|
山国の日本、開けたところといえば、少ない平野部を除けば、ほとんどが盆地や山間部、渓谷沿いといったところだ。そのため、鉄道の線路は、その多くが河川に沿って敷かれている。 緑の平野を幾重にも曲がりくねってとうとうと流れる川、そんな風景を、ちょっと俯瞰してもみたくなる。以前に、旅の途中で寄った博物館で鳥瞰図なるものを見たのを思い出し、そんな想像に駆り立てられた。 山間を流れ下る川は、当然の如く蛇行を繰り返して平野に出る。その平野でも、地形に模して蛇行する。曲がりを重ねる一筋の川を、一本の線路がいくつもの橋を渡って交差する様は、俯瞰の醍醐味を堪能させてくれるのに十分このうえない。 ところが近代では、技術にものをいわせて長大トンネルで真っ直ぐに山岳を抜けてしまい、幾何学的に最短経路をたどる線形を成して俯瞰どころではない。 狭い国土ながらの、橋とトンネルで山野を駆け抜ける日本独特の線路形態は、趣のあるあまたの車窓風景を創り出す。川に面して沿う鉄路は実に多く、四季折々に変わる川沿いの景色は、長旅も飽きさせない。 山峡深く曲がりくねって流れる清流に沿って走る線路は、実に巧みに川筋を手品師の如くに車窓の左右に分ける。この変化が、また、たまらない。 川に沿う線路、山間を抜ける線路、鉄道の原風景がここにはある。 しかし、川の素顔は、いつもおとなしいわけではない。ときには暴れ川となって、清流が濁流へと、その牙を車窓に向けることもある。また、あるときは流れのない水無川へも変身する。車窓に映る川のある風景は、実に千変万化の表情を見せてくれる。 なかでも、川の風景が一番華やぐのが川遊びで賑わう夏であり、流れの美しさを何倍にも増幅させて車窓に届けてくれるのが秋だ。こうした条件を備えた車窓風景を展開してくれる線路こそ、行楽の格好の目標として、観光路線の称号をいただく。川に沿う線路は、また、川に支えられてその存在をアピールするのだ。 数多ある川に沿う線路のうちでも、飛騨川に沿う夏の高山本線の、渡良瀬川に沿う秋のわたらせ渓谷鐵道の車窓風景が、私の特に好きな川に沿う線路である。 −2008.5− |
| << 前記事(2008/05/14) | トップへ | 後記事(2008/05/17)>> |
| タイトル (本文) | ブログ名/日時 |
|---|
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
|---|
| << 前記事(2008/05/14) | トップへ | 後記事(2008/05/17)>> |