塗色は時間の経過とともに劣化していくため定期的に塗り替えも必要となり、コストや手間がかかる。
また、塗料の多くが有機溶剤を使用していることから作業環境が悪く、安全や衛生上からも好ましいとはいえない部分が多い。さらには、塗装には乾燥時間を必要とすることや、塗装前の車体凹凸の処理が必要で、省エネ化に著しく支障となっている。その結果が、塗装に代えてラインカラー化が進んだともいえる。
最
近は、新しい形式の車両を登場させる場合、従来の方式(自社内の専門部署のみで担当)にとらわれずに社外のデザイナー等に車両のデザインを依頼する鉄道会社が増えており、しがらみから離れた自由で斬新なデザインの車両が登場している。同時に、車両色にも斬新さが目立つ。ただ、鉄道会社側はメンテナンス上からなるべく少ない色数や単純化を要望する一方で、依頼側からは多色を用いたい提案もあることから、車両色の選択や調整に苦心を強いられる面もあるようだ。
そうした中で、車両色は、大きく長い鉄道車両の存在感をアピールするものであるだけに軽視できず、新登場する車両を印象づける上からも欠かせない大きな要素である。
2008年4月26日に営業運転を開始した西武鉄道の30000系通勤電車「スマイルトレイン」は、新製プロジェクトの結成にあたって男性のみであった従来の方式(車両部担当)に、専門的には素人の女性(社員)を加えることで女性の感性を採り入れ反映させて既成概念を払拭するという、新しい発想から生まれた車両である。この車両もまた白(アルミ車)を基調(地肌)とし、車体にコーポレートカラーの2色(青と緑)をグラデーション表示し、落ち着いた色調で新車両を印象づけるこの上ない車両色となっている。
近
年の鉄道車両色の特徴的な傾向は、新幹線でもそうであるように、清潔感と同時に安心感が得られるとされている“白”基調に寄せる関心が、各鉄道会社の間で高いということである。勿論、そこにはステンレス・アルミ化に伴う無塗装化への指向があるのは確かだ。とともに一方では、単純化基調の車両色の中で、華やかに塗装した車両が一際目立つ存在となっている昨今でもあるようだ。
ともあれ、頽廃した敗戦間もない混乱期にあって国民は、それこそ物資の極端に乏しい中で毎日を生き抜くことに精一杯で、列車が黒かろうが汚れていようが、まずは動いてくれているだけでよかった。車両の色など、別の世界のことであったろう。そんな時代に、隔世の感を持ちもする現代ではあるが、鉄道の車両色にこそ大きな時代の変遷を感じるとともに、鉄道車両色の今後に興味は尽きない。
(終)
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