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<<   作成日時 : 2008/05/28 18:34   >>

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 月刊刊行物の中でベストセラーともいわれている鉄道の「時刻表」、今では複数の発行会社から多様式・多サイズの時刻表が、一般書店の店頭に並ぶ。交通関連の時刻表を月刊で発行しているのは、おそらく日本ぐらいで、ヨーロッパや中国などでは年に1〜2回程度といわれている。
画像 日本で、時刻表の刊行回数が外国に比べて多いのは、外国では例がないほどの列車の運転規模(本数・頻度)の大きさによるともいわれ、関連交通機関を含め毎月のように変動する列車ダイヤなどのためともいわれている。すなわち、常に新しい時刻表を手許に置かないと、出張や旅行、毎日の行動計画に支障をもたらすことになりかねないからだ。端的に言ってしまえば、日本人の毎日の生活環境が大変に忙しいという一面の顕れということであろう。

 数ある時刻表の中で、毎月の発行部数が最も多いのはJTBとJRが双璧をなす。ちなみにJTBの時刻表は、通常月で約80万部が売れ、ダイヤ改正時や運賃改定の号となれば150万部前後まで伸びるという。また、創刊(1925(大正14)年)以来今以て一番の販売部数を記録したのは、1986(昭和61)年11月号(国有鉄道終焉を控えて国鉄が最後に行ったダイヤ改正の号)で、書店に並ぶやあっという間に店頭から姿を消してしまったといわれる。

 ところで、刊行されている時刻表は、どれも分厚い“本”である。JTBやJRの時刻表(A4判)は、時刻表の部分だけでも優に900ページを上回り、その他のページを含めると1000ページ以上に達する。最早、一般の書籍の枠を超える。なのに、なぜ“表”と呼ばれているのだろうか。
 考えてみれば、1872(明治5)年に日本初の鉄道が新橋〜横浜間に開業した当初は、駅数6つ、列車は1日9往復でしかなく、最初の頃の時刻表は1枚で十分に事足りていたのだ。

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 しかし、現在の鉄道規模では、時刻表は少なくとも数百ページを必要としており、とりわけ生活環境の高度化からバスや船、飛行機などの他交通機関との連携上で時間的データが必要不可欠となったことが、一般書籍を凌ぐような分厚さに必然的につながったといえる。そして、いつとはなく総合的な交通関連の情報誌としての性格を備えた、今の姿へと変わってきたのであろう。
画像 現代の時刻表は、列車等の時刻ばかりではなく、路線図、運賃・料金、列車編成、旅客営業案内、ホテル・旅館案内など本格的な情報誌としての内容からいってむしろ“本”や“書”の類といえ、それでも時刻表と呼ばれ続けているのは単純明快にその内容を表しているからではないだろうか。この辺りが、時刻“表”の謎解きといったところだろうか。

 分厚い時刻表の基になるのが、一般の人から見れば無味乾燥な幾筋もの直線や斜線が交錯する、1枚のダイヤグラム(列車運行図表)である。
 かつて鉄道員を称して“ぽっぽ屋”と呼んだが、同じ鉄道の中でも列車のダイヤを専門につくる鉄道職員を“スジ屋”と称した。今でこそJRにおいては、コンピュータ(1989(平成元年)年から導入)によって1時間分の全国ダイヤを10分ほどで書いてしまうが、それ以前は手書きで3〜4日を要し、ダイヤの作成はスジ屋総動員の人海戦術そのものであった。

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 毎月、JRなど各鉄道会社から時刻表発行所に届く資料は、ダイヤグラムを数値化(数字)して表した内容で、それぞれの資料はまとめられ校正を経て一冊の時刻表に仕上げられる。どのページも数字がびっしり並んでいるだけの分厚い本だが、先に述べた如く時刻表は毎月の刊行物の中でもベストセラーなのである。

 時刻表と聞けば今も、あの松本清張の推理小説「点と線」(1957(昭和32)年雑誌「旅」に初連載)を忘れることはできない。当時、「点と線」を以てほかに時刻表をより有名にせしめたものはないとまで言わしめたほど、その後の時刻表に対する世間の関心度を深めるに至った「点と線」は、今でも時刻表を語る上で欠かせない話題の一つだ。
 その「点と線」の中で、九州の香椎海岸で起きた殺人事件解決の糸口の一つともなったのが、事件を追う東京の警部が、胸を患って鎌倉で療養しているとされる犯人の妻がある季刊雑誌に投稿した「数字のある風景」と題して時刻表に興味を示して書かれた、その内容に抱いた疑問だった。
 ともあれ、無機質に数字が並ぶ時刻表だが、その数字の一つ一つにも人に関わる想い出や物語が潜む、生活の歴史書(表)ともいえるのではないだろうか。 −2008.5−

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